データで読む『怪談のシーハナ聞かせてよ。』:一番よく使われている体験者の名前は、Aさん?Bさん?Cさん?

実話怪談というものは、おおよそ、以下のような始まり方をしますよね。

「これはあんまりハッキリとした場所は言えないんで、兵庫県とだけ、言っておきます。Aさんというね、石材屋さんの体験なんですよ。今から十七、八年前ゆうことでしたね・・・」(※宇津呂鹿太郎さん『依頼』の冒頭より引用)

「マニアックな話ですいませんが、ノコギリクワガタというクワガタがいます(中略)。私の友だちにBさんという中年の男性がいまして、近くに住んでいるんですけどね、彼の息子が、クワガタが好きで・・・」(※戸神重明さん『バリカン大発生』の冒頭より引用)

このように、体験者の名前を「Aさん」とか「Bさん」といった仮の名前にして語るのが、実話怪談の最近の定型。

で、少し気になってきたこと。

たとえば『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第1シーズンの全333怪談から「体験者の名前」を抽出して、どんな名前が多くの怪談師さんに好んで使用されているかの傾向を出してみたら、結果はどうなるでしょう!?

個人的な予測としては、「Aさんが筆頭に来るのではないか!?」というもの。

というのも、怪談師さんというのはまず「伝わりやすい語り方」を研究されている方々やので、できるだけ聴き手の邪魔にならない、無個性な仮名を好むのではないでしょうか?

となると、アルファベットの第1番目に出てくる「A」が、最も好まれて使われているハズ

この仮説が正しいか、以下の方法で検証してみました!

・第一シーズンの全333話から、「体験者の名前」を抽出する

・抽出した名前で、「さん」「くん」「ちゃん」「子さん」の表記ゆれは、すべて「さん」に統一する(例「Aくん」や「A子さん」は、「Aさん」に正規表現で統合する)

・怪談師さんご自身の体験談を語っているハナシは、「自身の体験談」という名称を振る

・上記の前処理を施したものを棒グラフに描画する

その結果が、以下となりました(上位10位までを描画)。

「自身の体験談」が、333話中45話を占める(13.51%)というのは、それはそれで、ひとつの発見でした。怪談師さんご自身の持ち込み体験談が『怪談のシーハナ』のひとつの核をなしております(※もっとも、この13.51%を「意外に多い」とみるか「意外に少ない」と見るかは、その人の「実話怪談」へのイメージで違ってくるところかもしれません)。

次点には、おお、予想通りに「Aさん」が来ました!全体の11.71%が「Aさん」です

その理由としては、私が考えたように、「ハナシを聴き手に分かりやすくするための配慮として、無機質な記号”A”がいちばん好まれる」からではないか、と思いますが、いかがでしょうか?

となると・・・問題となるのは、3位以下

無機質なアルファベットであるところの「Bさん」や「Cさん」が上位に来るのかと思いきや、「Mさん」「Kさん」「Iさん」が好まれているのはなんなのでしょう?!

日本人の名字で多いのは、佐藤さん・鈴木さん・高橋さんです。Iに該当しそうな「伊藤さん」や、Kに該当しそうな「加藤さん」は、日本人の名字上位10位にかろうじて入っている程度。Mで始まる名字である松本さんや前田さんがその他を押しのけて3位に来ているとも、どうにも私には思えない!

これはなんなのでしょう?「Mさん」「Kさん」「Iさん」が、語りの上で発音しやすい等、実話怪談で選好されやすい何かがあるのでしょうか?

これはナゾで、今の私には回答が見いだせておりません・・・。(※後日注:このナゾは別の切り口で分析をしていた時に解けました!右の記事を参照ください≫体験者の名前で「Mさん・Iさん・Kさん」が上位に来るのはナゼ?

だがひとつ、言えることがある。自身も怪談を語ってみたい、となったとき、冒険しないなら、やはり「Aさん」を使うのが妥当かと!あえて「Mさん」「Kさん」「Iさん」を使うと、ちょっと通っぽくなる・・・かもしれない・・・!

全データを以下に貼り付けておきます。下のほうは、かなり細かい職業名や出身名を当てられているケースが多くなりますね。ちなみに「熊谷の女子大生」は、かの暗黒怪談「紐引き女」の回ですね・・・あれ聞いたら新幹線で熊谷を通るたびに紐引き女のことしか思い出せなくなってしまいました・・・。

行ラベル個数 / 体験者百分率
自身の体験談4513.51%
Aさん3911.71%
Mさん195.71%
Kさん144.20%
Iさん133.90%
Cさん113.30%
Nさん103.00%
Yさん82.40%
Bさん72.10%
Sさん72.10%
Uさん61.80%
Hさん51.50%
Fさん41.20%
Rさん41.20%
Tさん41.20%
ケイコさん41.20%
Eさん30.90%
Oさん30.90%
Wさん30.90%
ある男性30.90%
タカハシさん30.90%
知人の体験30.90%
本人の取材30.90%
友人30.90%
Dさん20.60%
Jさん20.60%
あるサラリーマン20.60%
ある大学生20.60%
イシカワさん20.60%
お母さん20.60%
カズキさん20.60%
カナさん20.60%
サクラダさん20.60%
セイカちゃん20.60%
小学生20.60%
知人の女性20.60%
ササキさん20.60%
(怪談師さんの)ファン10.30%
35歳男性10.30%
40代男性10.30%
N実10.30%
アーウェン10.30%
アリサカさん10.30%
あるおじいさん10.30%
あるバスガイドさん10.30%
あるバンドのドラマー10.30%
ある主婦10.30%
ある主婦の方10.30%
ある女性10.30%
ある新婚の夫婦10.30%
ある人10.30%
ある男の子10.30%
アンノくん10.30%
エリさん10.30%
オオサワくん10.30%
オサムさん10.30%
カノウさん10.30%
ケンちゃん10.30%
サトウさん10.30%
サトシ10.30%
シンジさん10.30%
セキグチさん10.30%
タクシー運転手10.30%
たけしさん10.30%
タナベさん10.30%
タンジエさん10.30%
ナカジマさん10.30%
ナツキさん10.30%
ニシヤマさん10.30%
ノリコさん10.30%
の体験談10.30%
ひろさん10.30%
ポールダンサー10.30%
マイコさん10.30%
マエダさん10.30%
マスダさん10.30%
マナミさん10.30%
まみこさん10.30%
まゆこさん10.30%
マリさん10.30%
ミキさん10.30%
ミサキさん10.30%
ヤマモトさん10.30%
ユキヤさん10.30%
ヨシカワさん10.30%
ヨシミさん10.30%
リエさん10.30%
リカさん10.30%
沖縄に住んでいた男性10.30%
会社の後輩10.30%
怪談イベントに来ていた客10.30%
怪談バーのお客さん10.30%
看護師の妻10.30%
吉村智樹さんの取材したハナシ10.30%
熊谷に住む女子大生の話(を聞いた親戚のおじさんの話)10.30%
山形の女性10.30%
社長さん10.30%
須藤為五郎さん10.30%
声優10.30%
先輩芸人の知人10.30%
祖父10.30%
祖母10.30%
大学のときの先輩10.30%
大阪の知人10.30%
知り合いの人10.30%
知り合いの漫画家10.30%
知人10.30%
知人のバーテンダー10.30%
田中さん10.30%
登山家田中さん10.30%
都内に住む女性10.30%
同級生10.30%
同年代の男性10.30%
独身の男性の方10.30%
舞さん10.30%
妹さん10.30%
友人の従姉妹10.30%
由美さん10.30%
林さん10.30%
麓にある宿の主人10.30%

※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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山神ヤシロ