『放送禁止7:ワケアリ人情食堂』は旧来からのこのシリーズのファンには賛否両論かも【フェイクドキュメンタリー幻視行】

person holding pastry dishes on white ceramic plates

ひさびさに、フェイクドキュメンタリーのレビューやります!今回は、長江俊和監督の『放送禁止
シリーズの第七弾、『ワケアリ人情食堂』についてです。

ところで、『放送禁止』シリーズの過去作はみんなDVDになっているものと思っていたら、この『ワケアリ人情食堂』はまだ(2024年3月現在)ソフト化されていないみたいですね?!

ただし理由はわからなくもない。

この第七弾『ワケアリ人情食堂』は、過去のシリーズからすると、いささか異色なんです。雰囲気的に別のシリーズではないか、と思ってしまったくらい。

それは構成の面でも顕著で、本作では、なんとなんと、くりいむしちゅーの有田哲平さんが、『世にも奇妙な物語』におけるタモリさんの如く、オープニングとエンディングに登場して、いろいろと解説をしてくれるんです。こんな親切設計は過去作にはなかったぞ?

だが、この有田哲平さん登場は、過去シリーズファンからすると賛否両論のようですね。「雰囲気が壊れる」「余計なことばかり言う」うんぬん。

は?私の意見ですか?

うーん、、、私も、正直「いらないのでは?」とは思いましたね。ただし、私の個人的な予想ですが、『放送禁止』シリーズの企画側としてはそろそろマンネリ化によるシリーズ存続の危機を感じていて、新規のファンを取り込もうと、「親切で親しみやすい設計」に路線を変えたんじゃないでしょうか?

私個人は、この『放送禁止』シリーズみたいな作品は、「知る人ぞ知る隠れた名作シリーズ」として、深夜枠で引き続きひっそりとやっていてほしいと思うのですが、なんだかんだついに劇場版まで拡大したことも受けて、「よりメジャー化」を狙ったのかもしれない。

そして、そんな「新規ファンを増やしたい」?な雰囲気は、私は本編にも感じていて、

この『ワケアリ人情食堂』は、地元で愛されている食堂の、お客さん達の人生相談に乗ってあげることで有名な「食堂の名物おばちゃん」を取材したドキュメンタリー、、、を装ったフェイクドラマなんですが、

過去の作品に加えて、私の感想として、

ホラー度が少し足りないかなあ、、、?あるいは「黒さ」というか。

それでいうと『放送禁止』シリーズでは、私が過去にレビューした作品としては、

やはり第二弾大家族編の「暗黒のオチ」とか、

第三弾「ストーカー地獄」の、「え?誰が誰で、誰と誰が味方で誰と誰が敵だったの?」とパニックになる、あのラストの数秒のショットとかが輝いていたなあ、、、

『ワケアリ人情食堂』は、ホラーやサスペンスというよりも、「叙述ミステリー」という方向性になっちゃっていた気はした。まあこれも、ホラーテイストが強い方が嬉しい私と合っていなかっただけで、この路線で「新規ファン」を開拓しようという野心の現れだったのかもしれない。

では最後に、ネタバレにならない程度に、この『ワケアリ人情食堂』のトリックのヒントだけ、軽く触れておきますと、

パターンとしてはこれ、

物語の映像が始まってから、最後まで、ずーーーーーーっと食堂の中にあった「あるもの」が、最後のどんでん返しに生きてくる、という回になっています。ずーーーーーーっとカメラには写っていた、アレです。アレが、いつのまにか、別のモノにすり替わっているんです。ただし間違い探しのような実に微妙な「すり替わり」なので、最後に有田さんが「違和感を感じませんでした?では、このシーンをよーく見てください?」とやるまでは、なるほど、私も気づかんかったw

繰り返すように、ホラーテイストを求める私には少し方針が違ったが、

本格ミステリとかが好きで、ラストの種明かしで「あ!あのシーン!確かに!何で気づかなかったんだろ!やられたーw」と叫ぶ感覚が好きな人、すなわち、「気持ちよく騙されるのが好きな人」には、この第七弾は気にいるかもしれません。「あれ?いつすり替わったんだ?」って、気になる人は、もう一回最初から見ちゃうでしょうしねw。

ただ、そういう「細かい映像の仕掛け」をスローモーションで再確認したい人の為にも、本作のDVD化は強く望むところでありんす。

本日の怪談ホラーなコネタ(2023.11.08)

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コツコツと書き続けている『ほんとう映った監死カメラ』のレビュー、今回は『5』についての記事を公開しました。この巻は、言ってみれば、演出補である前田沙織さんの大活躍回にして、前田沙織さん受難の回でもあります。

↓↓↓


ほんとうに映った!監死カメラ5

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『ほんとうに映った!監死カメラ5』は演出補の前田沙織さん大ピンチの回!【フェイクドキュメンタリー幻視行】

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フェイクドキュメンタリー幻視行、今回は、『ほんとうに映った!監死カメラ5』を取り上げます。


ほんとうに映った!監死カメラ5

このシリーズ、よくある心霊動画シリーズと思いきや、回を重ねるごとに制作スタッフの皆さんが顔出し&名前出しで登場し、心霊動画が撮られた現場を探検しにいくというドキュメンタリー風になっていくのです。

で、この第五巻の頃の突撃スタッフにおいて中心を張っていたのが、演出補の前田沙織さん。

この第五巻においては、その前田さんがほとんどでずっぱりと言ってもいいほど大活躍します、、、というか、オチとしては身の危険すらあったデンジャラス取材に投入されてしまっています。

すなわち、前田演出補の主役回ですね、こちら第五巻は。

それにしても、この第五巻はひとつ特徴がありまして、

心霊映像(と主張するもの)が投稿されてくるが、その背景を知ろうと取材に行くと、

投稿者自身がアブない人だった!

