データで読む『怪談のシーハナ聞かせてよ。』:体験者の名前で「Mさん・Iさん・Kさん」が上位に来るのはナゼ?

前回の記事(≫一番よく使われている体験者の名前は、Aさん?Bさん?Cさん?)では、『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第1シーズン放送の全333怪談から、どんな名前が「体験者の名前」として好まれて使われているかを分析してみました。

その結果、「聴き手に邪魔にならない」Aさんが上位に来たのは予想通りでしたが、Mさん・Iさん・Kさんが上位の頻度で使われていることがわかり、この理由は何だろう?ということを宿題にさせていただきました。

で、こちらの件ですが、その後MさんKさんIさんが登場した回を深掘りしてみたところ、

あっけなく、理由がわかりました!

Mさん、Iさん、Kさんが登場した怪談を集めて、話者である怪談師さん単位で割ってみたところ、以下のような結果になりました。

『怪談のシーハナ聞かせてよ。』において最も怪談を語る機会の多い(※毎回、最低でもひとつは披露しているわけですからね・・・)上間月貴さんが、特定のアルファベットに寄らないように、複数のアルファベットに「散らしている」工夫をしているように見えます。つまりナゾの分散の理由はほとんど上間さん一人の影響でした!

もう少し詳しく見るために、上間月貴さんが使った「名前」と、そのばらつきをみてみましょう。

アルファベット26文字以内17文字まで活用して分散しています。この中で上間さんが特に採用しがちなのがIさんKさんMさんという次第でした。

他にも、登場回数が多い方は、なんとなく似たような分散になってくるようで、

登場回数が増えた怪談師さんほど、最初のほうはAさんを比較的使いつつ、しだいに同じアルファベットの反復を避けるようになる。その際、H・I・J・K・L・M・Nあたりのアルファベットが確率的にやけに狙われる、という傾向が掴めました。

それにしても、宇津呂さんも高田さんも「Mさん」と「Nさん」になんとなく引き寄せられているのは何なのでしょうね?偶然なのでしょうか?このあたりのアルファベットが選ばれやすい何かセオリーがあるんでしょうか???

この調査をしていて、別の面白い発見があったので、それも以下に記載します。

今仁さんのケースをぜひ見ていただきたい。3回だけ「Aさん」を使っているものの、その他はアルファベットに頼らず、毎回、仮の名前とはいえ、固有名を割り振ってあげているんですね。これはシーズンを通じて集計してみないと気づかなかった、今仁さんの見えないところでの工夫と言えるのでは?!

似た工夫をされている方をもう一人、見つけました。

城谷歩さんです。こちらも、アルファベットよりも、固有名の割り振りで語ることを好んでいらっしゃいます。それにしても、狩野英孝さんが司会をされている番組で、「カノウさん、という体験者さんから聞いたオハナシです」と始めた時はちょっと笑いました!狩野さんもこの時は苦笑してましたね。

さて、この結果を見て、いかがでしょう。あなたが次に人前で怪談を語る時は、無記号的「アルファベット」派でいきますか?それとも、何らかの固有名を逐一、割り振ってあげますか?最終的にはこれは好みの話になるので、お気に入りの怪談師さんの語りを研究しながら、ご自身の「喋るときのセオリー」をぜひ、作って行っていただければと思います!


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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データで読む『怪談のシーハナ聞かせてよ。』:一番よく使われている体験者の名前は、Aさん?Bさん?Cさん?

実話怪談というものは、おおよそ、以下のような始まり方をしますよね。

「これはあんまりハッキリとした場所は言えないんで、兵庫県とだけ、言っておきます。Aさんというね、石材屋さんの体験なんですよ。今から十七、八年前ゆうことでしたね・・・」(※宇津呂鹿太郎さん『依頼』の冒頭より引用)

「マニアックな話ですいませんが、ノコギリクワガタというクワガタがいます(中略)。私の友だちにBさんという中年の男性がいまして、近くに住んでいるんですけどね、彼の息子が、クワガタが好きで・・・」(※戸神重明さん『バリカン大発生』の冒頭より引用)

このように、体験者の名前を「Aさん」とか「Bさん」といった仮の名前にして語るのが、実話怪談の最近の定型。

で、少し気になってきたこと。

たとえば『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第1シーズンの全333怪談から「体験者の名前」を抽出して、どんな名前が多くの怪談師さんに好んで使用されているかの傾向を出してみたら、結果はどうなるでしょう!?

