日本妖怪変化史

今宵は、妖怪学の古典、江馬務先生の『日本妖怪変化史』について、語らせてください。

まず、この本について、一点の注意を。

これは「日本妖怪史」ではありません。「日本妖怪・変化史」でもありません。

「日本妖怪変化史」です。

まだ妖怪というコトバ自体が今ほどに市民権を確立していない時代。「おばけ」「妖怪」「妖怪変化」「魑魅魍魎」「もののけ」等々の呼称が屹立していた大正十二年という時期に出された本です。

それゆえに本書は、「妖怪変化」「妖怪」「変化」それぞれのコトバの定義から始めていますが、大文字の主語は「妖怪変化」です。

そして日本の精神史に登場する「妖怪変化」なるものについて、

「それを実在するものと仮定して、人間との交渉がどうであったか」を分類整理していくという、帰納的博物学の発想で、

妖怪変化を「形態的分類」「生まれた原因分類」「出る場所での分類」「出る時間での分類」「容姿や言語での分類」「性別職業(!)での分類」「能力弱点での分類」とカテゴライズ整理していきます。

つまりこれ、現代でいう「妖怪のデータベース化」の発想なのです!

江馬先生の仕事は、柳田國男先生にとって乗り越えられた先駆的業績などという言われ方もしますが、事態はそう簡単ではない。

われわれの祖先が妖怪変化を語っている事例を集め、徹底的にそれを整理分類するのみ、現代の視点から余計なことを付け加えないというデータベース主義は、むしろデジタル時代の現代にこそ、わかりやすい「妖怪研究方法」ではないでしょうか!

そして、「妖怪変化を、実在しているものと仮定して、あたかも動物学や植物学のように、観察報告をロウデータとして相手の生態や習性を分類していく」という、「昔の人の観察報告原理主義」ともいえるスタンス、私としても大賛成なスタンスなのです!

妖怪変化が「いる」とか「いない」とかの議論は一切無視し、「いると思っていた人たちには何がどう見えていたか」だけを問題にする立場。なるほど賛同!

日本妖怪変化史改版 (中公文庫) [ 江馬務 ]

価格:990円
(2022/8/7 22:12時点)
感想(0件)

TOPへ戻る

『紀州おばけ話』という蔵書が既に希少本のようなので登場妖怪を一覧表化してみました

この本です!↓

たいへん面白い本だと思うのですが、気づいたらかなり希少本になっているらしい。

そこで!

妖怪好きな人の参考になるように、掲載されているオハナシのタイトルと登場妖怪名、わかるかぎりでの舞台の地名と出典書名を整理してみました!

まくらがえし」や「あずきとぎ」ら有名妖怪も多々含まれております。和歌山の妖怪に興味ある人、ぜひ、参考にしてみてください!

