雑記

怪異妖怪をめぐる冒険が『きみの体は何者か』に結びつくとき

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「怪異」とか「妖怪」とか呼ばれるものとの付き合いはずいぶん長い。

そして深く掘れば掘るほど、気づいてくることがある。

私が「怪異」とか「妖怪」とかを通じて考えていた問題意識とは、実は「身体と言語」をめぐる問題意識だったのではないか、と。

奇妙な体験をする。怪異や妖怪の「実在」を信じるかどうかはあまり関係なく、何かを体験してしまった人は、身体に「きみのわるい感じ」が残る。その「きみのわるい感じ」は言語にして人に伝えることでようやく自分の中で位置づけられる。それが共同体の中で位置づけられると、今度は「○○とぎ」「○○おとし」「○○鬼」のような、名前がつく。それによる「きみのわるい感じ」の昇華と、または、「きみのわるい感じ」の残滓に、私は興味を持ってきた。

ということは、少なくとも私にとって、妖怪学の関連科学は言語学であったということになる!!

そんなことを考えていた最近。

伊藤亜紗さんの「きみの体は何者か」を読んだ。主に吃音の問題を中心に据えて、身体と言語の関係を扱った、少年少女向けのわかりやすい本だった。

吃音による、言いたいことと、それが言えないこととの「ズレ」の話は、けれども、吃音を持っていない人が「無意識にでもべらべら喋れてしまう」がゆえに気づいていないたくさんの問題を抽出する。

そして本書が示してくるように、「自由にべらべら喋ることができる」ほうが、はるかにフシギで、異常で、よくよく考えると、危険なことなのだ。

ともかく。

本書が主張する、「ズレへの注視」というテーゼに私としてもとことん賛成をしたい。

そして、冒頭でも述べたとおり、私が「怪異」とか「妖怪」とか呼んでアプローチをしていた対象とは、実は「身体と言語のズレ」に対するこだわりであったのかもしれないわけだから。

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