個人的な予測としては、「Aさんが筆頭に来るのではないか!?」というもの。

というのも、怪談師さんというのはまず「伝わりやすい語り方」を研究されている方々やので、できるだけ聴き手の邪魔にならない、無個性な仮名を好むのではないでしょうか?

となると、アルファベットの第1番目に出てくる「A」が、最も好まれて使われているハズ

この仮説が正しいか、以下の方法で検証してみました!

・第一シーズンの全333話から、「体験者の名前」を抽出する

・抽出した名前で、「さん」「くん」「ちゃん」「子さん」の表記ゆれは、すべて「さん」に統一する(例「Aくん」や「A子さん」は、「Aさん」に正規表現で統合する)

・怪談師さんご自身の体験談を語っているハナシは、「自身の体験談」という名称を振る

・上記の前処理を施したものを棒グラフに描画する

その結果が、以下となりました(上位10位までを描画)。

「自身の体験談」が、333話中45話を占める(13.51%)というのは、それはそれで、ひとつの発見でした。怪談師さんご自身の持ち込み体験談が『怪談のシーハナ』のひとつの核をなしております(※もっとも、この13.51%を「意外に多い」とみるか「意外に少ない」と見るかは、その人の「実話怪談」へのイメージで違ってくるところかもしれません)。

次点には、おお、予想通りに「Aさん」が来ました!全体の11.71%が「Aさん」です

その理由としては、私が考えたように、「ハナシを聴き手に分かりやすくするための配慮として、無機質な記号”A”がいちばん好まれる」からではないか、と思いますが、いかがでしょうか?

となると・・・問題となるのは、3位以下

無機質なアルファベットであるところの「Bさん」や「Cさん」が上位に来るのかと思いきや、「Mさん」「Kさん」「Iさん」が好まれているのはなんなのでしょう?!

日本人の名字で多いのは、佐藤さん・鈴木さん・高橋さんです。Iに該当しそうな「伊藤さん」や、Kに該当しそうな「加藤さん」は、日本人の名字上位10位にかろうじて入っている程度。Mで始まる名字である松本さんや前田さんがその他を押しのけて3位に来ているとも、どうにも私には思えない!

これはなんなのでしょう?「Mさん」「Kさん」「Iさん」が、語りの上で発音しやすい等、実話怪談で選好されやすい何かがあるのでしょうか?

これはナゾで、今の私には回答が見いだせておりません・・・。(※後日注:このナゾは別の切り口で分析をしていた時に解けました!右の記事を参照ください≫体験者の名前で「Mさん・Iさん・Kさん」が上位に来るのはナゼ?

だがひとつ、言えることがある。自身も怪談を語ってみたい、となったとき、冒険しないなら、やはり「Aさん」を使うのが妥当かと!あえて「Mさん」「Kさん」「Iさん」を使うと、ちょっと通っぽくなる・・・かもしれない・・・!