タイトル登場妖怪名出現地出典書籍名
一つたたら一つたたら那智勝浦那智勝浦町史
川姫川姫(変身する)富田川下流郷土第一集
一つ目の大入道一つ目の大入道日高紀伊日高民話伝説集
黒坊主黒坊主伝説の熊野
大きな手手の異常に大きい老婆鹿ケ瀬峠ふるさと探訪
人獣異様な姿の怪物直川村紀州の民話と奇談
竜神山の天狗天狗下秋津伝説の熊野
天狗と久八天狗ふるさとの伝説
カンザシをさした河童河童中辺路熊野中辺路伝説
一厘銭になった河童河童岩田熊野中辺路伝説
彦左と河童河童瀬戸南方翁集田辺近傍民話の例
琴の滝の牛鬼牛鬼上戸川ふるさとの伝説
牛鬼と又之助牛鬼三尾川谷伝説の熊野
山爺と仙八山爺関ノ平続南方随筆
三郎兵衛と山姥山姥下田原南紀土俗資料
刑部左衛門と鬼那智の山南方翁集田辺近傍民話の例
鬼とおこない那智の山南紀の俚話
鬼の足初島町誌
肉吸い鬼肉吸い鬼熊野山中南方随筆・紀州俗伝
投げずきん狐投げずきん狐和歌山市高松※高松寺近隣での口伝
狐と山伏田辺南方随筆・紀州俗伝
狐と薬南部町伝説の熊野
一つ目狸一つ目狸東富田伝説の熊野
化け猿退治化け猿安堵峰日本伝説集
化け猫化け猫田原伝説の熊野
化け蛇化け蛇桃山町※桃山町の語り部口伝
化け穴熊化け穴熊富田南方随筆・紀州俗伝
甚内とアメノウオ化けアメノウオ熊野川町紀伊小口郷植物誌
鯉の精鯉の精船戸紀州民俗誌
大蜘蛛大蜘蛛矢倉脇紀見村郷土誌
蜘蛛血石大蜘蛛高畑山紀州民俗誌
こんにゃく坊こんにゃく坊中辺路町※口伝
枕返しまくらがえし竜神村紀伊日高民話伝説集
椿の槌ツクモガミ??※不詳※口伝
柚の擂粉木ツクモガミ??※不詳南方随筆・紀州俗伝
生き面生き面貴志川諸村紀州民俗誌
とっつきぼうしとっつきぼうし※不詳中南拾遺
飴買い幽霊赤ん坊を育てる母幽霊和歌山市紀州伝説
火の玉火の玉和歌浦和歌山市郷土教育研究資料
船幽霊ふなゆうれい田辺伝説の熊野
幽霊船幽霊船四双島白浜温泉史
鶴瓶落としつるべおとし海南市紀州民話 何でも話そう
天蓋藪ツクモガミ??丸栖貴志の谷昔話集
藪お化けしょうたいふめい竜神村紀伊日高民話伝説集
ナカドボウとハバキヌギナカドボウ・ハバキヌギ高野山近く中南拾遺
茶ん袋ツクモガミ??印南町紀伊日高民話伝説集
足ナカ足ナカ本宮町南方熊楠翁集 紀州俗伝資料断片集
夜泣き石夜泣き石小倉紀州民話の旅
じしゃく石じしゃく石本宮町南紀熊野の説話
鬼面墓※奇妙な墓石小倉紀州民俗誌
椿の花※奇妙な椿の樹和歌山市紀州民話 何でも話そう
牡丹の花※奇妙な牡丹の樹和歌山市紀州の民話と奇談
畳たたき畳たたき和歌山市紀伊続風土記
小豆とぎあずきとぎ天野伊都の伝説
児泣きこなきじじい南部町埴田区誌
狸ばやしたぬきばやし南部町埴田区誌
天狗倒し天狗※不詳口伝

補足として:
「まくらがえし」は、ゲゲゲの鬼太郎に出てくるようなカワイイ妖怪を想像していると、ずいぶん違う、犠牲者数の多い不穏な話。「つるべおとし」も水木しげる先生が書いた「巨大な顔面」の奴とは異質です。また、こなきじじいと思われるものは私の知っている限りでは徳島県のほうが有名ですが、こちらのバージョンもほぼ同じ能力と性格の妖怪として伝わっているというのが、面白かった!

【中古】 紀州おばけ話 / 和田 寛 / 名著出版 [単行本]【メール便送料無料】【あす楽対応】

価格:30,414円
(2022/8/7 18:23時点)
感想(0件)


TOPへ戻る

夜市

怪談」とか「妖怪」とかいうものをコトバで表現したい、となったとき。

狂おしいほどにマネしたくなる文章、というものがあります。恒川光太郎さんの『夜市』の文章です。

夜市 (角川ホラー文庫) [ 恒川 光太郎 ]

価格:572円
(2022/8/6 19:42時点)
感想(62件)

