『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章レビュー【第09回(ノック/体育館/他…)】

放送第9回について

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本ブログにおける『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章(=第1シーズン)の怪談レビューも、

これまで順調に、放送第一回から第八回までをまとめてきましたが、

いかがでしょう、世に「怪談」と呼ばれるものは多々ありますし、

趣深いハナシ、ひねりの効いたハナシ、じわじわと後味の怖いハナシ、ほんとうに多彩ですが、

・・・やはりたまには、ホラー映画のように、モンスター的なヤツがグゴゴゴゴゴドドーンと豪快に追いかけてくる怪談というものを、聴きたくなりませんか?

そんな方には、

お待たせしました!放送第九回の怪談レビューです!

今回のゲスト怪談師さんは、

ふたたび登場、ぁみさんと、

こちらも早くも再登場、宇津呂鹿太郎さんです!

そして、この放送第九回で、ぁみさんが披露する「体育館」という怪談では、

まこと、『怪談のシーハナ聞かせてよ』番組史上に名を残すべきインパクトの、

ハリウッド映画に出てくるような強烈なモンスター系の怪異が迫ってきますぞ!

それでは、放送第九回の怪談を、ひとつひとつ、レビューしていきましょう!

弾ける(紙舞さん)

macro shot photography of taxi lamp
Photo by NEOSiAM 2021 on Pexels.com

このハナシ、一見すると、よくあるタクシーの都市伝説、

お客さんとして乗せた方が、目的地に着くと消えている!

・・・というパターンそのままか、と思わせてくるのですが、

ところが、この怪談は、後半になると様子が変わってくるのです。

つまり幽霊(と思われるものが)が運転手に話しかけて、みずから、都市伝説の「パターンやぶり」をやってくるんです。

運転手さんに向かって、「私、降りた方がいいですか?」ときいてくる、という意外な展開になります。

幽霊のほうも、既存の都市伝説を「知って」いて、

「そのパターンどおりなので、運転手さん、怖いでしょう?」

と気を使ってくる、という面白い構造になっています。

なんだか、メタ構造みたいなことがありますね。

でも、不思議なことに、実話怪談というものも洗練されてくると、このような「幽霊のほうも、世間で既によく知られている怪談のパターンを承知している(と思われる)発言をしてくる」怪談が、登場するものなのです!

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ノック(宇津呂鹿太郎さん)

オチを語るとネタバレになってしまうので、それはやめておくのですが、

なんともかわいらしい、チャーミングな怪談で、私は大好きです!

まぁ、いってみれば、広い意味での動物怪談となりますでしょうか、

友だちの家に行って、テレビゲームで遊んでいると、誰かが外から窓をたたき・・・

てっきり、窓の外に怖いものがいるのか、と思われておいて、

行ってみたら、ビックリ、

向こうもビックリw

するという、愛くるしい怪談でございました。

なんとも『怪談のシーハナ聞かせてよ』史上でも珍しい後味、心がホッコリする怪談なのです!

あっしは、このハナシ、大好きなんですよ!怪談といえば怪談なんですが・・・なんだか宮沢賢治童話みたいな雰囲気がありますよね!

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体育館(ぁみさん)

barbell on the floor
Photo by Leon Ardho on Pexels.com

きましたねー!私がイチオシの怪談!

しかもこの「体育館」という怪談は、なんとも打ち出しのよい怪物が迫ってくるモンスター怪談なのでございます!

そのモンスターというのも、実に禍々しくて、

実にしつこくて、

形態的には、映画『IT/それが見えたら終わり』と、続編の『IT/THE END』に出てくるベティの幽霊に似ております。

そうですね、この『体育館』という怪談、

ハリウッドのホラー映画にでもありそうな、迫力系のモンスター譚でもあります。

めちゃくちゃ思いつきの宣伝となりますが、

私、『IT(イット)』というハリウッドのホラー映画について、詳細なファンブックを作ってAMAZONで販売しております、こちらで販売なのでこちら、興味のある方はぜひ!

