怪談を盛り上げる発言をするのは異形のモノの側だけではありません。
ただの人間であるところの第三者が、状況を煽るだけ煽って何の役にも立たず去って行ったり、余計な事をしてむしろ事態を深刻化させてしまったり、そんな展開よくありますよね!
そこで「さまざまな切り口」第4弾としては、そのような、「困った第三者」の名(迷)セリフが登場する怪談を、『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章333怪談の中から10個、ピックアップしてみました!
「え?おまえ、前任者から聞いてないの?」
これはバイトの先輩からの発言として登場します。しかし、これは困りますよねー。とても大事なルールがこのバイトにはあったということで・・・「それ、最初に言ってよ!」と思ったのは、私だけではないはずだ。
「言ってなかったっけ?ごめん」
これも似たようなパターン。だがこの『白い手』に関しては、この家に住んでいる皆様にとっては心霊現象は日常化していて、そんなに騒ぎ立てることとは認識されていなかった、とも解釈できる。だとするとそれはそれで、この家に住んでいるご家族の冷静さがむしろ怖いけど。
「ああ、私の力ではとても祓えない!」
と怖いことを言ってくるお坊様の登場する『呪われた恋人』もエントリー。ただしこのお坊様の弁護をしておきますと、その後、ちゃんと「より位の高いお坊様」を紹介してくれました。よかった・・・!
「泊まって行ったらどうだ?」
『彼女の実家』で登場するセリフ。怪異が起こった直後の家で親切そうにこんなことを言われて泊まる奴がいるかい。「だまれ!」
「きっと地獄に・・・」
『おじいちゃんの戦友』で登場するおばあちゃんのセリフ。この怪談ではずっと背後の登場人物かと擬態しておいて、実はキーパーソンはこのおばあちゃんでした。
「また来てたのか!」
え・・・?てことは、あいつらのこと、何か知っているんだな、おじいちゃん!!
「この学校は雨の日はいろいろあるから」
この怪談は面白い。先生も生徒もみんなが、こう口にする。しかし「具体的に何があるんですか?」と転任の教師が聞くと、みんながお茶を濁す。この先生&生徒のうすっぺらな反応こそが、もっとも「怪」なる点かもしれません。みんな新参者に冷たすぎる!何かあるなら具体的に教えてよ!
「この家、出るのよね・・・」
徳光正行さんの『左から』で、実のお母さんがいきなりこんなことを言い出します。でも徳光正行さんのご実家のハナシということは、お父さん、とはつまり、あの徳光さんのことですよね・・・?と余計なことを考えてしまいました。
「ぜんぜん気にしなくていいんだけどさ・・・」
『チェックのおじさん』は、私がひそかに「日本最大の心霊県」だと認定している山口県でのオハナシ。さすが山口、一般通行人レベルで平気で「視える人」が出てくる。気になるわい!
「つぎ頭飛んでくるからな」
『柿、食うな』は実に面白い二段階構成になっている怪談。怪異現象の異常さも迫力満点ですが、後部座席に座っているシノダさんこそが、幽霊よりもはるかに恐ろしいヤツだった、というオチが強力。あんたぜったい、何か知ってますよね、シノダさん!教えてくれないとコマリマスヨ!
総評として。こうして10個並べてみると、「困った第三者」のみなさん実に、怪談の盛り上げ役としていい味を出していますね。でも私としては、やはりお坊さんや祈祷師や霊媒師が出てきておきながら、「ごめん、私の手には負えません!」と帰っていくパターンが、常道とはいえ大好きなのでした。
それが悪い事とは言いません。できないもんは、できない、これは仕方ない。
洋モノのホラー映画『ポルターガイスト』にいたっては、「これでこの家は浄化されました」と霊媒師がいい加減なことを言って帰って行った後に、真の幽霊の猛攻撃が開始されたわけですから・・・これらの実話怪談に出てくる、「手に負えません」と帰っていく霊媒師さんは正直で誠実で親切な分、まだマシかもしれないのだ!
※次回はまた視点を変えて、怪談師さんたちのテクニックに注目し、「語り口を真似したくなる怪談10選」をピックアップして紹介致します!
≫さまざまな切り口からのベスト怪談集:真似したくなる語り口の怪談集10選
※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。