というパターンが複数だったこと。いや、申し訳ないけど、こういうパターンは心霊動画そのものよりも後味としては怖いですね。

本作において、

「公園で心霊動画が撮れた」と主張する投稿者のお兄ちゃんは、前田さんがインタビューしている最中に「せっかくだから俺の心霊動画の現場に、これから一緒に行こ?これから一緒に行こうよ?、、、なんだよ案内してやるっつってんだから一緒に行こうよ何が心配なんだよ!」と突然凶暴化し、

「いつも誰かに見られている」と主張する女の子は、前田さんのインタビューを受けて親しげに打ち解けてきたか、、、と思いきや、突然不条理な理由でガチギレしてゴキジェット火炎放射で襲いかかってくるし、、、

もうね、なんなんですかね、この幽霊そっちのけの、「心霊動画投稿者」たちの怖さw

まあ正直、これらも俳優さんを使った演出かもしれないわけですが、もしかしたら一部はほんとに変な投稿者に取材しちゃった時の映像なのか、過去の心霊取材でこういう目にあったことの再現なのか、、、まあいずれにせよ心霊動画の制作なんかをやっていたらこーいうエキセントリックすぎる投稿者に出会って酷い目に合うことってあるのかもしれないし、そう考えると心霊ビデオ制作業界もほんとに大変だな、、、前田さん受難。

あと男性スタッフよ、あの状況で前田演出補を一人現場に残してどこか行くなよw。「あ、ぼく、ちょっとジュース買ってきますね?」って、そんな場合じゃなかろうw

というわけで、、、

本第五巻は、「投稿された心霊動画よりも、投稿してきた人がなんか怖い人だった」ストーリーが多めですが、

個々の心霊動画にも演出的にビビっときたものがありました。

三つほど、紹介しましょうか。

1:ビル屋上のカメラに突然顔が映るやつ

これ、私は第五巻の中でいちばん面白かった。これ、完全にフェイクってわけでもない映像だったらいいな、、、だって、考察のしがいがあるんだもの。

つまりこれ、「ありえない角度から突然人間がカメラを覗いてきた」っていうのが、確かにゾゾゾっとするんだけど、

「いや、でも、メンテナンス担当の人が命綱をつけて修理に来た時、うっかりカメラを変な角度から覗き込んじゃった、、、って可能性もあるのでは?」とかとか考察できるんですよね?無表情でぬぺっとした顔なのも単純に足場の悪いところで仕事中で緊張してたからかもしれんし。顔が出現する前後にカメラが揺れているのも作業してた影響かもしれんし。

ともかく、「不気味だけど、ムム、前後の状況をよくみると、何か合理的な理由(つまり幽霊ではなく人だった)が見つけられそうだぞ?」という微妙なスタンスの映像、私のような考察好きには面白かった。

2:道路に顔が浮かんでるやつ

これも、「フェイクっぽさバリバリで上等!」な映像もどんどん流す『監死カメラ』シリーズの中では珍しくw、「幽霊のように見えるが、単に光の加減で顔のように見えているだけ、、、ともとれる」微妙なマジメなw心霊動画です。

私は、やはり、これは光と影の加減で顔っぽく見えてるだけのものと考えました、、、でも、こういうのに限って、「まんいち顔だとしたら、、、すげえ形相だな…」という顔なので怖いですねえ

3:エクトプラズム

いや、これは嘘でしょw?!

嘘とは言わずとも、口に煙を含んでいたのを吐き出しただけじゃないかなー?

と思わされる、秋葉原の、メイドカフェと思われる店の中の映像。

それにしても、『監死カメラ』制作チームの事務所ってもしかして秋葉原にあるんですかね?秋葉原の映像がなんか多めに感じるのでふと、そんな推測を。

まとめとしては

↑かような感じで、「お天気カメラ」と「13」が、マジメな心霊動画でけっこうゾクっとした。

でも、言っちゃなんですが、やはり、本当に怖かったのは、

ゴキジェットやら何やらで突然襲いかかってくる、エキセントリックな「投稿者の皆さん」のほうなのでした。やだねえ。


ほんとうに映った!監死カメラ5

『ほんとうに映った!監死カメラ4』は気味悪さが絶好調ノリノリだが、、、こういうドギツイ路線が嫌いな人は嫌いかも【フェイクドキュメンタリー幻視行】

electric heater in a room

今回は、『ほんとうに映った!監死カメラ4』を取り上げます。前にも申し上げた通り、このシリーズ、最初は「投稿された心霊動画を紹介していく」というよくあるビデオシリーズだったのですが、回を重ねるごとに、制作スタッフの皆さんが顔出し&名前出しで登場し、心霊動画が撮られた現場を探検しにいく(で、たいてい、幽霊とはまた別の意味のトラブルに巻き込まれて酷い目にあう)というドキュメンタリー風になっていくのです。


ほんとうに映った!監死カメラ4

まあ、作品自体は「フェイクドキュメンタリー」と銘打ってはいないのですが、私自身は広義のフェイクドキュメンタリーと思っています。「いや、さすがにこれは嘘でしょ!w」と突っ込んでほしがっているような、フェイクを隠さないユーモア狙い(と私には思われる)心霊動画も出てきますからね。

で、この第四巻について。

フェイクドキュメンタリー化が絶好調の回となります。いいですねーその調子ですよーwフェイクドキュメンタリー風味好きな私としては、ますます、この路線が深まっていくのは実に嬉しい。

とはいえ、、、この第四作、監視カメラの前でとつぜん首吊り自殺をする人の映像、とか、けっこうギョッとするショッキング映像をぶつけてきます。他にも主観カメラで部屋を見回してると突然老婆の顔がバーンとアップで出てきたり、驚かしてくるシーンもある。

オドカシ系、後味の気持ち悪い系が、かなり強いので、刺激の強いホラー映像好きは喜ぶかもですが、「いくらなんでもこれはちょっと、、、気持ち悪」と嫌う人といる回かもしれない。私もまあ、自殺者のシーンはちょっとね、、、

ともかく、私が印象的だったシーンを三つ紹介しましょうか。

1:首吊り死体の監視カメラ映像

これは評価が分かれるでしょうねー、、、アパートの中を写している監視カメラの前で、突然、人が首吊りする、という奴。だが問題はそこではなく、

この監視カメラ(厳密には、何者かが仕掛けた盗撮カメラ?)がライブ配信を続けていて、ずーっと首吊り死体が写っているので、心配になったスタッフ達がカメラの発信地を追跡し、肝心のアパートに突入する、という流れです。

ライブ映像の筈なのに、実際にその監視カメラの場所に駆けつけてみたら、現場では何も起きていなかった、、、ってパターンは、ちょっとミステリー的な面白さもありましたね。

これは心霊現象なのか、、、という話をしつつも、

「そもそも、なんで、アパートの部屋に監視カメラがあるの?誰かが悪意を持って仕掛けた盗撮カメラじゃないの?そしてそもそもこの映像は何かトリックなんじゃないの?そーいや、不動産屋の挙動がなんかおかしくなかった?」と、

