私がとても残念に思ってきたことは、
2022年の年末にBSテレビ東京でとつぜん放送され、視聴者のドギモを抜いたという『このテープもってないですか』をリアルタイムでは見逃してしまっており、かつ、ネットで話題になっていた頃にはテレ東のネット配信期間も終わっていた、ということ。ゲリラ的に放送されたので見逃したのは仕方ないところもあるのですが、再視聴の機会がないことはなんとも残念で、「その伝説の番組、観てみたい!」とずっと思ってた。
ところが、このたび2024年、いつのまにか、U-NEXTに登場したじゃないですか!(※2024年4月の情報です、U-NEXTさんは意外にコンテンツを出したり削除したりするので、いつまでも視聴可能とは限らない点、ご注意ください)
「この機会を流してなるものか」とこのたび、私は、この伝説の番組『このテープもってないですか』を遂に視聴したところです!
で、、、その感想ですが、
いやあ、、、これは困った、、、実に私には評価しづらい作品だぞ、、、
というのは私はこの大胆不敵な試みを「フェイクドキュメンタリー好き」としてはたいへん評価したいのですが、これをテレビ放送の中で流したというのはかなりアブない側面もあるのではないかな?!
つまり、これ、
たとえば今回の私のように、ネット検索の中で「フェイクドキュメンタリー」として紹介されているものをクリックした人なら、もちろん、嘘だとわかっているので楽しめますが、
何の予備知識もなくテレビをつけっぱなしにしていて、いきなりこれを見てしまった人の中には、かなり混乱して、真に受けてしまった人もいたのではあるまいか(番組の最後に「この番組はフィクションです」とちゃんとテロップは出てきますが、そこへ行き着く前に「なんだこの気味の悪い映像は!?」とマジメにびっくりしてテレビを消しちゃった人とかね、、、)
まあともかく、未視聴の人のためにこの番組の内容を説明しますと、
「テレビ放送開始69年記念」と題して、視聴者の皆様から、「皆様のご家庭に眠っている、過去の貴重なテレビ番組の録画ビデオを応募してください」と呼びかけた企画番組、、、のフリをしたフェイク番組ですw
案の定といいますか、ここに寄せられた
『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』なる1985年放送の深夜番組の録画ビデオが、、、ただの古い深夜エロ系バラエティ番組の録画映像かと思いきや、どんどんどんどん、不穏な映像と化していくわけなのですが。。。
うっかりテレビをつけてこれを見てしまった人も、どうか、安心してください!『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』という番組自体、実在はしておりませんw。1985年にそんな番組放送は実際にはされておらず、『このテープもってないですか』というこの番組の中で流されるために制作された、いかにも1980年代テイストで撮影されたフェイク映像です。
ところが、これがよくできている上に、
謎が謎を呼ぶ数々の不穏な「記号」や「ノイズ」に満ちており、
しかもややこしいことに、『このテープもってないですか』が放送された時、ちょうどWikipediaには『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』というフェイク番組についてのフェイク情報が堂々と上げられており、『このテープもってないですか』の放送中に
「なんだこの番組?『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』なんて番組、本当に1985年に存在したのか?」とネットを検索すると、ちゃんと『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』に関するフェイク記事がWikipediaに載っていたので、ますます混乱した、というもの。
視聴者を怖がらせ、不安がらせ、混乱させる、という目的のためには、実に手の込んだ仕掛けです。
ところが、実はここに、問題がある。
フェイクドキュメンタリー好きな私としては、その「仕掛け」の細かさ、「攻め」の姿勢は、高く評価したい。
でも、フェイク番組の放送に合わせて、ネットにも嘘の記事をあげておく、、、というのは、いささかアブない試みだったのではないかな?(もちろん、Wikipediaに記事を載せていたのが番組関係者だったというのは推測にすぎないのですが、ネットで「いくらなんでもやりすぎでは?」という声が上がり始めるとあわてて削除がされていたりと、前後の状況的には番組関係者の仕込みの可能性は高いと思います)。
フェイクの番組を突然、普通の番組の合間に放送して、かつ、Wikipediaやピクシブ百科などにも「番組に合わせた嘘情報」を上げておく、というのは、一歩間違えるとかなりアブない炎上商法になっていたのではないでしょうか?そういう問題を振り撒いているので、どうにも私はこの作品を堂々と喧伝はできないのですが、、、
ただし、
排水口の中から聴こえる怪音だとか
繰り返されるベビーカーのモチーフだとか、
しだいに放送に割り込んでくる赤ちゃんの泣き声のようなノイズとか、
いわゆるJホラー的な恐怖表現としてはとても洗練された映像感覚が続き、「みごと!」と言いたくなる細部に溢れている野心作です。
自分でも「怖い映像を撮ってみたい!」と思うことがあるクリエイター気質の方こそ、この製作者側の野心の高さに打たれるところがあり、気に入る作品ではないかな?その野心の高さがビビッとくる分、先述した、一歩間違えると炎上しそうなギリギリのラインを攻めているところは評価が難しくなってしまうかもしれません。
そんな「きわどさ」を含めて是非、自分の目で確認したいという方はぜひ、2024年4月段階ではU-NEXTで視聴できるので、チャレンジどうぞ!
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