ホラー小説というジャンルの作品で、これほどに、使われているコトバの選び方という点で惚れ込んでしまった本は他にありません。

この作品の文体や情景描写について語り始めるともはや止まらなくなるのですが、

ここでは一点、まさに異形のモノたちと人間とが交錯する場となる「夜市」の描写について語らせてください。

店の前に、あるいは店と店との間には青白い炎を灯した燭台が並んでいる。着物を着た狸がのんびりと歩いていた。目をうつせば、鬼火とも人魂ともいえる炎が木々の間をふわふわと浮かびながら通り過ぎていく。(※『夜市』(恒川光太郎/角川ホラー文庫)より)

これが「夜市」に関する描写の最初のほうに出てくる文章です。お気づきでしょうか?燭台の話と、鬼火人魂の話の間に、「着物を着た狸」の一文が、まさに通り抜けていくんです。どう考えても妖怪変化の仲間と思われる狸です。めちゃくちゃ気になる狸です。

ところが、このいちばん読者が「ギョッとする」モノについての描写が、いちばんそっけない。説明ぬきで、これだけ。「なんとなく、わかるでしょ?」とばかりに、済んでしまうのです。

概して。

『夜市』の文章を読んでマネしたくなるのは、この「異形のモノ」をこそ「当たり前のようにそっけなく触れるのみ、説明しない」点と思っていまして。

この着物を着たタヌキについては、本当に出てくるのはこの箇所だけ、なんの説明もないわけですし、

もっと大事な点としては、このタヌキを見て絶対に驚いている筈のヒロインの反応や心情も、いっさい、描写説明されていないんです!

普通だったら、「彼女がギョッとしているうちに、その狸は歩み去ってしまった」とか、書きたくなってしまうところと思うのですが!

こういう点は他にも随所で仕掛けられていて、

コートにハンチングをかぶった老紳士が商品を見ていた。客は彼しかいない。店主の口上をきいているようだった。裕司といずみともやりとりをきこうと近寄った。刀剣屋は一つ目ゴリラだった。(※『夜市』(恒川光太郎/角川ホラー文庫)より)

のところの「一つ目ゴリラ」についても説明がなんにもないわけですし、

そもそも、あの印象的な、物語全体の語り出しで登場する「学校蝙蝠」についても、けっきょくはなんだったのか、明確な説明がされないまま、物語は進んでいくわけです。

これほどの「反-説明主義」を貫いている作品なのに、なぜこんなにも「わかりやすい」のかが、魔法のようなハナシであり不思議で仕方ないのですが、

怪談」とか「妖怪」とかいうものをコトバで表現したいとなったときに、狂おしいほどマネしたくなる文体の筆頭として、

恒川光太郎さんの『夜市』を、今後ともとかく仰いで研究していきたい、と思うのでした!

夜市 (角川ホラー文庫) [ 恒川 光太郎 ]

価格:572円
(2022/8/6 19:42時点)
感想(62件)


TOPへ戻る

百物語

「ホラー漫画」というものならば数多くあれど、「怪談漫画」となると、かなり限られてくるのではないでしょうか。

まして、「古典怪談」の雰囲気をベースにしているフィクション漫画などとなると、よほどレアな高み。

杉浦日向子さんの『百物語』は、その「よほどレア」な作品のひとつ。いやもう、感服するしかない作品世界。

おそらく前知識のない方がこの漫画をいきなり読んだら、

てっきり、江戸時代に書かれた何らかの原作怪談集があって、それを現代の作家さんが漫画に脚色したのだ、と思うのではないでしょうか?

ところが、これは間違いなく、杉浦日向子さんによるオリジナル漫画短編集なのです。

にも関わらず、なぜこんなにも、

いかにも江戸時代の人々が書いたかのような物語が紡げるのか?!