よもやこれは、心霊現象ではなく、何かヒトコワの可能性、、、もしかすると犯罪の隠蔽工作の痕を見つけてしまったってことでは!?という解釈の余地を残すのは、うまい構成と思いました。


ほんとうに映った!監死カメラ4

2:押入れの中を主観カメラで探索するやつ

なぜか、家から細かい物が盗まれていく、、、という怪現象に悩まされている人物の家にお邪魔した制作スタッフたちが、

「どうも、この押入れの中が怪しいぞ?」って、カメラを主観で回しながら、押入れの中の隙間に照明を当てて、押入れ内を捜索します、、、って、ぜったいコレ、バーンとドアップで何かが映ってビックリさせる系だよね!?と思ってましたよ、とうぜんそう思いましたよ、思っていたけど椅子から飛びあがっちまいましたよw。微妙にタイミングずらして不意打ちしてくるので、、、やられましたわ。


ほんとうに映った!監死カメラ4

3:透明人間と戦うやつ

いや、これですよ!「さすがにそれは嘘でしょーー?!」と思わず叫んでしまうトンデモ設定!なんと「人間の裸眼には写らない透明人間の姿を捉えることのできるカメラ」を韓国から入手した制作スタッフたち。さっそく、そのカメラを街角にセットしたら、、、

カメラに怪しげな影が映る!

でもその現場に駆けつけてみると、そこには誰もいない、、、

と思ったら「いてえ!誰かが襲ってきた!」と、男性スタッフの一人が悲鳴をあげ、見えない何かとの格闘が、、、

いや、いやいや、いやいやいや、これは別に「フェイクドキュメンタリー」と銘打ってる作品ではなかったですよね?失礼しました。この映像も、「本当か、フェイクか、判断するのはあなた次第!!」というお約束でしたね?ですからこの映像も、真偽は謎のまま、としておきましょう。

え?私?まあ↑このニュアンスの通り、「これはさすがに嘘でしょーー?!」と笑いながら叫んでしまいましたよ。もちろん、こーいう嘘くささも、『監死カメラ』シリーズの楽しみのひとつなので、私はこの透明人間のやつをめちゃくちゃ楽しみましたよ!気になる方はぜひ、ご自身の目で確認して、ご自身で「真か偽か」をぜひ判断してください!


ほんとうに映った!監死カメラ4

総括としては・・・

突然の自殺実行、ジャンプスケア、そして透明人間の出現と、、、刺激も強く、起こる事件も多彩になってきて、

第四弾にして、シリーズはどんどんノッてきている!

・・・とも解釈できますが、よくよく考えると、

悪ノリの感もある

と、捉えちゃう人もいるかもしれませんね。

このテイストが嫌いな人はいるかもしれない、というところはありますが、

まあ、この記事をここまで読んでくれた方は、たぶんこういうノリのホラーがお好きなものと推測しますwので、ぜひぜひ、お試しいただいてはいかがでしょう?!


ほんとうに映った!監死カメラ4

『ほんとうに映った!監死カメラ3』で突発的に起きてしまった「キンタさん事件」の恐怖【フェイクドキュメンタリー幻視行】

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このところコツコツと続けている『ほんとうに映った!監死カメラ』シリーズのレビュー。

今回は第三弾の『ほんとうに映った!監死カメラ3』について、私の感想を述べさせていただきます。ちなみにこの回にて、このシリーズのファンにとっては後々大事なキーワードとなる「キンタさん」事件がカメラに収められることになりますよー!


ほんとうに映った!監死カメラ3

まず、そもそも、おさらいとして・・・以前の記事でも何回か申し上げてきたように、

この『監死カメラ』というシリーズは、最初は、ありがちな「怖い動画を紹介していくビデオシリーズ」だったものが、

だんだん、前田さんとか金田さんとか寺内監督とか、スタッフ自身が名前と顔を出して登場し、

心霊動画が投稿された現地に取材に行って本当に怖い目にあったり、あるいは、投稿者の人にインタビューに行ったらその投稿者ご自身がエキセントリックなキャラで酷い目に遭わされたり、という、突撃ドキュメンタリー形式に進化していきます!

ただそのスタイルが確立するは、もう少しシリーズが進んでからのこと、、、と思いきや、

この第三作で、後年のスタイルのその片鱗は、既に確認することができます。アシスタントの金田(かねだ)さんが、顔出し・名前出しで登場しまして(※金田さんはこの後、本シリーズの顔ともいうべき、常連の「登場スタッフ」さんとなります)、

ファンの間で後年までしつこく語られることになる、通称、「キンタさん事件」を被弾するのです。

では、キンタさん事件とは何か?

これは、本筋とはあまり関係ない事件といえば、まあ、関係ないんですが、

地下アイドルのライブ映像に映り込んでいた制服姿の少女の影、という心霊映像について、

製作陣が、当の地下アイドルのインタビューに出かけた時に起こること。

この地下アイドルの心霊動画劇は、一種のミステリーのような展開になりまして、

最初にインタビューした時、この地下アイドルの女の子は、「私は霊感があるので、自分で理解している、あの幽霊は中学時代に仲が良かった同級生だ」と証言します。

ところが、制作スタッフが取材を続ければ続けるほど、

・その地下アイドルの子は中学校ではいじめられていて友達などいなかったこと

・「あれは〇〇ちゃんの霊だ」と名指しされた人は現在生きていること(勝手に死んだことにされてた)

・そもそも、中学時代に子役として芸能活動をしていたのはその〇〇ちゃんのほうであり、地下アイドルの子はその〇〇ちゃんに嫉妬してアイドルを始めた、というのが時系列的には正しいらしい

・ということは、「心霊動画が映っていました!」という取材が来た時に、「それは中学時代の〇〇さんの霊に違いない」とカメラの前で答えていたのは、意味不明な言動であり、というか、悪意が感じられない?

というわけで、制作スタッフは何度もこの地下アイドルの女の子にインタビューを繰り返し、新証拠を突きつけられるたびにこの地下アイドルの嘘が露呈し、

幽霊の正体暴きのつもりが、実に後味の悪い人間関係のドロドロが暴かれる上に、この地下アイドルの女の子のことを視聴者はどんどん信じられなくなっていく、という、ある意味で幽霊よりも怖い世界が露呈してくるのです!

