トラウマ映画を語る

映画『回路』に出てきた日本ホラー史上最恐幽霊への海外からの人気に嫉妬してしまったハナシ

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うちの奥さんが、ふと、こんな感想を漏らしました。

「アメリカの幽霊はお金をかけた特殊効果で豪快に怖がらせにくる、日本の幽霊はお金をかけずに『しぐさ』で怖がらせにくる」と。

うちの奥さんはホラー好きではありませんが、特に90年代以降の日本ホラー映画を総括するにはピッタリな整理ですよね。感心した次第。

「日本の幽霊は『しぐさ』だけで怖い!」という点については、私にも言いたいことがあり。黒沢清監督の『回路』の前半にちょっとだけでてきた女の幽霊、あれはめちゃくちゃ怖くないですか

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別に何をしてくるわけでもなく、どこが怖いって「動き方がなんか怖い」としか言いようがない幽霊ですがw、この幽霊さん、海外のホラー映画ファンにも大人気のようで、たとえば以下の動画のコメントを見ても、「これこそ映画史上最恐の幽霊だ!」という絶賛の声が溢れていますね。凄い人気!

↓これがその幽霊の登場シーン。怖いものが苦手な方は閲覧注意

それにしても、日本語でも適切な形容詞が見つからないこの幽霊さんの「へんな動き方」w、英語圏の方々も表現に困っているようでちょっと面白い。

たとえば、

「この女幽霊はSwoop downしたのだ!」と説明している人がいました。この幽霊の動作を表現するにあたり言いたいことはわかる。ふわっと舞う感じが、ですね。ふわっとした。

ひどい英語表現をしている人もいました。「この幽霊はtripしたのだ」、つまり「躓いたのだ」としている方がいました。もっともこの人は案の定、他のコメントで「fool!」「idiot!」とボロクソに批判されています。そりゃそうですね、あの幽霊は躓いたわけではありません。このシーンはコントじゃないんだから。。。

Unheimlichという形容を当てている人もいました。これはちょっと面白い。「不気味な」と言いたいわけですが、これはドイツ語が語源ですね。で、このUnheimlichは、フロイト学派が使う「不気味なもの一般」という精神学用語でもあります。この幽霊さんを表現するのにフロイトの用語を当ててくるとはなかなかの言語使いとみた!

もうひとつ面白いのが、スラングだらけの「I get goosebumps and this strange feeling in my stomach」という感想。「鳥肌モノである上に胃袋にゾクゾクくる」という感じかな。言葉の意味はよくわかりませんが、なんとなく伝わってきますw

さて私の感想としては、これほどcreepyという形容詞が当てはまる幽霊もなかなかいないだろう、というところでしょうか。scaryというよりもfrighteningというよりも、このシーンはcreepyと呼ぶのがふさわしい。というわけで黒沢清の『回路』に出てくるこの幽霊さんこそ、

The creepiest ghost I have ever seen!

と思っております。

※なお、この幽霊を演じたのは前衛舞踏のダンサーさんだそうです。あの動き方、、、なるほど!


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