『放送禁止2:大家族編』がけっきょくシリーズ最高傑作では?!【フェイクドキュメンタリー幻視行】

person walking to a house
person walking to a house
Photo by Sean Valentine on Pexels.com

「昨今、はやりの、フェイクドキュメンタリーなるものについて、考えたきことがこれ多々あり、古今の名作をあれもこれもと鑑賞してみれば、深まる秋の夜はどこか恐ろし」

さて、、、

以前、長江俊和監督の『放送禁止』シリーズの第一作を鑑賞しました

その勢いで、

結局、『放送禁止』シリーズを、劇場版を含めすべてコンプリート視聴したところなのですが(!)

焦らず、ひとつひとつ、感想を述べていきたいと思います。


放送禁止・2 ある呪われた大家族 [レンタル落ち]

今回は「放送禁止2」の感想記事となります。

でもねえ、シリーズを一気見してしまったばかりの私から、いきなり総括めいたことを言いますが、

この、「2」、「呪われた大家族」編が、私としてはシリーズのベストに推したいですね。

いや、

厳密に言えば、この「2」と、この後日談にあたる劇場版、この二作セットこそが、「放送禁止」シリーズの看板作かな!と思いますよ


放送禁止 劇場版 ~ニッポンの大家族 Saiko! The Large family [レンタル落ち]

↑よく見ると、この劇場版のDVDジャケット写真から、もはや伏線だらけなのですよねw、芸が細かい、、、!

まあ、優雅にしてクソ後味の悪さがやみつきになる劇場版のことは、また後日、記事で語るとして、

今回は、テレビ放送された「放送禁止2 呪われた大家族」の話のみをしましょう。

いいですよ、これは。怖いもの好き、気味の悪いアトアジ好き、そして「謎かけ」好きにはたまらないでしょう。

これは、いわゆる「子だくさんの大家族に密着ドキュメンタリー」の形式を模した、フェイクドキュメンタリーなのですが、

途中から、まさかの、オカルト展開に突撃!

オカルト展開になる、というのはつまり、以下のような要素がぐいぐいと物語の中心を占め始める、ということ

・謎めいた心霊写真(この心霊写真は、なんとなんと、別のテレビ番組「アンビリーバボー」とリンクしているという恐ろしい仕掛けを孕んでいるのですが、それを語るとあまりに話が長くなるので今回は見送る)

・次々に家族を襲う謎めいた事件

・小さな子供達が描く「ラクガキ」に込められた記号(これが怖い!)

これだけブキミな映像が続くと、視聴者はいつしか、「大家族のお宅にお邪魔しますドキュメンタリー」の世界から、実録心霊ドキュメンタリーに移行させられた気持ちになる、

しかし、問題は、ここからなのです!

「放送禁止」第一作の時にも示した以下の図の通り、

見かけの物語の裏に、注意深い視聴者ならば気づく別の物語が隠されているのが『放送禁止』シリーズの基本構成

今回のオカルト展開も、やはり最後のドンデン返しに到達するためのトリックなのです。まことにこのシリーズは油断がならない。


放送禁止・2 ある呪われた大家族 [レンタル落ち]

以下、ネタバレ考察!

どういうことなのか!?については、もう、ご自身の目で見ていただくしかないのですが、

以下、ちょっとだけ、ネタバレをしちゃいます。

ネタバレが嫌な方は、ここで離脱してくださいね。

それでは、ネタバレ5秒前!

4

3

2

1

、、、

では、語ってしまいましょう!

すべての謎を解き明かす鍵は、まさに、あの幼児たちが描いていた「おえかき」の内容ですよね。

Q.どうしてあの子達の描く絵にはお父さんがいなかったのか?

Q.「オバケなんていない」というラクガキの示す意味は?

というあたりがキーワードですが、「オバケなんていない」のラクガキの意味は、まったくもって、字義の通り。

あれだけ、心霊写真だー、お祓いだー、と騒いでいたのに、子供達は知っていたんです。「本当はオバケなんかいないのだ」と。

それにしても、

これほど重い「実はオバケなんていないんだよ?」のヒトコトは、過去、なかったのでは?