いやー、怖いですねー、重いですねー、見ていて暗澹たる気持ちになりますねー、この地下アイドルの子はこの後大丈夫なのでしょうかねー

ていうかこの子については多分、心のケアを一度入れたほうがいいですねー、なんか過去に闇がありそうですね…「この間のは嘘をついたんじゃなくて、あれはアイドルとしての設定ってやつですよーニヘラニヘラ!」ってしてるけどなんかもうこの子の将来が一番「怖い」…

そして問題となるのは、この地下アイドルが、

「私、霊感があるんです。どなたか霊視しましょうか?」

と、最初のインタビューで言ってきた時。

まあ結局、この子に霊感があったのか、それとも、霊感があると言っていたのも「設定ですー」ってことだったのかは、最後までナゾのままとなりましたが、

このアイドルが大真面目に、スタッフの一人、金田(かねだ)さんの霊視を始めて、

「キンタさんって、〇年前にこういうことがありませんでしたか?」
「キンタさんの運の悪さは髪型を変えると改善すると思うんです」

と、ずーーっと、名前を間違えて「キンタさん」と呼び続けるんです。「このアイドルには霊視能力があるのか?本当なのか?まずは彼女が霊視をしている映像をみなさんも見てほしい!」っていう、心霊動画としてはかなり大事なシーンの筈なのに、ですよ!?wwwこの緊張感の中で、カメラも静かーに、地下アイドルの「霊視」なる行動を写し続けている中で、ずーっと「キンタさん」と繰り返されるの、だめだ、笑いを堪えられない!!😆

「、、、ていうか、霊視も何も、名前から間違ってんじゃん」とか、

いや、金田(かねだ)さんも、『あのう、名前間違ってるんですけど?カメラ止めて、もっかい最初からやり直しましょうか?』とか言えば良いのに!」とか、いろいろツッコミたくなるんですが、

私個人の考えでは、『監死カメラ』スタッフ、ぜったい、「キンタさんて、、、こりゃ、おいしいわーwww」と思って、誰も訂正の声をあげずにそのまま撮影続行しましたね。ちょっと意地悪を感じるなーこのスタッフにはw

そしてこの回の顛末のせいで、本シリーズの常連スタッフの一人である金田(かねだ)さんは、ファンからのコメントやツイート内ではすっかり「キンタさん」の愛称で呼ばれる愛されキャラとなり、これ以降の『監死カメラ』シリーズでは欠かせない「顔」となっていくのでした。

まあ、これがキンタさん事件の顛末なのですが、

重要なことに、気づいていただけましたかね?

そうなのです!

この話、途中から、地下アイドルの子の怪言動と、周りの人間関係のドロドロに視聴者の興味を向けていくのですが、最後に、視聴者は気づくわけですね?

「あれ?でもそうなると、そもそもの取材の発端となったあのライブ映像に映っていた不気味な制服姿の幽霊は、結局、誰の幽霊だったの?、、、あの幽霊の正体がなんだったのかは、謎が深まったままになっちゃった!!」

ということです。

構成がうまいですねーー!この『3』はシリーズ初期にして既に忘れがたい傑作の1本ではないでしょうか!


ほんとうに映った!監死カメラ3

『ほんとうに映った!監死カメラ2』は妖怪くねくねと思われるモノを扱った映像が面白かった【フェイクドキュメンタリー幻視行】

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今回は、『ほんとうに映った!監死カメラ2』についてレビューを書きたいと思います!


ほんとうに映った!監死カメラ2

以前の記事でも申し上げた通り、私が好きなのは、「フェイクドキュメンタリー」という形式のホラーなので、本シリーズにもそのテイストを強く期待してしまっている。

そんな私からすると、やはり、単に「これは〇〇県〇〇市に設置された監視カメラがとらえた心霊映像である・・・おわかりいただけただろうか?」とやっているパターンよりも、

「この不可解な映像が撮られた場所を取材してみた・・・」という、取材班突撃パートがあるパターンのほうが心が燃えます!フェイクドキュメンタリーらしくなりますからね。そういう視点で見ると、ついに第二作では、いくつかの映像について「我々はこの映像が撮られた場所へ調査に出かけた・・・」パートが出現したことを、心から歓迎します!

そうですね、まずこの素地があってからこそ、寺内監督チームが加わった後に、監督本人やスタッフたちが顔出し名前出しで登場し、突撃取材を試みてしばしばひどい目にあう(時には怪異の原因とされていた「地元で信仰されている大切なモノ」をうっかり寺内監督チームが破壊してしまうというギャグすれすれの冒険展開も発生するw)というあのスタイルの『監死カメラ』伝説が始まるのですからね!

この第二作あたりは、そんな後年のスタイルの予兆が、少しずつ少しずつ見え始めている、いわばシリーズコンセプトの胎動期と言いますか!w

そんな中では、私としては、畑泥棒をとらえた映像、というのが一番面白かった。

地方の畑から作物を盗み、東京で格安で売っているという、よくニュースになるあの形態の犯罪ですね。それを映し出した監視カメラの映像について、

確かに、画面の恥、畑のすみっこで、

なんだか白くてフワフワしているものが、くねくね、くねくね、映像の中で揺れているんです。

「いったい、この白いものはなんなのだろうか?」
「話によると、この畑泥棒は、この映像が撮られた後に精神に異常をきたしたという・・・」

などとナレーターが話し続けていますが、

ヒトコトも「くねくね」とは作品中で明言されることはありませんでしたが、都市伝説や妖怪好きな視聴者は絶対に食いついちゃう映像ですよねコレ。「いや、、、これ、都市伝説に出てくる、『くねくね』じゃないんですか?!」って

ナレーターが、「これは、もしや、ネットで噂になった妖怪、くねくねをとらえた映像だとでも、いうのだろうか・・・」とオドロオドロしくしゃべることも、できたはずなのに、

「くねくね」だとは、ヒトコトも、言わないw

ヒトコトも言わず、ただただ、都市伝説や妖怪好きな視聴者に、「そうとは言っていないけど、好きな人は、もう、この映像を見ればわかるよね?これ、あの都市伝説の映像ってことだよ?わかるよね?」とウインクしてくる感覚w

都市伝説や妖怪に詳しい人にちらちらと目くばせをしてくるオシャレ感覚!