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手首(宇津呂鹿太郎さん)

white and black desk beside bed and window
Photo by Medhat Ayad on Pexels.com

この怪談は、シチュエーションとしては、

学生さんが、はじめての一人暮らしをすることになった、その部屋での怪異というパターン。

「家庭の方針として、お前も高校生になったら一人暮らしをせいや」と実家からたたき出されるという始まり方ですが、これ自体がもはやフラグですよね・・・

はじめての一人暮らしの時、物件選びは慎重にやりましょうね!

この怪談に登場する物件は、起こる怪異の深刻さにおいても、

部屋の中に隠されていた「ある」アイテムの禍々しさという点においても、

ぜったいに住みたくない物件、と言えそうですが、

さらにおそろしいことと言えるのが、

ラストに、町の中で目撃した光景から推察すると・・・怪異の原因は、幽霊じゃなかった可能性があるんです!

あの怪異現象を引き起こしていたのが、ぜんぶ人間のせいだったとすると・・・そのほうが幽霊なんかよりも遥かに怖いですよね・・・

純粋に犯罪に巻き込まれかけていたことになっちゃう・・・!!

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温泉旅館の露天風呂(ぁみさん)

hotspring river
Photo by Thor Olason on Pexels.com

ふーん、ふん、ふん、ふんふんふん♪
ふん、ふふふん・・・のなぁかの、とぉぉりぃぃはぁぁ!

・・・と、ぁみさんが迫ってくるように歌いかけてくる、

その語り口がめちゃくちゃ怖くて、臨場感にまみれる、

こちらもまた、傑作怪談でございます!

概して、日本の風物詩である「温泉旅館」というもの、

古い旅館となりますと、風雅なものでありつつ、

いろいろ夜は怖かったりしますし、だいいち、

露天風呂に一人で入っている時というのは、完全に無防備ですからね。

そのときに、何か怪異が始まる、というのはめちゃくちゃ怖いものでございます。

しかも、この怪談、温泉旅館から家に帰ってきたあとも、恐怖が終わってくれないのです・・・

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帰りの車中で(せきぐちあいみさん)

この頃の『怪談のシーハナ聞かせてよ』で行われていた、

アシスタントさんによる、「怪談語り」へのチャレンジシリーズ、

「私たちのシーハナも聞いてよ」の、せきぐちあいみさんリベンジ回となります。

でも正直なところ、二回目にして、

着実に上手になってますよね・・・!

しかし、あいかわらず、怪談社のお二人からのフィードバックは、視聴者にもタメになるハナシばかりですよね

中華料理屋のワンさんってのは、いらないんじゃないですかね?」というアドバイスは、

せきぐちあいみさんにはグサッときたろうが、なるほど!なポイントでした・・・

たしかに・・・私もこれを最初に聞いたとき、「ワンさん」ってキャラが何か伏線で、あとから出てくるのかと思い込んじゃいましたから・・・w

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まとめ

放送第九回のまとめとしては、

やはり、『体育館」がよかった!

そして、また、この頃の『シーハナ』でやっていた、「私たちのシーハナもきいてよ」に対する、怪談社のお二人からのフィードバックが、

怪談を語るため、というよりも、

人に向けて何か話をするとき、あるいは、プレゼンをするときのコツとして、

純粋に、ためになるオハナシが多く、社会人の勉強にも役立つ放送回だな、と思ったのでした。

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『怪談のシーハナ聞かせてよ。第壱章』全333怪談リストに戻る


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『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章レビュー【第02回(合宿/アタックザック/他…)】

landscape photography of mountains covered in snow

放送第2回について

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それでは『怪談のシーハナ聞かせてよ。』放送第2回のレビューを始めましょう!

今回のゲスト怪談師は安曇潤平さんと宇津呂鹿太郎さん

第一回のゲストもいきなり凄かったですが、

第二回もまた、強力コンビをぶつけてきましたね、

この番組の出し惜しみのなさ、

さすがです!

特に私は安曇潤平さんには注目!