現代に生きていながら、心は完璧に江戸時代人になってしまっていた、杉浦日向子さんにしかなし得ない芸当なのでした。

ホラー漫画とか怪談漫画とかいっている場合ではない、芸術作品と言えるのかもしれません。

百物語 (新潮文庫) [ 杉浦日向子 ]

価格:1,045円
(2022/8/5 23:49時点)
感想(20件)

台湾妖怪特集(怪と幽Vol.003)を今こそ読み直す

台湾の怪談・妖怪事情が面白い。最近、台湾発のホラー映画が我々を楽しませてくれていることもあり、ますます目が離せません。

・・・と思っていたらどんどん台湾をめぐる周辺情勢が緊張してきているではないですか。

ゴーゴリのディカーニカ近郷夜話の土地ウクライナはこんなことになっているし。どれだけ妖怪の宝庫を地球から奪おうとしているのだ国際社会。これ以上ひどいことにはならないようにという祈念も込めつつ、

【怪と幽Vol.003】妖怪天国台湾特集を読む。

何を隠そう、私自身が「台湾のサブカルチャーにも妖怪ブーム」があることを、この本のおかげで初めて知った身。そういう人は多かったのではないでしょうか?

そして何をおいても、台湾の妖怪文化、日本人たる私にも、わかりやすいのです。

山をつかさどる「モシナ」なんて、日本の山の妖怪と相性がめちゃくちゃ良さそうだし、

台湾の「赤い服の少女」なんて、花子さんや口裂け女といつでもタッグを組めそうじゃないですか。タッグを組まれたらめちゃくちゃ怖いけど。

https://youtu.be/8q5vILTnCnk
参考動画

これほどに台湾妖怪と日本妖怪に相通じそうなところがあるのは、もともとの相互の伝統に似ているところがあるおかげなのか、それともただ単に日本漫画の影響が台湾に入っていったための、サブカルチャー上の共鳴に過ぎないのか。そこは何とも安易に言えない。

けれども、とにかく、

このような妖怪文化が根づいている地は、なんであれ日本の妖怪ファンにとっては「行ってみたい土地」「仲良くしたい土地」であり、台湾が「国際政治の過酷な現実」なる真のモンスター(妖怪ではなく!)に飲み込まれることがないよう、切に祈念するのでした。

世の中が騒がしすぎて、妖怪ファンの心配の種はどうにもつきない。なんて時代だ、、、。

【怪と幽 Vol.003】妖怪天国台湾


前のページに戻る

怪談妖怪好きのデータ分析【Google Colaboratory +Python】妖怪美術館に関するTwitter傾向を出してみた

先日よりGoogle Colaboratoryを使い始めたところ、その威力について感動しっぱなしでおりまして。

さらに進んでTwitterAPIと連携してのテキスト分析を試してみました。

今の私の感想を言いましょう。Twitterとの相性についても、Googleコラボラトリの使い勝手は素晴らしいと思いました!

※なんだか先日からGoogleコラボラトリを絶賛しすぎてますね。たぶん、暫くしたらこの熱が冷めて、「こういう弱点がある」「こういうことには使えねー」とブーブー言い始めるかもしれませんが💦。まあ、今は熱いうちに、熱い文体のままで、Googleコラボラトリ紹介続けます。

さて。

お試しとしては、日本の妖怪観光地を取り上げて、そこに関する最近のTwitterでのつぶやきをワードクラウド化しようと思います。

私にとって、その動向が常に気になる観光スポット小豆島の「妖怪美術館を取り上げましょう!

Googleコラボラトリに新規のノートブックを立ち上げて、Twitterから発行してもらったアクセストークンを登録し、Oauthで認証を開きます。

あとはTwitterAPIで検索キーワードからの結果を取得し、テキストマイニングにかけます(※このあたりの手順はもっと整理したら詳しく公開したいと思います)。

で、小豆島の妖怪美術館の場合。

いちおう、出ました!微妙なアルファベット(WとかRTとか!)をうまく除外しないといけないですが、それは今後の課題。

続いて三次もののけミュージアムでやった場合。

さらに、鳥取県境港市でやった場合。

「河童の三平」らしいものが微妙に全体を引っ張っているのは何なのでしょうね、フムム?

