長江俊和監督の『放送禁止』シリーズについて、ひとつひとつ、レビューしてきましたが、今回はいよいよ第六弾、『デスリミット』について語ります。
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まず最初に、この第六作についての、私の所感を、「いいところ」ヒトコト、「わるいところ」ヒトコト、で述べてしまうと、、、。
いいところ:
凝っている!
わるいところ:
凝りすぎてるw
というところでしょうか。私自身は二重三重の叙述の仕掛けがある複雑なモノを好むので、実のところ、この第六作についてなかなかの高評価なのですが、初見の視聴者にさまざまな誤解を与えかねない不親切さがある点は否めません。
まあ、あらすじを説明すると、
フジテレビの公式オンデマンドサイトの「あらすじ」にいわく、
ある映像ジャーナリストが追いかける家庭内暴力。妻に突然ぶっちぎれDVをはたらく暴力夫の隠し撮り。
https://fod.fujitv.co.jp/title/4462/4462110006/FOD公式サイトより
と解説されています。ってちょっと待ってよフジテレビさん、この「やっつけ」感あふれるあらすじ紹介文には何かガッカリだな、、、まあ番組の内容の説明として、正しいっつえば正しいのだが。
私なりに整理しますと↓
この『放送禁止』シリーズ、
第1回が心霊スポット、
第2回が大家族、
第3回がストーカー、
第4回は隣人トラブル、
第5回が自殺志望者の救済問題、
ときたわけですが、それでいうなら、
第6回は夫婦間暴力を取り上げています。、、、というのがタテマエで、例によって、みかけの事件の裏に別の暗黒の事件が進行している、というパターンになるのですがね。
今回も、見かけは、ある暴力夫とそれに悩まされている妻の生活を撮影したドキュメンタリー、、、と見せかけて、例によってドンデン返しが来るわけですが、
今回は凝っている!物凄く凝っている!というのがですね、この45分間の作品の中で確かに衝撃の真実がラストに明かされるのですが、なんとなんと、同時期に撮影が進められていた劇場版とも内容がリンクしていて、劇場版のほうを見ると、さらにもう一段階、ドンデン返しがあるんですね。
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まあ、そこが、この第6作が、「盛り込みすぎて難しくなったかな」と私が心配した点であって、
つまり、この第6作を見た限りの情報では、オチとしては足りないんですわw。それが、物語の中に視聴者が感じる非常に不自然な点に関わっていて、劇場版を見に行った人だけが、「あ、テレビ版の第6回を見た時に何かスッキリしないなーとモヤモヤした点は、劇場版のこのシーンと時間軸がクロスしていたためだったのか!」とようやくわかる。でもこれは、そのことを知らずに第6回を見た人には終始わからない話なので、
単純に本作「第6回:デスリミット」は、夫の行動がイマイチ不自然で、ありていにいえば「役者がヘタなのでは?」と思ってしまう危険がある、、、つーか、私自身も、劇場版を見るまでは「役者さんがイマイチ」と思っちゃってた。違うんですよー、劇場版を見ると、あの夜の夫の行動がどうも不自然だったことには実は理由があったんですよー、でもそれを理解することができるのは劇場版を見に行った人だけ、というのは、やはり不親切感が残りますよね?
という次第なので、よくも悪くも、この第6作「デスリミット」は、劇場版「復讐執行人」とセットで鑑賞すべきモノとなっています。第6回を見た後に、あまり間をおかずに、劇場版を見るべきかと。そうすると二重三重の伏線がようやくすべて回収されます。
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繰り返しになりますが、このように「わざわざ劇場版も見ないと謎が全部解決されない」というのは、視聴者の立場を考えると不親切感は否めない。だがまあ、よほど凝ったモノを見たい、という、叙述トリック好きには、この第6回と劇場版の連チャン視聴はオススメできるのではないかと思いました。
、、、という話までをしておいて、
最後に、ここまでのこの記事を読んで「いや、どういうことかわかんねえよ?ネタバレを含んでもいいから、もう少し、その『問題点』とか『二重三重のドンデン返し』とか言っている点を説明してくれよ?」と思った方のために、
以下、ネタバレを含んだ、指摘をしておきます。はい、この下にはネタバレが含まれので、イヤな方は、ここで離脱してください!
では、
ネタバレ5秒前!
4
3
2
1
、、、では、
ネタバレしますよ?↓よろしいですね?
はい、すでにこの作品を視聴された方はきっと気になりましたよね?この第6回で、夫が妻に暴力を振るう理由が、「餃子にはラー油と決まってんだろうがー!」とか、ギャグかと思うくらいに、しょうもない話である点。特に餃子にラー油がついてなかったら暴れ出した時は、「今回はギャグ回なの?!」と、私も笑ってしまいましたよ。「どうしたの放送禁止シリーズ?」と心配になったくらいにね。
でも、実はこれ、意味があったんです。
それが、劇場版を見ると、わかる。
つまり、
テレビ版第6回のドンデン返しは、「実はこの夫婦は最初からジャーナリストをおびき出し、私刑にするために罠を張っていた」という点で、
そこにさらに、劇場版を見ると、「実はこの夫は脅迫されて無理やり『DV夫』の演技をするように言われていた、、、だから本人も無理やりな理由を毎回見つけてアドリブ演技をしていただけだった」ということがわかる。カメラが回ってる前で何かしらDV男のフリをしなくちゃいけないプレッシャーに追い込まれていたので、無理やり思いついたのが餃子の件だった、ということ。
でも、こんなに大事な話が、テレビ版第6回の中では語られないので、劇場版を見なかった人は「第6回は夫の言動が不自然すぎてノレなかった」と思ってそれで終わりになってしまう。それは勿体無い気もしたので、せめて第6回の中でもう少し謎あかしに踏み込んでもよかったのかなあ、とも思う。
ただし、そうなると、劇場版の最大の問題点、「このような陰謀をめぐらせて不正ジャーナリストをハメよう、としている時に、わざわざ素人を脅迫して無理やり演技させるなどというリスキーなことをするか?」というツッコミが出てきてしまう。
まあ、そこが気になると本作第6回はとても気になる点だらけになるので、やはり本作は、「視聴者をダマしにかかってきている空想的な叙述ミステリー」と思って、おおらかに「ダマされよう!」という鑑賞態度で見るのが一番かもしれません。繰り返すとおり、私は、凝りに凝ったシナリオは好きなので、意外なほどに第6回には高評価を与えているわけなのですが。
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