もともと「山の怪談」ってのは本当にヤバい話ばかりですが・・・

安曇潤平さんの持ってくるネタはとりわけ爆弾級の怖さのものばかり

そうです、「山の怪談」は別格なのでござんすよ。山をナメてはいけない。

もう一人の宇津呂鹿太郎さんは、こちらはこちらで、この後『怪談のシーハナ』に欠かせない「準レギュラー」クラスの一人になっていくお方です。

それでは、この放送回で語られた怪談、ひとつひとつ見ていきましょう

合宿(紙舞さん)

string lights hanged on bed frame
Photo by Tan Danh on Pexels.com

紙舞さんの奇声「イイイイイイイイ!」の不意打ちにびっくりさせられた怪談

紙舞さんのスタンスとして、「いきなり声を出して驚かす怪談は違うと思う」みたいな雰囲気をいつも出しておりますが、

たまーにこうやってぶっこんでくるのでw、

真の意味で不意打ちになります。心臓に悪いことこのうえないですタイ、オラ本気でびっくらこいた、、、。

ですが、この怪談の放送でいちばん面白いところは・・・!

怪談が終わった後のトークパートで、狩野英孝さんが、アシスタントのせきぐちあいみさんを驚かそうとして「イイイイイ」と真似してみせたとき、

一瞬だけですが、紙舞さんもびくっと体が反応しているように見える、ところなのです!

ちょっとだけですが、きっとこれ、びっくりしてますよね?紙舞さん?違うかなどうかな、、、?

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アタックザック(安曇潤平さん)

man standing on cliff
Photo by Kasuma on Pexels.com

神回キターーーー!

怖い怖い怖い怖い!

このハナシはめちゃくちゃ怖い!!

いいですねー!安曇潤平さん。待っておりましたよ、かような、ガチで怖い山の怪談を!

『怪談のシーハナ聞かせてよ。』放送第二回目で、さっそくこのような、超弩級の怖さの怪談が叩き込まれるあたり、

この番組は本当に凄い。

繰り返しになりますが、

やはり「山の怪談」というのは、日本怪談の中でも別格だと思います。

こういうとんでもなく不穏な話が出てくるのも、やはり、山という場所の力かと。

そういえば・・・吉本隆明さんが宮沢賢治論の中で「山の怪談が特別に怖いのは当然だ、そもそも日本の怪談というものは山の怪談から生まれて派生してきたものなのだ」という意味のことを書いていたことがありますが、

なるほど、そういうことかもしれませんね。

何をおいても、安曇潤平さんの、静かで、しかし重い語り方も、たまりません。

「ヤット見ツケタヨ・・・」のところとか

ヤバいすねこのハナシ、、、!

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白い手(宇津呂鹿太郎さん)

white and red house surrounded by trees at night
Photo by eberhard grossgasteiger on Pexels.com

これはあくまでも、この第2回の構成上の話にすぎないんですが、

安曇さんの後に宇津呂さんが来ると、なんか、めちゃくちゃ安心しますw

というのも、

宇津呂さんが投入してくるのも、こちらも怖い話には違いない筈なのに、

あったかい関西弁の語りがどこか癒し系で、たまらないのです

この『白い手』という怪談に出てきたモノは、

幽霊というよりは、家に憑いている妖怪?の類なのかなあ、と推測しました。悪意とか攻撃性とかは、なさそうな、たぶん

なお、この怪談ですが、この後放送30回の『彼女の実家』でも、この怪談にとても似た構図が、上間月貴さんから出てくることとなります。つまり、「彼女の実家に行ってみたら、怪異に遭遇するけど、相手のご実家では『ああ。あれね。この家では普通だよ?』みたいに扱われる」ってパターン。

「彼女の家に何かが憑いている」は、現代怪談の1パターンなのかもしれません。

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ゾンデ(安曇潤平さん)

landscape photography of mountains covered in snow
Photo by eberhard grossgasteiger on Pexels.com

紛れもなくこの回は神回だーーー!

安曇潤平さん二連発の、

超弩級破壊力の「山の怪談」となります。

これも怖い怖い怖い怖い!

この回の安曇潤平さんは絶好調ですね!!