全データを以下に貼り付けておきます。下のほうは、かなり細かい職業名や出身名を当てられているケースが多くなりますね。ちなみに「熊谷の女子大生」は、かの暗黒怪談「紐引き女」の回ですね・・・あれ聞いたら新幹線で熊谷を通るたびに紐引き女のことしか思い出せなくなってしまいました・・・。

行ラベル個数 / 体験者百分率
自身の体験談4513.51%
Aさん3911.71%
Mさん195.71%
Kさん144.20%
Iさん133.90%
Cさん113.30%
Nさん103.00%
Yさん82.40%
Bさん72.10%
Sさん72.10%
Uさん61.80%
Hさん51.50%
Fさん41.20%
Rさん41.20%
Tさん41.20%
ケイコさん41.20%
Eさん30.90%
Oさん30.90%
Wさん30.90%
ある男性30.90%
タカハシさん30.90%
知人の体験30.90%
本人の取材30.90%
友人30.90%
Dさん20.60%
Jさん20.60%
あるサラリーマン20.60%
ある大学生20.60%
イシカワさん20.60%
お母さん20.60%
カズキさん20.60%
カナさん20.60%
サクラダさん20.60%
セイカちゃん20.60%
小学生20.60%
知人の女性20.60%
ササキさん20.60%
(怪談師さんの)ファン10.30%
35歳男性10.30%
40代男性10.30%
N実10.30%
アーウェン10.30%
アリサカさん10.30%
あるおじいさん10.30%
あるバスガイドさん10.30%
あるバンドのドラマー10.30%
ある主婦10.30%
ある主婦の方10.30%
ある女性10.30%
ある新婚の夫婦10.30%
ある人10.30%
ある男の子10.30%
アンノくん10.30%
エリさん10.30%
オオサワくん10.30%
オサムさん10.30%
カノウさん10.30%
ケンちゃん10.30%
サトウさん10.30%
サトシ10.30%
シンジさん10.30%
セキグチさん10.30%
タクシー運転手10.30%
たけしさん10.30%
タナベさん10.30%
タンジエさん10.30%
ナカジマさん10.30%
ナツキさん10.30%
ニシヤマさん10.30%
ノリコさん10.30%
の体験談10.30%
ひろさん10.30%
ポールダンサー10.30%
マイコさん10.30%
マエダさん10.30%
マスダさん10.30%
マナミさん10.30%
まみこさん10.30%
まゆこさん10.30%
マリさん10.30%
ミキさん10.30%
ミサキさん10.30%
ヤマモトさん10.30%
ユキヤさん10.30%
ヨシカワさん10.30%
ヨシミさん10.30%
リエさん10.30%
リカさん10.30%
沖縄に住んでいた男性10.30%
会社の後輩10.30%
怪談イベントに来ていた客10.30%
怪談バーのお客さん10.30%
看護師の妻10.30%
吉村智樹さんの取材したハナシ10.30%
熊谷に住む女子大生の話(を聞いた親戚のおじさんの話)10.30%
山形の女性10.30%
社長さん10.30%
須藤為五郎さん10.30%
声優10.30%
先輩芸人の知人10.30%
祖父10.30%
祖母10.30%
大学のときの先輩10.30%
大阪の知人10.30%
知り合いの人10.30%
知り合いの漫画家10.30%
知人10.30%
知人のバーテンダー10.30%
田中さん10.30%
登山家田中さん10.30%
都内に住む女性10.30%
同級生10.30%
同年代の男性10.30%
独身の男性の方10.30%
舞さん10.30%
妹さん10.30%
友人の従姉妹10.30%
由美さん10.30%
林さん10.30%
麓にある宿の主人10.30%

※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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さまざまな切り口からのベスト怪談集:「異次元系」の名作怪談10選

私個人の好みの怪談パターンとして。

現代実話怪談でいちばん面白いのは、幽霊モノでもヒトコワでもなく、私が「異次元系怪談」と呼んでいるもの。

それは「パラレルワールド」とか「タイムスリップ」とか、あるいは「記憶の書き換え」を疑わせるようなフシギ系。『トワイライトゾーン』やら『世にも奇妙な物語』といった作品に登場しそうな不可解なオハナシ。

量子の異常なのか、時空の異常なのか、はたまた人間の脳のフシギな暴走がもたらした高度な幻覚だったのか?「科学的にも、なんとか説明がつきそう・・・な気がする」寸止めの「異次元系怪談」は、そういう意味で、特に私のようなSF系ホラーが好きな人間の興味関心を、今日も強くそそる怪談たちなのです!

