児童向けの本でしたが、とても参考になりました。
千葉幹夫さん粕谷亮美さん、そして石井勉さんによる『妖怪の日本地図・九州沖縄』(大月書店)です。
何が参考になったのか。
この本の序文が、素晴らしい。
厳密には、この本の序文で語られている、妖怪観とよび妖怪の分類が、とても納得できるものなのです。
まず、
夜道を歩いていると、後ろから足音が聞こえますが、ふりむいてもだれもいません。夜の山中、だれもいないはずの場所で大木が倒れる音がします。川から見たこともない手が出てきて、人を水中にひきこもうとします。このように、人にとってふしぎなものやおそろしいことに名前をつけたものが、妖怪のはじまりと考えられます。
『妖怪の日本地図・九州沖縄』(大月書店)
私もこの妖怪観に賛同します。
一点だけ私ごときから意見をさせてもらえるなら、三つ目の例、「川から見たこともない手が出てきて」のところ。それはもうすでに「できあがった妖怪変化」との遭遇になってる気がするので・・・「妖怪のはじまり」を語る例としてはふさわしくないようにも見える。「川に落ちて溺れかけた人が、なんだか見えない手に引っ張られたような気がすると助かった後に言います。これも妖怪のはじまりです」とするなら、とてもよくわかる!まあこれは私の瑣末な異論。
他にも、この短い序文は実に面白い。
上述の箇所に続いて、妖怪を以下の四グループに分類する考え方を述べているのです。すなわち、
・自然現象に対してのフシギから始まったもの
・動物に対してのフシギから始まったもの
・古くなった動画に魂が宿る、という信仰からきたもの
・古代において滅ぼされた地方の小国が由来となるもの
いちばん注目したのは最後のやつです!
明言はされていないですが、大和朝廷に滅ぼされた東北やら九州やら山陰やらのことですよね。これを子供向けの本の中で避けることなく説明しているのは、素晴らしい。
「古代において滅ぼされた」勢力の妖怪化を語るならば、「ツチグモ」問題という実に奥行きある深みにハマるのでここではやめますが、
すっきりと整理された妖怪観が、子供向けの平易な文章の中でキチンと表現されていて、こちらの本、たいへんな共感を覚えました!
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価格:1,980円 |