いいですねー!これですよ、この調子ですよーw!凡作だったら「ついに妖怪くねくねを映像にとらえることに成功した!」とナレーションで言っちゃうところを、『監死カメラ』は、そんな安易な道を選ばない。「田舎の畑に現れ・・・白くて、もやもやしていて・・・ずっと揺れている・・・これはいったい、なんなのだろうか・・・?!」とスタッフ一同がしらばっくれ続けるw。「我々は現地に取材してみた」と、しらばっくれて取材に向かうw。で、あの白いモノに関わった人は精神に異常をきたす、という地元の人の証言(w)をインタビューで確認し、「なぜ精神に異常をきたすのか・・・なぞは深まるばかりだ」としらばっくれ続ける。

「いや!だ・か・ら!それは妖怪くねくねでしょ?出会った人間が気が振れてしまうというところまで、都市伝説のくねくねそのままの展開でしょ?」と視聴者にツッコんでもらうのを、ずーっと、しらばっくれて、待っているんです。絶対に『監死カメラ』のスタッフ陣はくねくねの都市伝説なんぞには詳しいはずなのに!都市伝説好き・妖怪好きの視聴者のツッコミを喚起するために、作品中でスタッフ全員が、知らないフリを押し通す!いいですねーこういう奥ゆかしい遊びがいいですね!

↑なんだか、オモシロととらえているような文章に読めるかもしれませんが、、、まぁ怖い中にもそういうオモシロ遊びがぎっしりなのが『監死カメラ』のよいところと思うのですが、、、しかし、ここでひとつだけ注意を!

『監死カメラ』は、この手のコンテンツに対して目の肥えた視聴者を唸らせる仕掛けがいろいろとあって面白いシリーズなのですが、出てくる心霊映像はけっこうガチ怖いのがあるので、そこは要注意ですぞ!真夜中に一人でヘッドフォンで見ていたりすると、けっこう背後の暗がりが怖くなっちゃうかもしれませんよ。

毎回の仕掛けの楽しい『監死カメラ』だが、きちんと、怖いところはがっつりと怖いのだ!いやむしろ、怖いところはしっかり怖いがゆえに、その手の「しかけ」の妙も効果抜群に活きてくる、と言いますか。

この手の「映像的には怖い+視聴者との駆け引きもあって楽しい」というスタイルのホラーが好きなら、『監死カメラ』や『境界カメラ』はなんともオススメでございます。ということで、私も本シリーズの次回以降の作品も続々、紹介記事を書いていくつもりです。そして私としては、今後の日本の低予算ホラー界にも、「もっと怖く」「もっとショッキングに」を目指すのではなく、このような「視聴者へのめくばせ」の活きた味わいのあるオシャレな作品が続々と華開いてほしいと願っているところなのでした。


ほんとうに映った!監死カメラ2

『劇場版放送禁止:復讐執行人』でフェイクドキュメンタリーという形式の限界について考えさせられた【フェイクドキュメンタリー幻視行】

white metal cart inside room

このところフェイクドキュメンタリーシリーズ『放送禁止』のことをひとつひとつレビューしていますが、

今回は、このシリーズがついに劇場版に進出した、『放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人』についてレビューしたいのです。


放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人 [DVD]

ただし、この劇場版については、前回の「第6回デスリミット」のレビューのなかでざっくりとは話してしまっているので、

↓↓↓

今回は、本作について私が感じた、ひとつの問題点について、正直な意見を申し上げましょう。

すなわち、この『放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人』 は、シリーズの中では、うまく行っていないところがあるのではないかなと。私自身、見ていて、凄く感じたところがあるのです。

というのもですね、、、まあ、以下、『放送禁止シリーズ』が辿ってきた過去エピソードを並べてみますので、じっと見てくださいね

第1回が心霊スポット、
第2回が大家族、
第3回がストーカー、
第4回は隣人トラブル、
第5回が自殺志望者、
第6回が夫婦間暴力、

をそれぞれ扱い、「表向きは社会問題を扱ったドキュメンタリーだが、視聴者がよーく見ると、その裏でもっと怖い事件が進行している(たいてい、表の事件(ストーカーとか夫婦間暴力とか)はもっと闇深い犯罪を隠すカモフラージュだった、というドンデン返しがくる)」というのが『放送禁止』シリーズの持ち味。

そして、この劇場版は、第6回の「夫婦間暴力」と同じ時間軸で展開していた平行の物語、という複雑なベースの上に、

「警察の手をも巧みに逃れながら、復讐代行という裏稼業を粛々と進めている謎の組織」への潜入取材ドキュメンタリー、という話が展開されます。

、、、と、

私がこの劇場版について持っている疑問点を語るには、ここまでの説明で十分でしょう。というか、勘の良い方はもう、「ん?」ときづいちゃったかもですね。

そうなのです。そうなのですよ、、、

この『放送禁止』シリーズは、

いかにもリアリティのある現代の社会問題を扱っているドキュメンタリー、、、を模した、フェイクドキュメンタリーでした。

そう考えると、一作目は少し試行錯誤の段階とみなしたとして、他のエピソードは一貫していました。

だって考えてください、フェイクドキュメンタリー作品が「隣人からの騒音による嫌がらせに苦しんでいるAさんのお宅に取材班はお邪魔することにした」と始まったら?「ああ、隣人トラブルってよくニュースにもなる話だよね。リアルな設定だな」と思いますよね?

フェイクドキュメンタリー作品が「夫の暴力に苦しんでいるというBさんのお宅を取材班は訪れた」と始まれば、「ああ、夫婦間暴力というのはよくニュースにもなる話だよね。リアルな設定だな」と思いますよね。

「大金を振り込まれることで、警察の目すらも見事にかいくぐりながら、どんなターゲットにも接近し、法律では裁かれない悪人への復讐を代行する組織に、我々は取材を許された」となったらどうですか?「いや、、、なにそのスーパーな組織?!アメコミ世界かっ?!」とツッコミが引っかかってしまい、せっかくのフェイクドキュメンタリーなのに「そもそもこんなことが現実にあるわけないのでは?!」と最初からノレないのでは?少なくとも私はそうだった。

フェイクドキュメンタリーなわけなので、表向きは「よくあるドキュメンタリー映像」を模さなくちゃいけない!なのに、「こんな事件、現実にあるわけなかろう」と最初から思われてしまうような、突飛なキャラクターや突飛な組織や、突飛なシチュエーション登場させてしまうというのは?シリーズコンセプトを考えるとかなり無理めな冒険だったのでは?