第十二回で登場した『ニュース』は、私のいう「異次元系怪談」の代表例として提示したい怪談。けっきょく何が起こっていたのか、さっぱりわからない。誰が悪いとも、誰がおかしいとも、判然としない。わかっているのは、わずかな間、体験者がトイレに行っている間にだけ、世界が少し、変わっていたらしい、ということだけなのです。

第三十三回の『決まりごと』も忘れがたい。これは話を聞いている最初は心霊系怪異と思いきや、実は時間ループ系(かもしれない)という解釈を残すオチに持ち込まれるもの。そしてもし、「あれ」が時間のループによって見えていたものだったとするならば、体験者さんの運命はおぞましいほど救いがない!まだ第三者の幽霊のせいだったほうがマシだった!?

第二十八回の『インターホン』は、これまた幽霊のシワザなのかなんなのか、混乱させてくるハナシ。私としては、幽霊の類というよりも、何らかの並行世界(曖昧な言い方ですいませんが!!)の存在を感じさせる不思議譚と思ったのですが、いかがでしょう?

第十九回にて洋介犬さんが放った異様きわまる怪談『円盤』。UFOもの、といえば、UFOものなのですが、それで済ますわけにはいかないキミョウキテレツさがたまりません。そして、恐ろしいことをひとつだけ、言ってしまっていいでしょうか?見間違いかと思いますが、私も子供の頃、このハナシに出てきた「ヒトデっぽいなにか」の描写とやけによく似たものを一度見ているんですよね・・・いや見間違いとは思いますよ・・・でも、こうも、怪談師さんが語る別の方の体験談と符号している「ように見える」のは、なんか・・・しこりとして・・・のこりますよね・・・ヒヒヒ。

場所は伏せられているものの、兵庫県のどこかで起きたハナシということだけわかっている、宇津呂鹿太郎さんの『依頼』。まさにこのままトワイライトゾーンや世にも奇妙な物語に登場してもよいような、異次元系の摩訶不思議なエピソード。掛け軸がキーアイテムとなって、時間ないし空間が歪んだ(これまた曖昧な言葉で失敬!!)としか思えない。

百物語スペシャル第四話目で丸山正也さんが披露したのが、干していた洗濯物に見知らぬ人の洗濯物が混じっていた、というところから始まる怪異。単に誰か近所の洗濯物が間違って紛れたのかしら?と思っていたら、事態は意外な展開を見せます。人間の無意識のなせるイタズラだったのか、それとも本当に時間が歪んだのか?

百物語スペシャル第三十三話目にて星川慶子さんが話した、田舎のホテル宿泊時の怪体験のハナシもまた、私の言うところの「異次元系」の典型といえます。これまた実にヘンテコなハナシ。ただし、テレビドラマと違って、落ち着いて対処したらあっけなく怪現象が収まってしまうという、「何か悪意があるもののシワザというわけでもなかったらしい」おいてけぼり感が、実話怪談ならではの後味。

放送第五十四回で、アシスタントの高田のぞみさんが、番組卒業のタイミングで語ってくれたご自身のモチネタが『青いジャンパー』。高田さんが第壱章の最終回にこんな隠し玉を持ってきたとは!これは凄いハナシ。まさに異次元系ですが、子供たちの世界が舞台ということで、なんとなく物悲しくもある。名怪談!

地味ながらも「異次元怪談の典型」としてもうひとつ忘れがたいのが、百物語スペシャル第三十八話での、狩野英孝さんのハナシ。本人は「こんなのも怪談として、いいんでしょうか?と迷いながら持ってきたネタです」という意味のことを仰っていますが、いやいや、実にいい怪談じゃないですか!確実に異様な現象が起こり、弟とお父様とさんざんその話をしたはずなのに、ある日を境に、ケロリと、自分以外の家族全員がそのことを忘れてしまった、というオハナシ。自分だけが覚えていて、他の家族はみんな「なんだっけその話?」と冷たく反応してくるのは、狩野さんご自身がおっしゃるとおり、「実話怪談あるある」ですよね。ありますよね、でも、なんなのでしょうね、この系統のハナシ。