今回は、お試しでテキストマイニングを回してみただけの段階なので、まずはこの辺りで。

今後、もっと、深めていきます!


▼参考文献▼最終章にGoogle Colaboratoryでのpythonデータ分析の準備手順が載っています

実践Data Scienceシリーズ Pythonではじめるテキストアナリティクス入門 (KS情報科学専門書) [ 榊 剛史 ]

価格:2,860円
(2022/8/2 22:28時点)
感想(0件)


前のページに戻る

海外心霊動画を考察する:何かを訴えかけてくる心霊動画はどこか実話怪談に似ている

昨日の海外心霊動画についての考察から、以下、内容を引き継いで。

これは海外に限ったことではありませんが、「怪異現象をカメラにとらえた!」という映像を見て回っていても、露骨なほどのフェイク映像だらけで戸惑ってしまう。まぁ、私は怪談好きというスタンスなので、「霊や妖怪が実在するか、しないか」論争に拘泥するつもりはないのですが、

そうはいっても、あからさまなフェイク映像をアップしておいて「どうだ!ついに霊の証拠をとらえたぞ!」と自信満々にしている投稿にはさすがにイラッとするぞw。

オトナをなめるな!!

しかしながら、どんなジャンルでも、丁寧なリサーチというものを仕掛けてみるものだ

丹念に探していると、興味をそそられる映像に出くわすことがあります。

少し、例をあげますと、

たとえば、以下。

↑これ面白いんですよ。投稿者は、この映像以外は、ずっと家族の動画や絵画の動画をアップし続けている人。この人が「たった一回だけ」アップした心霊ぽい動画。

そもそもはオンライン絵画教室の自撮りをやっていた映像だったそうですが、その最中に、背後で棚の扉が動きます。たったそれだけ。それだけなのですが、この投降者がいかにもフェイク映像の仕掛け人とは縁がなさそうに見えることと、絵画教室の内容自体が本当のセミナー向けに用意されているもの(つまりフェイク用の演技で絵画教師のフリをしているわけではない)に見えることで、とても興味深い。

もうひとつは、こちら。

イギリスのリンカン大聖堂で撮ったというもの。

動画の0:03から、柱の影から白い顔の女がそっとこちらを覗いているような・・・で、撮影者が近づいていくと、0:25にてひょいと顔を引っ込める。

見間違えじゃないの?という、微妙さがたまらない。

ちなみにこの投降者も、普段は旅行動画やスポーツ動画など、心霊などとは無縁な動画をアップしている人です。

こういうものを見ていると、「微妙な勘違い?・・・かもしれないけど、みんなどう思う?」と、普段心霊に興味がない人が不意にアップしてくる動画がいちばん面白いし、

これって、実話怪談に似ていると思います。

誰もが、心霊動画を「撮ってしまう」可能性には満ちているのではないでしょうか。

そしてそういう心霊動画は、実話怪談と同じように、「なんだったのかは、いまいち、よくわからない」という曖昧さを残していくもののようで。

前のページに戻る

海外心霊動画を考察する:妖怪が生まれる瞬間をとらえた映像、そして今すぐ子供を抱きしめよう

子供部屋に設置された、おそらくは監視カメラの映像と思われる、こちらの心霊動画をYouTubeで見つけたのですが、なんとまぁこれは、私にとって実に興味深い!