最後に、「おそらく、怪異の正体が見えたら、あの人の顔なんだろうな?」と聴き手に思わせておいて・・・

実は予想外のオチ

に向かうあたりも、まこと、実話怪談ならではの置いてけぼり感!

ちなみに、アシスタントのせきぐちあいみさんはこの怪談のインパクトが相当強かったようで

、後の放送回で「アシスタントが選ぶ傑作怪談」というコンセプトの際に、これを選んでいましたね

たしかにせきぐちさん、のめりこむように聴いておりましたね

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依頼(宇津呂鹿太郎さん)

close up photography of concrete tombstones
Photo by Mike B on Pexels.com

奇妙奇天烈、摩訶不思議!

時空が歪んだのか?タイムスリップが起こったのか?

何かSF的なとんでもないことが起こった、とでもいうのか、、、?

なんだか『トワイライトゾーン』とか『世にも奇妙な物語』とかに出て来そうな不条理な話ですが、

こういうものが実話怪談師の方々が取材していると集まってくるというのだから、現代日本も、わからないことだらけと、いいますか。

なお、私個人は、幽霊とか妖怪が出てくるハナシよりも、

このような「あれ?時空間が何かおかしくなったのか?」と戸惑うような、

世界感覚の喪失パターン、

あるいは並行世界パターンの怪談が、

大好物でございます!

安曇潤平さんの後に、宇津呂鹿太郎さんが登場して、「幽霊ではない」系統の怪談を披露してくれるって。この第2回はバランスとれてます。

はやくも、第一シーズン(第壱章)の神回のひとつですよね

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まとめ

前回の放送第1回では、朱雀門出さんに「あなた自身は幽霊を信じているのか」の話が振られたわけですが、

今回は、安曇潤平さんに対して、「あなた自身は幽霊を信じているのか」という質問が出ます。

そこでの安曇潤平さんの回答が、もはや、怪談を愛する人必聴の見解と思います。

こういう深い話が聴けるのも、『怪談のシーハナ』のたまらない魅力ですね。

そして、もうひとつ、この放送回については指摘したいことが!

せきぐちあいみさんの「妄想タイム」!なんと、この第2回から、始まっていたんですね!!

視聴者としても、最初は「???」だったが・・・だんだんこれも、第一シーズンの「顔」として、ないと寂しいコンテンツとして認知されていくのですから、不思議なものです。

さて、以下の次回記事では、放送第三回、郷内心瞳が「怪談を語ろうとしたら身体に霊障らしき異常が、、、」と訴えてくる、こわーい事件が起こる回をレビューします!

↓↓↓

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『怪談のシーハナ聞かせてよ。第壱章』全333怪談リストに戻る


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

データで読む『怪談のシーハナ聞かせてよ。』:体験者の名前で「Mさん・Iさん・Kさん」が上位に来るのはナゼ?

前回の記事(≫一番よく使われている体験者の名前は、Aさん?Bさん?Cさん?)では、『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第1シーズン放送の全333怪談から、どんな名前が「体験者の名前」として好まれて使われているかを分析してみました。

その結果、「聴き手に邪魔にならない」Aさんが上位に来たのは予想通りでしたが、Mさん・Iさん・Kさんが上位の頻度で使われていることがわかり、この理由は何だろう?ということを宿題にさせていただきました。

で、こちらの件ですが、その後MさんKさんIさんが登場した回を深掘りしてみたところ、

あっけなく、理由がわかりました!

Mさん、Iさん、Kさんが登場した怪談を集めて、話者である怪談師さん単位で割ってみたところ、以下のような結果になりました。

『怪談のシーハナ聞かせてよ。』において最も怪談を語る機会の多い(※毎回、最低でもひとつは披露しているわけですからね・・・)上間月貴さんが、特定のアルファベットに寄らないように、複数のアルファベットに「散らしている」工夫をしているように見えます。つまりナゾの分散の理由はほとんど上間さん一人の影響でした!

