【英文法の例文を欧米圏の怪談・ホラーから集めてみた】nothing but をマスターしよう!

事件英語時代の思い出として、「地味に覚えにくくてイヤな慣用表現」ってありませんでしたか?今回とりあげるnothing butは私にとってはその代表格のひとつ。こいつと、よく似ているanything butとの使い分け問題なんて、ややこしさの極み、嫌っておりました。

今にしてようやく理解する。

この[but以下]は前置詞句にあたるのですね。

これがnothingにかかっている場合は、butが逆説なので、「何もなかった・・・と思いきや●●はあった!」という構文になり、日本語でいうと「ただ●●だけがあった」という訳し方になるわけです。

これを、「難しいことは気にせず、機械的に、”nothing but”は、『ただ●●だけがあった』、と丸暗記せよ」と教えられた記憶があります。もちろん、丸暗記した方が得意な人もいるので一概には言えませんが、私なんぞはやはり、ウンチクぽくなってもよいから、文法的な解剖を踏まえて教えてほしかったな。。。まぁ、けっきょく自力でこうやってたどり着いたからいいのですけど。

まあ、そのような過去の愚痴はこれくらいにして、

怪談ホラーの世界ではどのような実用例があるのかを見ていきましょう!

実例

About 10 yeas ago I lived in a place that was so countryside we were surrounded by nothing but mountains.(10年ほど前、私はただ山ばかりに囲まれた田舎町に住んでいました)《※引用元:Kowabana: ‘True’ Japanese scary stories from around the internet: Volume One / Tara A. Devlin》

なんと、これは実にわかりやすい!

見ての通りこれは怪談の語り出しの部分、オープニングの一文となっていますが、

nothing but mountains を使って、「山に囲まれているばかりの田舎」の雰囲気を表現しています。

この一文を、直訳すれば、

「10年ほど前、私は田舎町に住んでいた、それは周りに何もなかった(nothing)、山を除いては(but mountains)」というような訳になるのですが、

意味としては、「10年ほど前、私は田舎町に住んでいた、それは周りを山が取り囲んでいる他はなにもなかった」ということであり、ここまでくると、なるほど、nothing butを慣用表現とみなして、

10年ほど前、私はただ山ばかりに囲まれた田舎町に住んでいました

としてしまったほうが日本語訳はスッキリするし、これで文意も元の英文と合ってくる。

それにしても、この”but”という前置詞・接続詞がなかなかのクセモノで、扱いを間違えると日本語訳でまるで意味が正反対の「大誤訳」もやらかしかねない爆弾であるのですが、

そのような難しいハナシがbutには隠されている、ということに留意しつつも、

少し話は逸れるものの、ここで例文として挙げた”About 10 yeas ago I lived in a place that was so countryside we were surrounded by nothing but mountains.”、このまま丸暗記すれば日本の田舎町を表現する話の中でかなり使える例文なのではないか、と思ったりしたのでした!


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【英文法の例文を欧米圏の怪談・ホラーから集めてみた】「〜のような」like をマスターしよう!

「〜のような」という表現のlikeが問題になるのは、受験英語的に言えば以下のようなケースのとき。

以下の( )に入る適切な語句を選びなさい。
( ) other vampires, he also hated sunlight.(他の吸血鬼たちと同じように彼もまた日光を嫌っていた)
(1) As (2) Like

こんなホラーな例文は受験英語には出てこねーよ!」というツッコミは甘んじて受けておきまして、この問題の解答が「(2)Like」でしかあり得ないのはなぜか、わかりますでしょうか?

同じく「~のような」と訳されるasとlikeですが、実はasは接続詞であり、likeは前置詞である、という違いがあります(厳密にいうとlikeは「前置詞的用法の形容詞」ですが、最近はすっかり「前置詞である」と説明している文法書もあるようなので、あまりここではこだわらず)。

・・・したがって、後ろにS+V…の節が続くときはAs、名詞句が続くときはLikeということになります。

口語表現まで含めていうと、上記のようにスッパリ割り切れないところもあるのですが、受験英語的な世界ではこの区分で乗り切れる筈。

などという、退屈な文法ウンチクはこれくらいにして、

怪談ホラーの世界ではどのような実用例があるのかを見ていきましょう!