最後に、第五十三回で国沢一誠さんが話した『Siriにまつわる話』。最新テクノロジーがもらたす不可解な事件、というわけですが、それにしても「電話」というものが登場したら大量に「電話怪談」が生まれ、テレビというものが登場したら大量に「テレビ怪談」が生まれたように、意外なことに怪談とテクノロジーはいつも親和性が高いものなのです。たしかに、言われてみると、Siriってなんか、ブキミなモノですよね・・・!

総評として、この「きりくち」を扱っている中で、私は「無意識のイタズラ」という言い方をしましたが、存外、これが私の「怪談」に対する態度のすべてを物語っているかもしれません。実は私は幽霊というものを信じてはおりません。ただし、「怪談」というものがウソだと思っているわけでもなく、おそらくそれは、迂闊な言い方になるかもしれませんが、どちらかといえば人間の「無意識」とか「深層心理世界」とか「潜在脳力」といったものの可能性にかかわる、ナニカなのではないか、と。

本当にナゾめいた怪談は、私たちが「自分の意識はこういうもので、現実はこう見えるもの」と安住している日々の「世界の見え方」に、突然、穴を開ける

それが、世界の側で何かが起こっているのか、脳の中で何かが起こっているのかは、禅問答みたいな話になり、ぶっちゃけ、どちらでもよろしい。

そうした「安住している世界の見え方」に、ぬらりとした穴が開く感覚、これを楽しみに、私は怪談を聞いているところがあります

そして、そんな私にとって、「異次元系」とここで整理したような怪談はまさに、「安住している世界の見え方」に穴を穿つ最高の事例たちなのでした!

※次回はいささか番外編となりますが、本篇の怪談以外で語られた、トークの中でのちょっとした怪談で、むしろ怖かったもの3編を紹介させていただきます!


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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さまざまな切り口からのベスト怪談集:「この人怖いな」と思った怪談師5選

今度はまた少し変わった切り口で整理をしたいと思います。

『怪談のシーハナ聞かせてよ。』を連続視聴していく楽しさのひとつは、さまざまな怪談師さんの経歴や自己紹介を聞くことができる点ですよね?

ところがその中には、「怪談師さんご自身が何かに憑かれている?」というような禍々しいジンクスを持参されてくる方もあり!

今回は、そのような、「怪談本編だけでなく、ゲスト怪談師さんの自己紹介パートが既に怖かった」回を5つ、集めてみました!

第三回のいたこ28号さんが恐ろしいのは、怪談『愛しの雛人形』を語った後の、体験者に対するその態度。

何やら不可解な呪いに憑かれた体験者の方から、いまだにメールで連絡が来るということを受けて、「ヒトとしては、なんとかなってほしいと思う反面、怪談マニアとしては、死なれたら困るけど、(そうならない程度に)続きの何かが起こってほしいんですよね」という意味のことを、とても楽しそうに仰っております。

真の怪談マニアとはこういうものか!

そうですよね。怪異に巻き込まれてしまった体験者たちに、ココロの底ではどこかで「いいぞもっと何か起これ!」と思っているようなところがないと、長期活動できる怪談師さんにはなれませんよね。怪談師さんって穏やかな人が多いけど、よく考えると、こええな。気を付けよう、、、ブルブル。

同じく第三回に登場した郷内心瞳さん、この回は事件といってもよい、とんでもない話を持参してやってきます。

「本当は今日、語ろうと思っていた怪談があったのに、準備をしていただけで目が腫れ上がる怪異があったので、急遽、内容を変更してきた(そうしたら目の腫れが引いた)」とおっしゃるのです。こわい・・・と思っていたら、次収録回に判明したことですが、この「目の腫れ」はアシスタントの高田のぞみさんに感染したようなのです!言われてみれば収録場所の四谷はかの四谷怪談の土地柄。何か関係がある、とでも、いうのだろうか・・・?