もう少し詳しく見るために、上間月貴さんが使った「名前」と、そのばらつきをみてみましょう。

アルファベット26文字以内17文字まで活用して分散しています。この中で上間さんが特に採用しがちなのがIさんKさんMさんという次第でした。

他にも、登場回数が多い方は、なんとなく似たような分散になってくるようで、

登場回数が増えた怪談師さんほど、最初のほうはAさんを比較的使いつつ、しだいに同じアルファベットの反復を避けるようになる。その際、H・I・J・K・L・M・Nあたりのアルファベットが確率的にやけに狙われる、という傾向が掴めました。

それにしても、宇津呂さんも高田さんも「Mさん」と「Nさん」になんとなく引き寄せられているのは何なのでしょうね?偶然なのでしょうか?このあたりのアルファベットが選ばれやすい何かセオリーがあるんでしょうか???

この調査をしていて、別の面白い発見があったので、それも以下に記載します。

今仁さんのケースをぜひ見ていただきたい。3回だけ「Aさん」を使っているものの、その他はアルファベットに頼らず、毎回、仮の名前とはいえ、固有名を割り振ってあげているんですね。これはシーズンを通じて集計してみないと気づかなかった、今仁さんの見えないところでの工夫と言えるのでは?!

似た工夫をされている方をもう一人、見つけました。

城谷歩さんです。こちらも、アルファベットよりも、固有名の割り振りで語ることを好んでいらっしゃいます。それにしても、狩野英孝さんが司会をされている番組で、「カノウさん、という体験者さんから聞いたオハナシです」と始めた時はちょっと笑いました!狩野さんもこの時は苦笑してましたね。

さて、この結果を見て、いかがでしょう。あなたが次に人前で怪談を語る時は、無記号的「アルファベット」派でいきますか?それとも、何らかの固有名を逐一、割り振ってあげますか?最終的にはこれは好みの話になるので、お気に入りの怪談師さんの語りを研究しながら、ご自身の「喋るときのセオリー」をぜひ、作って行っていただければと思います!


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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データで読む『怪談のシーハナ聞かせてよ。』:一番よく使われている体験者の名前は、Aさん?Bさん?Cさん?

実話怪談というものは、おおよそ、以下のような始まり方をしますよね。

「これはあんまりハッキリとした場所は言えないんで、兵庫県とだけ、言っておきます。Aさんというね、石材屋さんの体験なんですよ。今から十七、八年前ゆうことでしたね・・・」(※宇津呂鹿太郎さん『依頼』の冒頭より引用)

「マニアックな話ですいませんが、ノコギリクワガタというクワガタがいます(中略)。私の友だちにBさんという中年の男性がいまして、近くに住んでいるんですけどね、彼の息子が、クワガタが好きで・・・」(※戸神重明さん『バリカン大発生』の冒頭より引用)

このように、体験者の名前を「Aさん」とか「Bさん」といった仮の名前にして語るのが、実話怪談の最近の定型。

で、少し気になってきたこと。

たとえば『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第1シーズンの全333怪談から「体験者の名前」を抽出して、どんな名前が多くの怪談師さんに好んで使用されているかの傾向を出してみたら、結果はどうなるでしょう!?

個人的な予測としては、「Aさんが筆頭に来るのではないか!?」というもの。

というのも、怪談師さんというのはまず「伝わりやすい語り方」を研究されている方々やので、できるだけ聴き手の邪魔にならない、無個性な仮名を好むのではないでしょうか?

となると、アルファベットの第1番目に出てくる「A」が、最も好まれて使われているハズ

この仮説が正しいか、以下の方法で検証してみました!

・第一シーズンの全333話から、「体験者の名前」を抽出する

・抽出した名前で、「さん」「くん」「ちゃん」「子さん」の表記ゆれは、すべて「さん」に統一する(例「Aくん」や「A子さん」は、「Aさん」に正規表現で統合する)

・怪談師さんご自身の体験談を語っているハナシは、「自身の体験談」という名称を振る

・上記の前処理を施したものを棒グラフに描画する

その結果が、以下となりました(上位10位までを描画)。

「自身の体験談」が、333話中45話を占める(13.51%)というのは、それはそれで、ひとつの発見でした。怪談師さんご自身の持ち込み体験談が『怪談のシーハナ』のひとつの核をなしております(※もっとも、この13.51%を「意外に多い」とみるか「意外に少ない」と見るかは、その人の「実話怪談」へのイメージで違ってくるところかもしれません)。

次点には、おお、予想通りに「Aさん」が来ました!全体の11.71%が「Aさん」です

その理由としては、私が考えたように、「ハナシを聴き手に分かりやすくするための配慮として、無機質な記号”A”がいちばん好まれる」からではないか、と思いますが、いかがでしょうか?