でもでも、弁護をしておきますと、この劇場版、純粋なミステリーとしてはとても緻密にできてるのです。テレビ版第6作で謎のままにされていた伏線が一気に回収される中盤とか。復讐代行組織のリーダーの正体が、二転三転するドンデン返しラッシュとか。

ドキュメンタリーを模しているところにリアリティが感じられないが、ミステリーとしての構成はちゃんとしている!、、、でもそれって、究極の問題にぶち当たりますよね?「となると、このシナリオは、フェイクドキュメンタリー形式にしないほうがよかったのでは?つまり、普通のフィクション形式で、ミステリードラマとして作ったほうがよかったのでは!?」という。

そういう意味で、私にとってこの『劇場版:復讐執行人』は貴重な事例となりました。フェイクドキュメンタリーという形式の限界を教えてくれた事例と受け止められますからね。図らずも、というところでしょうが。


放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人 [DVD]

ただし!

これで放送禁止シリーズは終わらない!

それどころか、おそらく、制作側もこの『劇場版:復讐執行人』でうまく整理できなかったところは認識しきっていたようで、

この後に制作された、『劇場版:ニッポンの大家族』では、見事にシリーズの原点に立ち返り、「カナダからきた外国人チームが日本の田舎の家庭の日常を取材する」という、なんとも「リアルに存在しそうなドキュメンタリー」をぴったりと模しつつ、胸糞な恐怖を味わせてくれるという、シリーズ最高の出来栄えを結実させてくれるのです!

この二作目の劇場版、『ニッポンの大家族』については、いずれ私も熱い絶賛レビューを書くつもりです、乞うご期待を!


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『放送禁止6:デスリミット』は私個人は高評価だがいささか複雑すぎ・凝りすぎた?【フェイクドキュメンタリー幻視行】

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長江俊和監督の『放送禁止』シリーズについて、ひとつひとつ、レビューしてきましたが、今回はいよいよ第六弾、『デスリミット』について語ります。


放送禁止6 デスリミット [DVD]

まず最初に、この第六作についての、私の所感を、「いいところ」ヒトコト、「わるいところ」ヒトコト、で述べてしまうと、、、。

いいところ:

凝っている!

わるいところ:

凝りすぎてるw

というところでしょうか。私自身は二重三重の叙述の仕掛けがある複雑なモノを好むので、実のところ、この第六作についてなかなかの高評価なのですが、初見の視聴者にさまざまな誤解を与えかねない不親切さがある点は否めません。

まあ、あらすじを説明すると、

フジテレビの公式オンデマンドサイトの「あらすじ」にいわく、

ある映像ジャーナリストが追いかける家庭内暴力。妻に突然ぶっちぎれDVをはたらく暴力夫の隠し撮り。

https://fod.fujitv.co.jp/title/4462/4462110006/FOD公式サイトより

と解説されています。ってちょっと待ってよフジテレビさん、この「やっつけ」感あふれるあらすじ紹介文には何かガッカリだな、、、まあ番組の内容の説明として、正しいっつえば正しいのだが。

私なりに整理しますと↓

この『放送禁止』シリーズ、

第1回が心霊スポット、

第2回が大家族、

第3回がストーカー、

第4回は隣人トラブル、

第5回が自殺志望者の救済問題、

ときたわけですが、それでいうなら、

第6回は夫婦間暴力を取り上げています。、、、というのがタテマエで、例によって、みかけの事件の裏に別の暗黒の事件が進行している、というパターンになるのですがね。

今回も、見かけは、ある暴力夫とそれに悩まされている妻の生活を撮影したドキュメンタリー、、、と見せかけて、例によってドンデン返しが来るわけですが、

今回は凝っている!物凄く凝っている!というのがですね、この45分間の作品の中で確かに衝撃の真実がラストに明かされるのですが、なんとなんと、同時期に撮影が進められていた劇場版とも内容がリンクしていて、劇場版のほうを見ると、さらにもう一段階、ドンデン返しがあるんですね。


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まあ、そこが、この第6作が、「盛り込みすぎて難しくなったかな」と私が心配した点であって、

つまり、この第6作を見た限りの情報では、オチとしては足りないんですわw。それが、物語の中に視聴者が感じる非常に不自然な点に関わっていて、劇場版を見に行った人だけが、「あ、テレビ版の第6回を見た時に何かスッキリしないなーとモヤモヤした点は、劇場版のこのシーンと時間軸がクロスしていたためだったのか!」とようやくわかる。でもこれは、そのことを知らずに第6回を見た人には終始わからない話なので、

単純に本作「第6回:デスリミット」は、夫の行動がイマイチ不自然で、ありていにいえば「役者がヘタなのでは?」と思ってしまう危険がある、、、つーか、私自身も、劇場版を見るまでは「役者さんがイマイチ」と思っちゃってた。違うんですよー、劇場版を見ると、あの夜の夫の行動がどうも不自然だったことには実は理由があったんですよー、でもそれを理解することができるのは劇場版を見に行った人だけ、というのはやはり不親切感が残りますよね?

という次第なので、よくも悪くも、この第6作「デスリミット」は、劇場版「復讐執行人」とセットで鑑賞すべきモノとなっています。第6回を見た後に、あまり間をおかずに、劇場版を見るべきかと。そうすると二重三重の伏線がようやくすべて回収されます。


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繰り返しになりますが、このように「わざわざ劇場版も見ないと謎が全部解決されない」というのは、視聴者の立場を考えると不親切感は否めない。だがまあ、よほど凝ったモノを見たい、という、叙述トリック好きには、この第6回と劇場版の連チャン視聴はオススメできるのではないかと思いました。

、、、という話までをしておいて、

最後に、ここまでのこの記事を読んで「いや、どういうことかわかんねえよ?ネタバレを含んでもいいから、もう少し、その『問題点』とか『二重三重のドンデン返し』とか言っている点を説明してくれよ?」と思った方のために、

以下、ネタバレを含んだ、指摘をしておきます。はい、この下にはネタバレが含まれので、イヤな方は、ここで離脱してください!

では、

ネタバレ5秒前!

4

3

2

1

、、、では、

ネタバレしますよ?↓よろしいですね?

