フェイクドキュメンタリー考察

『放送禁止7:ワケアリ人情食堂』は旧来からのこのシリーズのファンには賛否両論かも【フェイクドキュメンタリー幻視行】

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ひさびさに、フェイクドキュメンタリーのレビューやります!今回は、長江俊和監督の『放送禁止
シリーズの第七弾、『ワケアリ人情食堂』についてです。

ところで、『放送禁止』シリーズの過去作はみんなDVDになっているものと思っていたら、この『ワケアリ人情食堂』はまだ(2024年3月現在)ソフト化されていないみたいですね?!

ただし理由はわからなくもない。

この第七弾『ワケアリ人情食堂』は、過去のシリーズからすると、いささか異色なんです。雰囲気的に別のシリーズではないか、と思ってしまったくらい。

それは構成の面でも顕著で、本作では、なんとなんと、くりいむしちゅーの有田哲平さんが、『世にも奇妙な物語』におけるタモリさんの如く、オープニングとエンディングに登場して、いろいろと解説をしてくれるんです。こんな親切設計は過去作にはなかったぞ?

だが、この有田哲平さん登場は、過去シリーズファンからすると賛否両論のようですね。「雰囲気が壊れる」「余計なことばかり言う」うんぬん。

は?私の意見ですか?

うーん、、、私も、正直「いらないのでは?」とは思いましたね。ただし、私の個人的な予想ですが、『放送禁止』シリーズの企画側としてはそろそろマンネリ化によるシリーズ存続の危機を感じていて、新規のファンを取り込もうと、「親切で親しみやすい設計」に路線を変えたんじゃないでしょうか?

私個人は、この『放送禁止』シリーズみたいな作品は、「知る人ぞ知る隠れた名作シリーズ」として、深夜枠で引き続きひっそりとやっていてほしいと思うのですが、なんだかんだついに劇場版まで拡大したことも受けて、「よりメジャー化」を狙ったのかもしれない。

そして、そんな「新規ファンを増やしたい」?な雰囲気は、私は本編にも感じていて、

この『ワケアリ人情食堂』は、地元で愛されている食堂の、お客さん達の人生相談に乗ってあげることで有名な「食堂の名物おばちゃん」を取材したドキュメンタリー、、、を装ったフェイクドラマなんですが、

過去の作品に加えて、私の感想として、

ホラー度が少し足りないかなあ、、、?あるいは「黒さ」というか。

それでいうと『放送禁止』シリーズでは、私が過去にレビューした作品としては、

やはり第二弾大家族編の「暗黒のオチ」とか、

第三弾「ストーカー地獄」の、「え?誰が誰で、誰と誰が味方で誰と誰が敵だったの?」とパニックになる、あのラストの数秒のショットとかが輝いていたなあ、、、

『ワケアリ人情食堂』は、ホラーやサスペンスというよりも、「叙述ミステリー」という方向性になっちゃっていた気はした。まあこれも、ホラーテイストが強い方が嬉しい私と合っていなかっただけで、この路線で「新規ファン」を開拓しようという野心の現れだったのかもしれない。

では最後に、ネタバレにならない程度に、この『ワケアリ人情食堂』のトリックのヒントだけ、軽く触れておきますと、

パターンとしてはこれ、

物語の映像が始まってから、最後まで、ずーーーーーーっと食堂の中にあった「あるもの」が、最後のどんでん返しに生きてくる、という回になっています。ずーーーーーーっとカメラには写っていた、アレです。アレが、いつのまにか、別のモノにすり替わっているんです。ただし間違い探しのような実に微妙な「すり替わり」なので、最後に有田さんが「違和感を感じませんでした?では、このシーンをよーく見てください?」とやるまでは、なるほど、私も気づかんかったw

繰り返すように、ホラーテイストを求める私には少し方針が違ったが、

本格ミステリとかが好きで、ラストの種明かしで「あ!あのシーン!確かに!何で気づかなかったんだろ!やられたーw」と叫ぶ感覚が好きな人、すなわち、「気持ちよく騙されるのが好きな人」には、この第七弾は気にいるかもしれません。「あれ?いつすり替わったんだ?」って、気になる人は、もう一回最初から見ちゃうでしょうしねw。

ただ、そういう「細かい映像の仕掛け」をスローモーションで再確認したい人の為にも、本作のDVD化は強く望むところでありんす。

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