となると・・・問題となるのは、3位以下

無機質なアルファベットであるところの「Bさん」や「Cさん」が上位に来るのかと思いきや、「Mさん」「Kさん」「Iさん」が好まれているのはなんなのでしょう?!

日本人の名字で多いのは、佐藤さん・鈴木さん・高橋さんです。Iに該当しそうな「伊藤さん」や、Kに該当しそうな「加藤さん」は、日本人の名字上位10位にかろうじて入っている程度。Mで始まる名字である松本さんや前田さんがその他を押しのけて3位に来ているとも、どうにも私には思えない!

これはなんなのでしょう?「Mさん」「Kさん」「Iさん」が、語りの上で発音しやすい等、実話怪談で選好されやすい何かがあるのでしょうか?

これはナゾで、今の私には回答が見いだせておりません・・・。(※後日注:このナゾは別の切り口で分析をしていた時に解けました!右の記事を参照ください≫体験者の名前で「Mさん・Iさん・Kさん」が上位に来るのはナゼ?

だがひとつ、言えることがある。自身も怪談を語ってみたい、となったとき、冒険しないなら、やはり「Aさん」を使うのが妥当かと!あえて「Mさん」「Kさん」「Iさん」を使うと、ちょっと通っぽくなる・・・かもしれない・・・!

全データを以下に貼り付けておきます。下のほうは、かなり細かい職業名や出身名を当てられているケースが多くなりますね。ちなみに「熊谷の女子大生」は、かの暗黒怪談「紐引き女」の回ですね・・・あれ聞いたら新幹線で熊谷を通るたびに紐引き女のことしか思い出せなくなってしまいました・・・。

行ラベル個数 / 体験者百分率
自身の体験談4513.51%
Aさん3911.71%
Mさん195.71%
Kさん144.20%
Iさん133.90%
Cさん113.30%
Nさん103.00%
Yさん82.40%
Bさん72.10%
Sさん72.10%
Uさん61.80%
Hさん51.50%
Fさん41.20%
Rさん41.20%
Tさん41.20%
ケイコさん41.20%
Eさん30.90%
Oさん30.90%
Wさん30.90%
ある男性30.90%
タカハシさん30.90%
知人の体験30.90%
本人の取材30.90%
友人30.90%
Dさん20.60%
Jさん20.60%
あるサラリーマン20.60%
ある大学生20.60%
イシカワさん20.60%
お母さん20.60%
カズキさん20.60%
カナさん20.60%
サクラダさん20.60%
セイカちゃん20.60%
小学生20.60%
知人の女性20.60%
ササキさん20.60%
(怪談師さんの)ファン10.30%
35歳男性10.30%
40代男性10.30%
N実10.30%
アーウェン10.30%
アリサカさん10.30%
あるおじいさん10.30%
あるバスガイドさん10.30%
あるバンドのドラマー10.30%
ある主婦10.30%
ある主婦の方10.30%
ある女性10.30%
ある新婚の夫婦10.30%
ある人10.30%
ある男の子10.30%
アンノくん10.30%
エリさん10.30%
オオサワくん10.30%
オサムさん10.30%
カノウさん10.30%
ケンちゃん10.30%
サトウさん10.30%
サトシ10.30%
シンジさん10.30%
セキグチさん10.30%
タクシー運転手10.30%
たけしさん10.30%
タナベさん10.30%
タンジエさん10.30%
ナカジマさん10.30%
ナツキさん10.30%
ニシヤマさん10.30%
ノリコさん10.30%
の体験談10.30%
ひろさん10.30%
ポールダンサー10.30%
マイコさん10.30%
マエダさん10.30%
マスダさん10.30%
マナミさん10.30%
まみこさん10.30%
まゆこさん10.30%
マリさん10.30%
ミキさん10.30%
ミサキさん10.30%
ヤマモトさん10.30%
ユキヤさん10.30%
ヨシカワさん10.30%
ヨシミさん10.30%
リエさん10.30%
リカさん10.30%
沖縄に住んでいた男性10.30%
会社の後輩10.30%
怪談イベントに来ていた客10.30%
怪談バーのお客さん10.30%
看護師の妻10.30%
吉村智樹さんの取材したハナシ10.30%
熊谷に住む女子大生の話(を聞いた親戚のおじさんの話)10.30%
山形の女性10.30%
社長さん10.30%
須藤為五郎さん10.30%
声優10.30%
先輩芸人の知人10.30%
祖父10.30%
祖母10.30%
大学のときの先輩10.30%
大阪の知人10.30%
知り合いの人10.30%
知り合いの漫画家10.30%
知人10.30%
知人のバーテンダー10.30%
田中さん10.30%
登山家田中さん10.30%
都内に住む女性10.30%
同級生10.30%
同年代の男性10.30%
独身の男性の方10.30%
舞さん10.30%
妹さん10.30%
友人の従姉妹10.30%
由美さん10.30%
林さん10.30%
麓にある宿の主人10.30%