はい、すでにこの作品を視聴された方はきっと気になりましたよね?この第6回で、夫が妻に暴力を振るう理由が、「餃子にはラー油と決まってんだろうがー!」とか、ギャグかと思うくらいに、しょうもない話である点。特に餃子にラー油がついてなかったら暴れ出した時は、「今回はギャグ回なの?!」と、私も笑ってしまいましたよ。「どうしたの放送禁止シリーズ?」と心配になったくらいにね。

でも、実はこれ、意味があったんです。

それが、劇場版を見ると、わかる。

つまり、

テレビ版第6回のドンデン返しは、「実はこの夫婦は最初からジャーナリストをおびき出し、私刑にするために罠を張っていた」という点で、

そこにさらに、劇場版を見ると、「実はこの夫は脅迫されて無理やり『DV夫』の演技をするように言われていた、、、だから本人も無理やりな理由を毎回見つけてアドリブ演技をしていただけだった」ということがわかる。カメラが回ってる前で何かしらDV男のフリをしなくちゃいけないプレッシャーに追い込まれていたので、無理やり思いついたのが餃子の件だった、ということ。

でも、こんなに大事な話が、テレビ版第6回の中では語られないので、劇場版を見なかった人は「第6回は夫の言動が不自然すぎてノレなかった」と思ってそれで終わりになってしまう。それは勿体無い気もしたので、せめて第6回の中でもう少し謎あかしに踏み込んでもよかったのかなあ、とも思う。

ただし、そうなると、劇場版の最大の問題点、「このような陰謀をめぐらせて不正ジャーナリストをハメよう、としている時に、わざわざ素人を脅迫して無理やり演技させるなどというリスキーなことをするか?」というツッコミが出てきてしまう。

まあ、そこが気になると本作第6回はとても気になる点だらけになるので、やはり本作は、「視聴者をダマしにかかってきている空想的な叙述ミステリー」と思って、おおらかに「ダマされよう!」という鑑賞態度で見るのが一番かもしれません。繰り返すとおり、私は、凝りに凝ったシナリオは好きなので、意外なほどに第6回には高評価を与えているわけなのですが。


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『ほんとうに映った!監死カメラ』をフェイク系ホラーの教科書として見る!【フェイクドキュメンタリー幻視行】

two gray bullet security cameras

ほんとうに映った!監死カメラ

そりゃ私としても、もともと真面目なシネフィルからは「ホラー」などというジャンルは低俗サブカルとして周縁に追いやられるものとして見られているだろうとは思うし、

その中でも「ほんとうに写っちゃった!系の心霊ビデオ作品」などというものは、ホラー好きの中でもさらに周縁ジャンルとして見られているだろうこと、それを無視する気もありませんが、

実は芸大出身で、かつ、「ゴダールやカサヴェテスと同列にB級ホラーを研究する」という、真面目な教授からするとかなり困った映画論文を書いていた学生でもあったこの私、

そんな私はつくづく思うのです↓、

「本当に写っちゃった!系の心霊ビデオ」ほど、その歴史を追いかけていて面白いものはない!と!

まことに、マジメな映画史が進んでいく、その傍らで、

「できるだけ低予算で、しかし、もっと怖いものを!もっともっと怖いものを!」の表現をひたすら洗練させ続けている人たちもいるのだ、という点、私には実に痛快に見える。いいぞ!頭の固いシネフィルが絶対に口を出してこないこのジャンルで、どんどんクリエイターの皆さん、もっと自由に、もっと大暴れしてくださいってね。

さて今回は、

2010年代の心霊ビデオ界でまちがいなくひとつの枢軸を(!)担っていたと私が絶賛するシリーズ、『監死カメラ』の第一作のことを取り上げます。

つまりは、監視カメラにとらえられた心霊映像を集めたビデオ、、、といういかにもな「ほんとにあったと言い張る心霊映像集」ですが、シリーズが進むと寺内康太郎監督が製作陣に乱入し、

私が好む「フェイクドキュメンタリー系ホラーの境地」で大冒険を繰り広げてくれることになりますw

だが今回語るのは、寺内監督合流前の、

いわば、まだ「普通の」心霊動画をやっていた時代。

でもこの第一作を舐めてはいけない。新しいシリーズの幕開けとして、

なんとも(良い意味で)教科書通りな「心霊ビデオ」の姿勢を貫いている。そうです。この手の動画を自作して世のホラーファンをアッと言わせてみたい、という夢を持つ方にはぜひぜひ、心霊ビデオの教科書としてこのシリーズは研究してほしいのです!

そんな目線で見たとき、まず、私が指摘したいところ。

オープニングのナレーションが素晴らしいと思いますw。私の書き起こしですが、以下のナレーションでこの長期シリーズは幕を開けるのです↓

我々が普段目にしている世界は
本当に真実の世界なのであろうか?
人間の脳は無意識のうちに
見なくてもいい情報を都合よくコントロールし
脳内で削除しているという。
しかし機械となればそうはいかない。
気が付けば我々の頭上には無数の監視カメラがある。
その数は日本全国に400万台と言われている。
一日に数千万時間以上撮られる監視カメラ映像。
しかしそこに写っているのは
果たして我々が目にしている世界と同じものなのだろうか?

『ほんとうに映った!監死カメラ』

この言葉の選び方だけで、私の心を掴んでしまったのが『監死カメラ』!いいですか、私が感心している点、一気に指摘しますよ?

・「監死カメラ」という、いっけんダジャレともとれるタイトルの説明を、ちゃんと冒頭でしている(監視カメラは、時に、死の世界の片鱗を捉えるから、「死を監るカメラ」で、監死カメラ、なのですね?

・これは絶対にフェイクドキュメンタリーホラーを志す人にも、どんどん真似してほしいと思うのですが、やけに数字が具体的なところw!「いま、日本には監視カメラは〇〇台あります。それを合わせると毎日〇〇時間もの新しい監視カメラ映像がどこかで増えているんです」って具体的な数字で話すところから、すとんと、心霊動画の世界に突入していくのですね。そうです、たとえフィクションの世界に入っていくにせよ、最初にホンモノの統計数値を出すところから視聴者を引き込むのは、現代の視聴者を作品世界に引き摺り込むテクニックとしてぜひ、乱発してほしい!