だってこの家族、

「すべてがオバケのせいだった」で済んでいたら、どれだけマシだったか?いや厳密には、せめて、小さい子供たちには「あれはぜんぶオバケのせい」と思い込んだままでいてほしかった!

あ、いや、でもそのまま大人になってから真実に気付いちゃう方がショックは大きいだろうから、やはり知っていたほうがよかったのか、、、?

いずれにせよ「この家族はこれからどーなっちゃうん?」と気になった方は、ぜひ、後日談にあたる劇場版にチャレンジしてみてください!


放送禁止 劇場版 ~ニッポンの大家族 Saiko! The Large family [レンタル落ち]

なぜ「大家族」編が白眉なのか、を考えてみると・・・

それにしても、この「放送禁止2」はどうしてシリーズ中の傑作になっているのか?考えてみましたが、

凄く身も蓋もない意見ですが、つまり、もともとテレビの「ほんとうの」大家族ドキュメンタリーというやつも、ヤラセで感動系になっているばかりで、よくよく観察すると不穏な「闇」が見えてきちゃうことがままある、どこかいかがわしいコンテンツだから、では?

有名な渡津家にせよ、竹下家にせよ、そもそもが「大家族に密着ドキュメンタリー」とはどこか怖いのだ。

だから私は、その手のドキュメンタリーは、好まない。そのかわり、「その他のドキュメンタリーを模した」この『放送禁止2』には、ズバリの怖さと気味悪さを感じた次第なのでした。

というわけで、結論、「この『放送禁止2』(およびこの後日談にあたる劇場版)こそ、放送禁止シリーズの白眉と思う!」でした

というわけで・・・

『放送禁止』第2回のレビューは以上となりますが、今後も私、フェイクドキュメンタリーとカテゴライズされるもの、ガシガシ視聴しようと思います。そしてつどレビュー記事を上げていきますので、今後もなにとぞ、このウサギめをごひいきに、よろしくお願い申し上げます!


放送禁止・2 ある呪われた大家族 [レンタル落ち]

『オーメン2/ダミアン』は悪くないと、「キャラクター死亡率」まで出して擁護してみた回(※ネタバレあり)

a broken wooden crucifix leaning on concrete

a broken wooden crucifix leaning on concrete
Photo by KoolShooters on Pexels.com

『オーメン2/ダミアン』とは?

ホラー映画シリーズ『オーメン』の第二作が、『オーメン2/ダミアン』。

後光の差すほどの傑作(悪魔を扱った映画で「後光が差す」という表現もナンですが)だった第一作に比べると、「第二作は微妙」「演出が雑」といった声も多々あるようで。

かくいう私も、第一作絶賛者

そんな私の、第二作への感想はといいますと。

いや、どうしてなかなか、優秀作だと思っておりますよ!?

以前のこちらの記事でも述べた通り、第三作にはいろいろと言いたいことのある私ですが、第二作は悪くない。

「第一作と比べると何かが違う」?

いやいや、そうじゃないと思うんです。

この第二作は、かなり努力して、「第一作とは違う路線」に振り切っているんですよ。それが悪くない!

どういことか?説明しようと思います。なお、以下はネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください。

スラッシャー路線に振り切った第二作(ネタバレあり!)

有名になりすぎた第一作を引き受けた続編として、どこがよいか?

今回はスラッシャー映画に路線を振り切っているんです!

これは正しい判断だったと思います。

というのも・・・

メイキングのウラバナシですが、かの第一作の監督をしたリチャード・ドナーは、制作会社から「もっとバンバン、人が死ぬ場面を増やせ」というプレッシャーを受けていたのに抵抗していた人なのですね!(第一作のDVD特典映像で、リチャード・ドナー氏自らが、「映画会社はスラッシャー映画にしてしまおうとしてきたが、そうはさせるかとふんばった」と証言しています)。

たしかに!

第一作で、悪魔および悪魔崇拝者の仕業(とみられるもの)で死んだキャラクターは、たったの4人なのです(※私カウントです、あしからず)。

ところが、この『オーメン2/ダミアン』はどうか。

これもまた、私の数え方にはなりますが、

悪魔および悪魔崇拝者の仕業(とみられるもの)で死んだキャラクターは、12人なのですw。

これ、凄いことです。だって、オーメン2の上映時間は111分なのですよ?