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さまざまな切り口からのベスト怪談集:「異次元系」の名作怪談10選

私個人の好みの怪談パターンとして。

現代実話怪談でいちばん面白いのは、幽霊モノでもヒトコワでもなく、私が「異次元系怪談」と呼んでいるもの。

それは「パラレルワールド」とか「タイムスリップ」とか、あるいは「記憶の書き換え」を疑わせるようなフシギ系。『トワイライトゾーン』やら『世にも奇妙な物語』といった作品に登場しそうな不可解なオハナシ。

量子の異常なのか、時空の異常なのか、はたまた人間の脳のフシギな暴走がもたらした高度な幻覚だったのか?「科学的にも、なんとか説明がつきそう・・・な気がする」寸止めの「異次元系怪談」は、そういう意味で、特に私のようなSF系ホラーが好きな人間の興味関心を、今日も強くそそる怪談たちなのです!

第十二回で登場した『ニュース』は、私のいう「異次元系怪談」の代表例として提示したい怪談。けっきょく何が起こっていたのか、さっぱりわからない。誰が悪いとも、誰がおかしいとも、判然としない。わかっているのは、わずかな間、体験者がトイレに行っている間にだけ、世界が少し、変わっていたらしい、ということだけなのです。

第三十三回の『決まりごと』も忘れがたい。これは話を聞いている最初は心霊系怪異と思いきや、実は時間ループ系(かもしれない)という解釈を残すオチに持ち込まれるもの。そしてもし、「あれ」が時間のループによって見えていたものだったとするならば、体験者さんの運命はおぞましいほど救いがない!まだ第三者の幽霊のせいだったほうがマシだった!?

第二十八回の『インターホン』は、これまた幽霊のシワザなのかなんなのか、混乱させてくるハナシ。私としては、幽霊の類というよりも、何らかの並行世界(曖昧な言い方ですいませんが!!)の存在を感じさせる不思議譚と思ったのですが、いかがでしょう?

第十九回にて洋介犬さんが放った異様きわまる怪談『円盤』。UFOもの、といえば、UFOものなのですが、それで済ますわけにはいかないキミョウキテレツさがたまりません。そして、恐ろしいことをひとつだけ、言ってしまっていいでしょうか?見間違いかと思いますが、私も子供の頃、このハナシに出てきた「ヒトデっぽいなにか」の描写とやけによく似たものを一度見ているんですよね・・・いや見間違いとは思いますよ・・・でも、こうも、怪談師さんが語る別の方の体験談と符号している「ように見える」のは、なんか・・・しこりとして・・・のこりますよね・・・ヒヒヒ。