実例

The ghosts of Wales, like the people of Wales and the scenery of Wales, are varied and different and utterly delightful.(ウェールズの幽霊というものは、ウェールズのひとびとや景観と同じように、多種多様で違いに満ちていて、とても面白いものです)《※引用元: Haunted Wales / Peter Underwood》

とてもわかりやすい例文を見つけました。ここでは”The ghosts of Wales”は名詞句“the people of Wales”のようだ、そして名詞句”the scenery of Wales”のようだ、と言っているわけです。

イギリスを構成する王国のひとつウェールズについて、そこに出てくる幽霊たちは、かように楽しいものなのだ、と世界の人々に呼びかけているわけですね・・・って、このような文をウェールズの作家さんが力強く発信しているという事実のほうにめちゃくちゃ興味が湧いてきましたぞ!なに?ウェールズって、そんなに幽霊バナシや観光スポットに溢れているの?

うおお、行ってみたい!


It was said that the same field was haunted by a huge, black hound, or gwyllgi, with eyes like coals of fire.(同地は大きな黒い犬の姿をしたモノ、あるいはgwyllgiに憑りつかれていると言われており、それは燃える石炭のような目を持っていた)《※引用元: Haunted Wales: A Guide To Welsh Ghostlore / Richard Holland》

こちらはもっとわかりやすい。Eyesのあとにlike + coalsがついて、「石炭のような目」です。どんな石炭?“coals of fire”、というわけです。

ちなみに、ここに出てくるgwyllgiというコトバがなんとも厄介なものでして。辞書的に言えばウェールズ語でいう「くらやみの犬」みたいな意味なのですが、これ自体が、日本でいう妖怪や変化の類のような、モンスター名になっているとのことです。日本の妖怪のように(“like Japanese Yokai”!?)、「それは具体的にどんな姿なのですか?」と外国人が聞くだけ野暮なものかもしれません。

本日の参考書にした文献を観るだけでも、bwganとかbwbachとかEllyllとか、ウェールズの昔話・伝承の世界にはこういった謎めいた妖怪変化の名前がたくさん伝わっているらしい。日本の妖怪文化にも通じるものでしょうか?だとするとますます興味津々な!


かように見れば見るほど、英語圏文化(ウェールズを「英語圏」と括ってしまうことも細かい問題はありつつ)の、妖怪変化の多種多様さにも心惹かれてしまいます。つきつめすぎるとまさに沼地にハマりこみそうな世界ですが・・・!

▼本記事の参考文献▼

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【英文法の例文を欧米圏の怪談・ホラーから集めてみた】不定詞 In order to をマスターしよう!

不定詞の慣用表現”in order to“は、「〜するために」と訳されます。目的や意図を表現する慣用的表現、などと言われます。

もともとto 不定詞には「目的や意図のto do」という用法がありましたよね。その前にin order をつけることで、「後に続くto do は目的や意図の用法だぞ」と、意味を明確にしているのだ、ともとれます。

・・・って、このような教科書的な解説など退屈ですよね?!

では、おさらいはこれくらいにしてテキパキと、

怪談ホラーの世界ではどのような実用例があるのかを見ていきましょう!

実例

The general story is that she underwent plastic surgery, which failed badly and left her with her mouth torn wide open. In order to unleash her unbearable build-up of rage, she attacks elementary school children on their way home from school, one after the other.(よく知られている話によると、彼女は整形手術で失敗し、その結果、口が大きく裂かれたままになった。彼女は堪え難いその怒りをぶつけるため、下校中の小学生を次々に襲うようになったという)《※引用元:Kowabana: ‘True’ Japanese scary stories from around the internet: Volume One / Tara A. Devlin》

おおお!いきなり、実にわかりやすいin order to の実例を見つけました!Tara Devlinさんによる口裂け女の説明文ですね!In order to unleash her rage, つまり、「彼女の怒りを解き放つために」ということで、彼女が小学生を襲う理由を説明しています。・・・って、よく読むと、「怒りを解き放つために小学生を襲う」って、構文はあっているけど、目的と行動のつながりがいまいちよくわからない気もしてきたな・・・まあ、バケモノのやることですので。


The police were very sceptical but in order to eliminate her suspicions gave her the photo-ID book of all known dissidents in the UK.(警察は半信半疑だったものの、彼女の心配を取り除いてやるために、彼女に英国潜伏中の反体制派の写真一覧を見せてやった)《※引用元:London Urban Legends: The Corpse On The Tube And Other Stories / Scott Wood》