第十回に登場した笑福亭純瓶さんは、居酒屋等で怪談を披露することがあるそうですが、「私が怪談を語るとそのお店はなぜかつぶれる」というジンクスを持参してきて、とっても楽しそうに披露します。「ここで怪談をやっちゃダメじゃないですか!」というせきぐちあいみさんのマジ反応が、実にいいw。

その笑福亭純瓶さんを上回ることを言いだしたのが、第二十三回に登場した川奈まり子さん。「わたしと共演した女優さんはみんな死ぬ」というジンクスを持っていらっしゃる旨を自慢げに語ります。「こんな人を呼んじゃダメじゃないですか!」というせきぐちあいみさんのマジ反応が、再び、いいw。まったくですよね・・・!

第二十八回に登場した城谷歩さん。「城谷さんにも心霊体験とか、あるんですか?」と訊かれたときに、「はい、私の場合は、みる・きく・さわる、全部あります」な回答をしています。ちょっと待ってください!「さわる」がめちゃくちゃ気になるんですけど!城谷さんの「自身の体験談」には凄いのがいっぱいあるので、これは第弐章に持ち越しの、お楽しみ案件となります。

【総評】

総評として・・・振り返りみれば、笑福亭純瓶さんが怪談を語ったところでビクともせずに『怪談のシーハナ聞かせてよ。』は長寿番組となり、川奈まり子さんが出演しても、せきぐちあいみさんも高田のぞみさんもその後もぴんぴん元気ですね。ヨカッタ!「怪談を語ることは魔除けにもなる」という別のジンクスがある通り、これだけ怪談が語られている本番組の収録現場では、むしろ中半端なジンクスは通用しない!・・・とでも、いうのだろうか?

※次回は私好みのテーマとなりますが、「時間がループした?!」とか、「見た目は同じなのに住民が違う(パラレルワールド?)ところに一瞬迷い込んでいた」といった、異次元系怪談とでもいうべきテーマの名作怪談10選をピックアップして紹介します!

さまざまな切り口からのベスト怪談集7:「異次元系」の名作怪談10選


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さまざまな切り口からのベスト怪談集:真似したくなる語り口10選

『怪談のシーハナ聞かせてよ。』の楽しみ方は、毎週入れかわり立ちかわり登場する怪談師さんたちの語りのテクニックを堪能することにあり!

その観点から見たとき、思わず語り口を真似したくなる怪談回、というものをピックアップすることが可能です。

・・・という次第で、全54放送回中の333怪談から、私が語り口にほれ込んだ怪談10個を集めてみました!

『雪国』

「気のせいかさ?」などなど、牛抱せん夏さんが長野県の方言を随所のセリフに投入した語りで怪談を語ってくれた回です!雪深い田舎でのオハナシということで、この方言の投入が雰囲気づくりにばっちり貢献している!とはいえこれはもちろん地方出身の方でないと使いこなせないワザ、となりますが、地元の怪談を語る際に土地の雰囲気を出したい、という地元愛溢れる方はぜひチャレンジしてみたい怪談語りではないでしょうか!それにしても私、牛抱さんはずっと千葉県出身(つまり私と同郷)と思い込んでいたのですが、千葉に来る前の幼い頃には長野県の野沢温泉村にいらっしゃったのですね。

『上手な絵』

語りスピードの緩急に注目したい!女の子の様子がだんだんおかしくなっていくに伴い、絵を描いている時の鉛筆の音、「シャシャシャシャシャー!」が、どんどん早くなっていきます。クライマックス(しかもなんとも凄惨な破局)に向かってどんどんアクセルを踏んでいく感じの語り口が怖い!