昼寝から目を覚ました三つ子が、壁のほうを指さして恐怖にかられ、家具の後ろに隠れている様子が映っております。

その怖がり方が、なんとも、中途半端なものではない。

さらに映像の後半では、数日後、三つ子のうちの一人がやおらベッドから起き上がり、「壁にモンスターがいる」と別室の母親を起こしにいく様子も写っております。

これに対して、YouTubeのコメント欄に、とても興味深い指摘が載っておりました。

「小さい子のうちの一人が何かを見間違えた時、それが残りの子供にも伝播して、見間違えにも関わらず、同じ部屋にいた他の子供も「同じものを見てしまう」というのは、集団児童心理的には、ありえること」

との旨。

ハイ。大賛成です。私もこの映像はそう考察しています。

物理学的にはその部屋には、やはり、何もいなかったのだとは、思います。

何もいなかったのに、三人の女の子の心理が共鳴し、「同じモノが、見えてしまった」ということかと思います。

物理学的にそこにいない」からといって、「オバケなんていない」と安易には言えない理由も、ここにある。

いかに科学的な機器を持ち込んで、この日、この部屋には、何もいなかったことを科学的に立証しても、この三人の少女の中では「この部屋にモンスターがいて、わたしたちはそれをみんな見たのだ」という物語が残り続けるでしょう。

そしてこういうものに対して「そんなのは見間違いよ、バカバカしいわね、さあもう寝なさい」とピシャリとやってしまうのは、きっといい結果を生まないと思います。

おそらくは・・・

こういうことが昔の世界各地の民俗でも起きて、怪物やら妖怪やらは生まれて継承されてきたのではないか。だとするとこの動画は、妖怪が生まれるその瞬間をとらえた、とても貴重な映像なのかもしれません。

科学的にどう扱おうと、怪物や妖怪は、それを見た人のココロの中で物語として生き続ける。それをどうすればいいのか。物語を物語として人に話し、何らかの意味づけをしていくしかありません。

そしてもちろん、それがいわゆるトラウマ的な傷の物語になってしまわず、いつか大人になるにつれて超克されていく、成長の一通過点として位置づけられる、そんな、怖くとも意味の深い怪物物語になることを望みます。

そしてこの動画については、シンプルに、こう言っておきたい。

この三人の子のお母さん、「怪物を見た」という三人の子の話をよく聞いてあげて、しっかりと抱きしめてあげて、どうか、安心させてあげてくださいませ!

この子たちめちゃくちゃかわいいので、こんなに怖がっているのはかわいそうなのです。お母さまには是非、適切なケアをお願いします!

TOPへ戻る

BBゴローさんの「恐の出来事」における地方回りの話が為になること

BBゴローさんのことを、「稲川淳二さんの物真似が上手な芸人さん」とだけで認識している方は人生を損しております。

ゴローさんがガチで怪談師さんとして語る怪談のクオリティ、この破壊力が凄まじい!

もっとも、私自身だって、当初はゴローさんを物真似芸人さんとして「だけ」見ていました(※物真似芸人としてのゴローさんの顔も、それ単体でも最高の面白さですがw)。それを変えたのは、ネット番組、『永野が震える夜』にゴローさんが登場した時。

この回で、ホストの永野さんに「ゴローさんご自身も体験談があるそうで」と振られてから、ゴローさんが展開した怪談集が凄かった

特に「見たくないもの、見たくない?」のハナシは耳についてしまって離れない・・・!

さて、そんなゴローさんが、竹書房さんより『恐の出来事』という文庫を出しております。めちゃくちゃ面白いです。ゴローさんの体験談はガチで不穏・危険性を感じるものが多く、刺激は強めの怪談集です。

しかし、今日語りたいのは、

【怪談好きは地方へ行け!】という、偉そうと怒られることは覚悟の上でのスローガンを掲げている私にとって実に助けとなってくれるようなゴローさんのコトバを、この「恐の出来事」内に見つけたことです。

それはすなわち:

「そういう場所が地方には案外多い。僕ら芸人はあちこち回るのでよく遭遇することがあるってことなんです」

『BBゴローの恐の出来事』(竹書房文庫/BBゴロー著作)より引用

これは地方のキャバレーに営業に行ったときに怪異に出会い、あとでそのキャバレーの建物が「いわくつき」であったという文脈で出てくるもの。

ということは、芸人でなくとも、地方を回ってキャバレーや居酒屋やバーをハシゴすれば怪異に出会える確率が高まるという仮説が成り立つのでは?