というのも、私自身がエンジニアの会社にいる者なので、普段のビジネスシーンで数字を使ったプレゼンに慣れているからw。いい感じで私達をフェイクの世界に導いてくれるには、やはり、数字で導入していただくのが、いちばん入りやすいです。そういう意味で『監死カメラ』の導入は理想と思ってる。

そしてこのようなオープニングナレーションの後に、以下のようなテロップが現れます。

これからご覧頂くのは、死者と関わりがあるであろう、
なんらかの奇怪な現象をとらえた
監視カメラ映像集です。
この映像を見たことによって引き起こされた災いや
体調への悪影響などには、
一切責任を負いかねます。
くれぐれもご注意してご覧下さい。

『ほんとうに映った!監死カメラ』

このテロップもいいですねえ!というのも、読めば読むほど、これは実は「本当なの?フェイクなの?」とマジで突っ込んでくる方への「免責」になってるのです。

・死者と関わりがあるで「あろう」
・「なんらかの」

と濁したことばかり書いているのは、「本物かフェイクかいっさい断言しないので、そういうビデオだと思って楽しんでね」というオトナな対応を視聴者に求めているわけだし、

・まんいち、これを見てマジになっちゃった人が「霊障で災が起きた」とか制作会社に怒鳴り込んできても我々は何の責任も取れません

とも、ちゃんと言っちゃってますね。これを本物だと思い込んでしまった人が騒いでも知らんよと。

で、ここは私見ですが、

この『監死カメラ』第一作のネットのレビューに、「こういうビデオを出すなら、映像はホンモノだと言い切るべきだ!」と述べている方がいたのですが、私はそれには反対です。

そのココロは、「すべて本当だ」と言い切るのは、もうみんな嘘だと知っている昨今の「視聴者」の賢さを前にしては、しらじらしいと思われるだけだろうという点。

だからといって、「このビデオの心霊動画はすべてフィクションです」と言い切るのも、それはそれでシラけるwので、

オトナな対応というのは、やはり、上記した免責分割のような、「本当ともフェイクとも言い切らない曖昧な断り書き」ではないでしょうか?

そして、何よりも大事なのは、そのように、普段から「本物なのか、フェイクなのか、我々制作スタッフにもわからないのです」という曖昧な態度をとり続けていればこそ、

「実は、白状しますが、このあいだ公開した心霊動画はフェイクでした、すいません、、、でも、我々がフェイクのつもりで作った動画の中に、我々の用意していなかった変なモノが写り込んでいたのです!」と、

「フェイクでした」「と思ったらホンモノの霊が?」「いや、それも調べたらフェイクでした」「いや、でも、それでもまだ説明のつかない部分がこの動画には残っていて、、、」の無限迷宮に視聴者を引きずりこむことができるのです!

もっとも、この、「前の作品は実はフェイクだったと、いきなり製作者が顔を出し白状してくる」「しかし、そのフェイクのはずの映像に、やはり説明のつかない部分がある」の二重三重の迷宮化は、のちにこのシリーズに合流する寺内監督チームが深化させていき、

ついには『境界カメラ』という、私の愛する奇跡のフェイクドキュメンタリー傑作の誕生に繋がっていくわけです!


境界カメラ

、、、というわけで、今回紹介した『監死カメラ』第一作が、続編を出していく中でどのように進化し、やがて数々の2010年代の心霊系ビデオ傑作誕生に繋がっていくのか、私も今後、都度、記事をあげて追いかけていきますので、何卒、ご期待!


ほんとうに映った!監死カメラ

『放送禁止5:しじんのむら』の面白ポイントをなるべくネタバレせず語ってみる【フェイクドキュメンタリー幻視行】

abandoned ancient architecture black and white

「昨今、はやりの、フェイクドキュメンタリーなるものについて、考えたきことがこれ多々あり、古今の名作をあれもこれもと鑑賞してみれば、深まる秋の夜はどこか恐ろし」

・・・などということをふと思いついて以来、フェイクドキュメンタリーの沼地をさまよっている私ですが、

今回は長江俊和監督の『放送禁止』シリーズの第五弾、『しじんのむら』について語りますね


放送禁止 5 しじんの村 [レンタル落ち]

フジテレビさんwebサイトのあらすじにいわく、

社会に適合できない者たちが集まって暮らす癒し施設「しじんの村」

取材スタッフはこの村にやってきた一人の女性を追いかける。

姉が自殺、本人も自殺願望を抱えるこの女性が施設での体験を経て社会復帰。

あなたには見えるだろうか?取材テープから垣間見える本当の恐怖の真実が・・・

https://fod.fujitv.co.jp/title/4462/4462110005/

まあ、この『放送禁止』シリーズにだいぶ慣れてきている視聴者ならば、もはや今回の中心人物、「しじん」という男のインタビューでの言動を見ているだけで、

「ははあ、さては…」と、もう勘づいてしまうかもしれませんね!

以前に私が示した以下の図の通り、

↓↓↓

表では、「しじん」と名乗る活動家が、自殺志願者たちの自立を支援している施設で奮闘していく物語が進んでいきますが、

裏では例によって胸クソなヒトコワホラーが着々と進行していますね、

しかし今回は『放送禁止』シリーズの中でも、かなり、オチを「予測しやすい」展開であったかもしれません。

ドンデン返しも、オドロキというよりは、

「ああ、やっぱり、、、!」

という感想が大きいのではないでしょうか?

そういうわけで、今回は敢えてネタバレをしてまで細かく解説する必要はなさそうですね、もう、ご自身の目で見ていただくのが早い、そんなに複雑な叙述トリックではないと思う。

ただし、「しじん」の正体はともかく、

「しじんの村」に住んでいて、最初から何度も何度も画面に映っていた、ある人物の正体には、一瞬「エッ」となるかもしれません。でもこれも、よーく2回目を見ると、途中に出てくる「しじんの過去の写真」に伏線がありましたね。

とまれ、この『放送禁止』シリーズ、

第1回が心霊スポット、

第2回が大家族、

第3回がストーカー、

第4回は隣人トラブル、

今回はとうとう、人の死が続出する暗黒の共同体のドロドロ話になったか、着々と『放送禁止』シリーズは、起こる事件がおぞましさを増していきますね。

というわけで、『放送禁止5』は、

意外な見方かもしれませんが、

シリーズ第五作にして、『放送禁止』シリーズの初心者向き、とも言えるかもしれません。謎解きが比較的、やりやすいからですね。

ただし、もし、この私の記事を読んで「それじゃこの第五作から『放送禁止』シリーズに入門してみよーかな?」という方がいるなら、その方のためにひとつ、助言を。

この第五作と、そして次回の第六作に顕著な事なのですが、

「なんだ?いくらフェイクドキュメンタリーとはいえ、演技の下手な奴がいるなあ?演技の大袈裟さが台無しだなあ」と思っても、そこで視聴を止めないでくださいね。

私も最初はそう思ったのですが、第五作と第六作は、「やけに演技が下手な人がいる(言動がいちいち大袈裟で鼻につくキャラクターがいる)」ことが、実は伏線だったりするので侮れんのですw。

おお、これ以上はもう言えない!あとはぜひ、ご自身の目でご確認ください!


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