つまり・・・

約9分に1人の割合で人が死んでいる??w

平均をとると、まぁ、そういうことです。約9分に1人!?

まぁ、今回は、「2人まとめてサクッと1シーンで死亡」するパターンも複数あるので、単純計算した場合の話にはなりますが。そうは言っても、多いです。『チャイルドプレイ』とか『エルム街の悪夢』とかの有名ホラーでも、110分で12人というのは、あんまり見たことがないペースではなかろうか!?

そう計算してから、あらためて、オーメン2を見直してみると、なるほど!

たしかに、頻度がハンパないんです。

物語が進んだら、

こわーい音楽が流れてきて、ブシャ・グシャ・ギエー!

その人のお葬式シーンが出てきて、またちょっと、登場人物たちのドラマが進んだら、

またこわーい音楽が流れてきて、ブシャ・グシャ・ギエー!

さくさくと人が死んでいく映画なんです。序盤で紹介された、名前のあるキャラクターは、111分以内に文字通り全滅してる(悪魔崇拝者側のキャラは除く=別の見方をすると、名前のあるキャラで死ななかった奴は全員「あちら側の勢力」と見てよい・・・運転手だけは違うっぽいけど、たぶん)。

このスラッシャー映画方針の採用、悪くないですよ。

「どうしたって、あの第一作のインパクトにはかなわないんだからさ。サクサクと死亡シーンが連続する、殺人ショーにしちゃおうよ」

と製作者側が割り切ったようなスピード感。

そして、有名なエレベーターでの必殺大切断のように、それぞれの死亡シーンにけっこう手間かけているんですね。もう殺人ショーだ。生き埋めになったり、農薬にまみれたり、氷の池に落ちたり、カラスにチクチクやられたり、みんな大変。一人だけ、ベッドで寝ている時に例の怖い音楽が流れてきて、何が起こるのかと思いきや「ああ、急に胸が苦しい」と病死してしまうだけの地味なデスシーンもありましたが・・・さすがに予算が追っつかなくなったのかもしれません。

観ているほうも、趣味の悪い言い方ですが、「さあて、次は誰が死ぬのかなー」というドキドキ感で見ちゃうんですね。

そして確かに、最後のほうになると、観ているほうも、キャラクターがコーヒーメーカーひとつ操作しただけで「もしかしてこの機械が故障して凶器になるのでは?」と、画面に映るものすべてに警戒してしまうんですね。ファイナル・ディスティネーションみたいなもんだ。

雰囲気オシだった第一作と、まっこう勝負をせず、

スラッシャー映画としてサクサク人を死んでいく豪快さにもっていった第二作。

悪くないんじゃないでしょうか?!

まとめ

というわけで、私のオーメン三部作への感想を整理しますと。

第一作は、紛れもない傑作!

第二作は、酷評する人も多いけど、私は「かなりがんばった優秀作」とみている

第三作は、そんな私も、弁護のしようがない💦

というところです。

でもですね、『オーメン』シリーズ全体の評価に関わる話を、もうひとつだけ、させてください。

この第二作、シリーズ全体の位置づけとして、めちゃくちゃ大事な点があるんです。

第二作では少年に成長している、ダミアン君のことです。

彼、この第二作の中で、自分の頭皮に「666」の痣があることに、どうやら生まれて初めて気づくんですけど。

そのとき、めちゃくちゃビックリしているんですよ!

これ、私には意外だったんです。

「え?ダミアン君って、てっきり最初から自分が悪魔だと自覚しているもんだと思ってたのに!?」と。

本人がそれに気づいていなかったとなると、いろいろ、物語の解釈が変わってくるんですね。

良い意味で、深みが出てくるんです。

だって・・・第一作で、グレゴリー・ペックに車に押し込められた時にブルブル震えていたのは、「子供のフリして父親を混乱させている悪魔のやりくち」ではなくて、

本気で「お父さん、なにするの??」と怖がってたことになりますよね。

そして「前作から7年後の物語」ということは、ダミアンは第二作のタイムラインで13歳くらい。

思春期のさなかに、自分が悪魔の子だと気づいてしまう少年の話でもあるんです。

ということは、ラストシーンで見せたあの涙も、ウソの涙じゃないわけだ。

第一作では、「あどけない子供のフリをしているが、きっと腹の底では恐ろしいことを考えている悪魔なんだ!」と思っていたダミアン君が、実は複雑な内面を持った子供だとわかってしまう第二作。

そういう面からも、第一作をよくぞここまで深掘りしたと言いたい優秀作と思いますし、

ますます・・・第三作が残念に見えてきちゃうなぁ。中継ぎがここまで好投したのにねえ・・・!