ヨシ!怪談好きこそ、地方を巡りましょう!そして飲食店にお金を落としていきましょう!

・・・ってこれはさすがに我田引水にすぎるでしょうか?ありゃ。

こちらの『BBゴローの恐の出来事』では、私としては、

・盛り塩をしたらむしろ怪異が過激化してしまう(!)ハナシ

・ティッシュをくれるハナシ

・ピーターのハナシ(チャンス大城さんから聞いたハナシとのことですがこれ面白い・・!)

の三本が、とりわけ印象に残りました。刺激強め怪談好きの方はBBゴローさんに注目をば是非に!

【中古】 BBゴローの恐の出来事 / BBゴロー / 竹書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】

価格:328円
(2022/7/18 12:15時点)
感想(0件)


前のページに戻る

「怪談グランプリ2017」に関する私のnote記事にサポート金をいただけました恐縮至極なこと:たしかに私の怪談好きとしての初心はこの記事でした

驚きましたし、恐縮至極なことですが、

私が昔、noteに書いた過去記事に、あるフォロワーの方から応援メッセージと共にサポート金(noteでいう投げ銭)をドンといただけました。

嬉しいことですが、「嬉しい」と舞い上がっていて終わってはいけないw

これからもネットでの発信をまじめにコツコツ続けていくつもりならば、こういうとき、どんな記事が評価されたのかをしっかり自己省察しておかないと。

まこと、SNSをやっているならば、365日が勉強

さて。

サポートいただけた過去記事は、山口敏太郎さんが書籍として出していた『怪談グランプリ 2017 未公開! タブー怪談』に関する記事でした。

怪談グランプリ 2017 未公開! タブー怪談【電子書籍】[ 山口敏太郎 ]

価格:704円
(2022/7/17 09:29時点)
感想(0件)

この本に怪談を寄せているのは、ぁみさん、渡辺裕薫さん、三木大雲さん、松原タニシさん、星野しづくさん、あーりんさん、雲谷斎さん、小原猛さん、渋谷泰志さん、島田秀平、竹内義和さんという錚々たる顔ぶれ

しかし私がnote記事で取り上げ、大絶賛したのは、この本の「まえがき」に書かれていた、山口敏太郎さんによる以下の文章なのです。いやこれが私としては大賛同のコトバ!

↓ ↓ ↓

怪談には人の死を悲しみ、死者の無念を供養する役割がある。そして怪談を聞く者は人間の命の尊厳を知り、自らが生きていることに感謝するようになる。つまり、怪談を語ること、怪談を聞くことは命の大切さに気付かせてくれるのだ。怪談は素晴らしいものなのだ。

『怪談グランプリ 2017 未公開! タブー怪談』(TOブックス/山口敏太郎他)より引用

そうかぁ・・・思えばそもそもの私は、山口敏太郎さんのこの文章を読んで、「自分としても怪談を盛り上げよう!」と志を持ち、積極的に怪談イベントに出たり、SNSやブログで怪談の情報を取り上げるようになったのでしたっけ。

つまり、山口敏太郎さんのこの文章は、私の初心であります。

そして、このまま額に入れて家に飾っておきたいほど、

今でも、私の考え方は、ここに引用した山口敏太郎さんのこの文章にまったく同意、初心に変更はありません!それだけ山口さんのこの文章の背景にしっかりとした思想がある、ということではありますが。

初心を思い出させてくれたフォロワーさんに感謝しつつ、私としてもあらためて、上述の山口さんの文章を読み直し、味わい直し、自身の初心に立ち返る機会としたのでした。

そう、怪談は素晴らしいものなのです!


怪談グランプリ 2017 未公開! タブー怪談【電子書籍】[ 山口敏太郎 ]

価格:704円
(2022/7/17 09:29時点)
感想(0件)

前のページに戻る