『鈴』

山口綾子さんの表情・口調がだんだん無表情かつ無機質になり、ブキミさを盛り上げていく怪談。つくづく、「間のとりかた」がうまいな、と聞いていると、途中で恐ろしく長い「間」をとります。・・・と思ったら、なんとこの時の間は意図的なものではなく、山口さんは本当にこの瞬間、何か「ヘンな耳鳴り」を食らっていたそうです。怖い、やめてー!語り口のテクニックに相乗して、ナニかがほんとに来てしまった瞬間、とでもいうのだろうか!

『鼠』

まさに怪鼠(としか呼びようのないモノ)が歩き回るオハナシです。吉田会長の「タッタッタッタッタ、カリカリカリカリ、トトトトトト!」という擬音語の反復が情景を盛り上げます。それにしてもナニモノだったのだ、「あきやまみさえ」!?

『第五號室』

怪談のシーハナを語る上では避けて通れない『怪談社スペシャル』で披露された一遍。糸柳さんと上間さんの二人がかりでの語りというオオワザが炸裂、すごいです!怪談が終わった後の、狩野さんのコメント、「ハナシの受け渡し方(びっくりするから)どうにかしてくんないかなー」に笑った。はい、同じ気持ちです。「からから」のところで狩野さんめちゃくちゃびっくりしたんですね。ハイ、私も「からから」のところでビックリしましたよ!

『温泉旅館の露天風呂』

最初はハナウタで表現していた音楽のメロディーが、少しずつ、歌詞つきの唄に変わっていきます。「ふーんふんふんふん・・・ふにゃのなかのとりは」と、みんなが知っている(そしてみんなどこかで気持ち悪いと思っている)あの唄にだんだん変わっていく感じがたまらない。やっと終わった、と思ったら・・・最後にもっかい、このメロディーの反復による追い討ちが!

『いいものがあるよ』

怪異にまきこまれた体験者の主観が、ふと、元の駅の情景に戻るところの話調の切り替えに注目したい!駅のホームの喧騒の表現→「ねえ、いいものがあるよ」と声がして主人公の主観になる(この間、ひっそりと静かになる)→主人公が我にかえった途端にぱああんと喧騒が戻ってくる。そんな、映画のスローモーション効果のような、語りの妙!

『おばあさん』

「幽霊とか呪われたとか、そういう因果の整然としたハナシであれば比較的ラクなんですが、そうではないハナシというものが怪談を集めていると入ってきまして・・・」という背景説明から入ります。このように、これから始まる怪談の傾向を最初に話してしまうのは大胆なようですが、本作では、これが怪談への期待度をグンと高めて、とても効いている。実際、この『おばあさん』というハナシ、いったいなんだったのか最後までブキミなモヤモヤが残るのでめちゃくちゃ怖い!怪談の語り手自体が正体不明という珍しいパターン。

『せんせえ』

めちゃくちゃ私が好みなこの怪談についても語らせてください!こちらは、今度は「(怪談を教えてくれた)体験者自身がどこかでウソをついている?」という疑惑を感じさせるという、ミステリアスな怪談。でも、いちばん素敵なのは、深夜テレビでアイドルが歌を歌っているシーンを再現するときの、マイクを持つ手真似をしながらの吉田会長の「ふんふんふんふーん」という情景描写そのものなのです。か、、、かわいい。

『演説』

この怪談における上間さんの名人芸は何度でも聞きたい!会社の朝礼での、クソイヤミな上司の演説の描写があるのですが、この上司が狂った時の描写がヤバすぎる。上間さん自身に何か人外のモノがとり憑いたのではないか、と思えるほど、狂気にとりつかれた人物の演技が迫真で、もうたまらない。それがこの名作、「演説」なのでした。

※次回はまた視点を変えます。今度は「ゲストで呼ばれた怪談師さんの自己紹介が既に怖かった」放送回5選をピックアップして紹介致します!私の中でいまだにトラウマ回となっている、「怪談師さんが収録にたどり着く直前に怪異が起こり急遽内容を変更した」あの事件回も紹介します!

さまざまな切り口からのベスト怪談集:「この人怖いな」と思った怪談師5選


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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