【中古】 オーメン2/ダミアン /ドン・テイラー(監督),スタンリー・マン(脚本),ハーヴェイ・バーンハード(製作),ジェリー・ゴールドスミス(音楽),ウィリアム・ホ 【中古】afb

価格:781円
(2022/9/15 21:57時点)
感想(1件)


「トラウマ映画」TOPへ戻る

映画『回路』に出てきた日本ホラー史上最恐幽霊への海外からの人気に嫉妬してしまったハナシ

graffiti painted on wall in abandoned building

うちの奥さんが、ふと、こんな感想を漏らしました。

「アメリカの幽霊はお金をかけた特殊効果で豪快に怖がらせにくる、日本の幽霊はお金をかけずに『しぐさ』で怖がらせにくる」と。

うちの奥さんはホラー好きではありませんが、特に90年代以降の日本ホラー映画を総括するにはピッタリな整理ですよね。感心した次第。

「日本の幽霊は『しぐさ』だけで怖い!」という点については、私にも言いたいことがあり。黒沢清監督の『回路』の前半にちょっとだけでてきた女の幽霊、あれはめちゃくちゃ怖くないですか

【中古】 回路/黒沢清(監督、脚本),加藤晴彦,役所広司 【中古】afb

価格:1,760円
(2022/7/14 11:55時点)
感想(0件)

別に何をしてくるわけでもなく、どこが怖いって「動き方がなんか怖い」としか言いようがない幽霊ですがw、この幽霊さん、海外のホラー映画ファンにも大人気のようで、たとえば以下の動画のコメントを見ても、「これこそ映画史上最恐の幽霊だ!」という絶賛の声が溢れていますね。凄い人気!

↓これがその幽霊の登場シーン。怖いものが苦手な方は閲覧注意

それにしても、日本語でも適切な形容詞が見つからないこの幽霊さんの「へんな動き方」w、英語圏の方々も表現に困っているようでちょっと面白い。

たとえば、

「この女幽霊はSwoop downしたのだ!」と説明している人がいました。この幽霊の動作を表現するにあたり言いたいことはわかる。ふわっと舞う感じが、ですね。ふわっとした。

ひどい英語表現をしている人もいました。「この幽霊はtripしたのだ」、つまり「躓いたのだ」としている方がいました。もっともこの人は案の定、他のコメントで「fool!」「idiot!」とボロクソに批判されています。そりゃそうですね、あの幽霊は躓いたわけではありません。このシーンはコントじゃないんだから。。。

Unheimlichという形容を当てている人もいました。これはちょっと面白い。「不気味な」と言いたいわけですが、これはドイツ語が語源ですね。で、このUnheimlichは、フロイト学派が使う「不気味なもの一般」という精神学用語でもあります。この幽霊さんを表現するのにフロイトの用語を当ててくるとはなかなかの言語使いとみた!

もうひとつ面白いのが、スラングだらけの「I get goosebumps and this strange feeling in my stomach」という感想。「鳥肌モノである上に胃袋にゾクゾクくる」という感じかな。言葉の意味はよくわかりませんが、なんとなく伝わってきますw

さて私の感想としては、これほどcreepyという形容詞が当てはまる幽霊もなかなかいないだろう、というところでしょうか。scaryというよりもfrighteningというよりも、このシーンはcreepyと呼ぶのがふさわしい。というわけで黒沢清の『回路』に出てくるこの幽霊さんこそ、

The creepiest ghost I have ever seen!

と思っております。

※なお、この幽霊を演じたのは前衛舞踏のダンサーさんだそうです。あの動き方、、、なるほど!


「トラウマ映画」TOPへ戻る