場所は伏せられているものの、兵庫県のどこかで起きたハナシということだけわかっている、宇津呂鹿太郎さんの『依頼』。まさにこのままトワイライトゾーンや世にも奇妙な物語に登場してもよいような、異次元系の摩訶不思議なエピソード。掛け軸がキーアイテムとなって、時間ないし空間が歪んだ(これまた曖昧な言葉で失敬!!)としか思えない。

百物語スペシャル第四話目で丸山正也さんが披露したのが、干していた洗濯物に見知らぬ人の洗濯物が混じっていた、というところから始まる怪異。単に誰か近所の洗濯物が間違って紛れたのかしら?と思っていたら、事態は意外な展開を見せます。人間の無意識のなせるイタズラだったのか、それとも本当に時間が歪んだのか?

百物語スペシャル第三十三話目にて星川慶子さんが話した、田舎のホテル宿泊時の怪体験のハナシもまた、私の言うところの「異次元系」の典型といえます。これまた実にヘンテコなハナシ。ただし、テレビドラマと違って、落ち着いて対処したらあっけなく怪現象が収まってしまうという、「何か悪意があるもののシワザというわけでもなかったらしい」おいてけぼり感が、実話怪談ならではの後味。

放送第五十四回で、アシスタントの高田のぞみさんが、番組卒業のタイミングで語ってくれたご自身のモチネタが『青いジャンパー』。高田さんが第壱章の最終回にこんな隠し玉を持ってきたとは!これは凄いハナシ。まさに異次元系ですが、子供たちの世界が舞台ということで、なんとなく物悲しくもある。名怪談!

地味ながらも「異次元怪談の典型」としてもうひとつ忘れがたいのが、百物語スペシャル第三十八話での、狩野英孝さんのハナシ。本人は「こんなのも怪談として、いいんでしょうか?と迷いながら持ってきたネタです」という意味のことを仰っていますが、いやいや、実にいい怪談じゃないですか!確実に異様な現象が起こり、弟とお父様とさんざんその話をしたはずなのに、ある日を境に、ケロリと、自分以外の家族全員がそのことを忘れてしまった、というオハナシ。自分だけが覚えていて、他の家族はみんな「なんだっけその話?」と冷たく反応してくるのは、狩野さんご自身がおっしゃるとおり、「実話怪談あるある」ですよね。ありますよね、でも、なんなのでしょうね、この系統のハナシ。

最後に、第五十三回で国沢一誠さんが話した『Siriにまつわる話』。最新テクノロジーがもらたす不可解な事件、というわけですが、それにしても「電話」というものが登場したら大量に「電話怪談」が生まれ、テレビというものが登場したら大量に「テレビ怪談」が生まれたように、意外なことに怪談とテクノロジーはいつも親和性が高いものなのです。たしかに、言われてみると、Siriってなんか、ブキミなモノですよね・・・!

総評として、この「きりくち」を扱っている中で、私は「無意識のイタズラ」という言い方をしましたが、存外、これが私の「怪談」に対する態度のすべてを物語っているかもしれません。実は私は幽霊というものを信じてはおりません。ただし、「怪談」というものがウソだと思っているわけでもなく、おそらくそれは、迂闊な言い方になるかもしれませんが、どちらかといえば人間の「無意識」とか「深層心理世界」とか「潜在脳力」といったものの可能性にかかわる、ナニカなのではないか、と。

本当にナゾめいた怪談は、私たちが「自分の意識はこういうもので、現実はこう見えるもの」と安住している日々の「世界の見え方」に、突然、穴を開ける

それが、世界の側で何かが起こっているのか、脳の中で何かが起こっているのかは、禅問答みたいな話になり、ぶっちゃけ、どちらでもよろしい。

そうした「安住している世界の見え方」に、ぬらりとした穴が開く感覚、これを楽しみに、私は怪談を聞いているところがあります

そして、そんな私にとって、「異次元系」とここで整理したような怪談はまさに、「安住している世界の見え方」に穴を穿つ最高の事例たちなのでした!

※次回はいささか番外編となりますが、本篇の怪談以外で語られた、トークの中でのちょっとした怪談で、むしろ怖かったもの3編を紹介させていただきます!


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

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