偶然見つけた本なのですが、まさに、引き込まれた。名著と言っていい!
日本の古典、特に日記文学や藤原定家の和歌、九条兼実の『玉葉』等を中心に、
日本の中世人がどのように「夢と現実」を考えていたのか、に迫る、ものすごく興味深い本。
夢、というテーマに取り憑かれている私にピッタリの本だった。
だが何よりも驚きなのは、著者のカラム・ハリールという方が、
エジプトから日本文化研究のために来日していた方だということ。つまり、アラブ世界からの留学生の方である。
はっきり言って、日本古典文学へのこれほどの博識と深い理解を持ってくれている方が、まさかエジプトの方だとは、本を開いてしばらくして「私は日本から見れば外部から来た人間だが、まさにその視点を活かしたい」という趣旨の著者の挨拶文が出てくるまで思いもしなかった。
このような書籍が存在すること自体、アラブ世界と日本の交流史の上で感動的なことである。
だが、そうなるとがぜん、私も熱中したのは、本書の最後に「付論」として登場する、
日本文化の「夢」とイスラム・アラブ文化の「夢」の比較研究の章である。
お恥ずかしいことながら、「世界の夢に関する文学や伝承に興味がある」と言っている私も、中世アラビアにイブン・シーリーンという、まさに夢の研究に生涯を捧げた大学者がいた、という話を、この本のおかげで初めて知った。ただし、言い訳になりますがどうもこのイブン・シーリーンというアラビアの夢学者、そもそも彼の本はどうやら日本では翻訳されていない?ようですね、、、日本ではまだまだ認知されていない人物ということでしょうか?
何はともあれ、「夢と文学」に興味のある私はむさぼるように面白く読んだ本だったし、
エジプトという遠い国から来た方が、こんなにも凄まじい精度の日本中世文学論を書いてくれていたということに、率直に、とても感動したのでした。なんとまあ、今年の私の「読書の秋」は、古本でアタリを引き続けている!!
日本中世における夢概念の系譜と継承