こちらはロンドンの都市伝説を集めた洋書から。一時期出回った、「私の友達の友達の友達が、あるアラブ人に親切にしてあげたところ、『○月○日の地下鉄には乗るな』とそっと教えられた云々」のデマのemailの一例です。

「念のため、警察へ行ってみたところ、警察は信じてくれなかった。けど、彼らが見せてくれた要注意人物の顔写真の中に、私に声をかけてくれたアラブ人とそっくりな写真があった!」とくるのが、この手のデマのパターンでした。

その文脈の中で、「(半信半疑な)警察がともかく彼女を安心させるために資料を見せてくれた」という箇所で、in order to が使われています!しかしこの手のデマは差別につながるので実に怖いですね。


以上、only toの霊文を・・・いえ失礼、例文を集めてみました。ぜひ、参考にしてくださいませ!

本記事の参考文献

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【英文法の例文を欧米圏の怪談・ホラーから集めてみた】不定詞Only toをマスターしよう!

不定詞の慣用表現”only to“は、「(~したが)結局・・・だった」と訳され、文法的には「逆説的結果」などと呼ばれます。

・・・が、そんな細かいことはココではズバッと割愛しまして。最小限のおさらいだけで怪談ホラーでの実用例に向かいましょう!

≪というわけで、最小限のおさらい≫

・To不定詞の副詞用法には、もともと「結果を示す用法」がある。

・それは動詞を修飾して、「結果が●●になるように、○○をした」といった意味合いになる

・そのto不定詞の前に”only”がついたわけだから、「ただ●●という結果を得るために○○をした」ということ。


つまり、「残念な結果に終わった」というガッカリ感が出ることが大事です。

「オレは自分がこの仕事に向いていないと発見するために今日まで働いてきた」とか、「私は彼が冷たい人だと気づくまで三年も付き合ってきた」とか。

文章は肯定文だけどネガティブパワーがメラメラしているのがonly toのココロです。

それでは、怪談・ホラーの実例で説明しますね。

実例

It was not long before the telephone rang. Linda answered the telephone, only to hear the heavy breathing of the caller on the other end.(まもなく電話が鳴り始めた。リンダは受話器をとったが、電話の向こうからは、重い息づかいが聞こえてくるだけだった)《※引用元:The Vanishing Hitchhiker: American Urban Legends and Their Meanings / Jan Harold Brunvand》

「ルームメイトの死」というアメリカの有名な都市伝説の中から。only toは何にかかっているのか?主節のanswerにかかっているんです。直訳すると、「電話にanswerしたことは、ただ重い息づかいを聞くだけの結果に終わった」、つまり、「電話を取ったが(普通は相手からコトバガあるはずなのに)息づかいだけだった」というわけです。さっそく不穏な雰囲気バリバリですね!いいですねー!


In the end, many people burned to death, and those who survived were trapped inside the airtight space of the tunnel only to die from smoke inhalation.(ついにはたくさんの作業員が焼け死に、焼死を免れた者もトンネルという閉ざされた空間の中で行き場を失い、煙による呼吸困難で死んだ)《※引用元:Kowabana: ‘True’ Japanese scary stories from around the internet: Volume One / Tara A. Devlin》

怪異が出るトンネルの由来を説明する文章です。焼死から免れたものの閉じ込められ、その結果は、ただ残念な結果(=only to)、煙に巻かれて亡くなった、というわけです。怖い怖い怖い!いいですねー!


the ghosts faded away, only to appear again in a more hideous shape than before,(幽霊は姿を消したものの、より恐ろしい姿となってまた現れた)《※引用元:Tales of Old Japan:Folklore, Fairy Tales and Ghost Stories-Classic Original Edition / A.B.Mitford》

明治日本の怪談を映画館に紹介したのは小泉八雲だけじゃない!オレもいるぜ!」と言ったといわれている・・・というのは私の妄想の中でのハナシですが、とにかく日本怪談を愛した英国人アルジャーノン・ミッドフォードの英語より。消えた(faded away)したのは、ただまた現れるつもりでのことだった、つまりすぐまた現れた(appear)のですね。幽霊ご本人がどう思っているのかはともかく、人間側を主観にした時、たしかにこれもまた、「残念な結果」ではあります!


以上、only toの霊文を・・・いえ失礼、例文を集めてみました。ぜひ、参考にしてくださいませ!

本記事の参考文献

The Vanishing Hitchhiker: American Urban Legends and Their Meanings【電子書籍】[ Jan Harold Brunvand ]

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