【第072夜】おぼろ車

brown wooden wheel on top of green grass
brown wooden wheel on top of green grass
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ある父子が散歩中、草に埋もれている歯車を見つけた。
近づくと歯車がクルリとこちらに向き直る。そこには鬼のような恐ろしい顔が!その「顔つき」歯車は走り去って行った。
子「鬼太郎で見たことがあるよ、あれは妖怪おぼろぐるまだよ!」
父「だとすれば近代的な装置に進化し始めてやがる!」

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なんとなんと!『ゲゲゲの鬼太郎』の敵キャラの位置付けで有名な妖怪、おぼろ車の登場ですね!

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もとがメカメカしい妖怪じゃからな、SF風味にしおったわけじゃな

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のちにこのブログ管理人のお家芸となる「妖怪呟怖」、この頃から始まったんですねー

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でも、ぶっちゃけ、荒削りで、ヒネリがない。妖怪ネタを使いこなす道もまだまだじゃのう。という戒めを含めて、採点は、1点じゃ!

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私の呟怖活動についてTwitterでアンケートをとってみました!今後に活かします

長らくシリーズ化して出題し続けてきた、私の「妖怪呟怖」のお題提供。

最近、マンネリしているのではないかな、、、と心配になり、Twitterで、「このまま日本妖怪でお題を出し続けてほしいか」「海外妖怪(妖精とか幻獣とか)を出してほしいか」「そろそろ妖怪以外のお題を出してほしいか」アンケートを取ってみました。

結果は、以下の通り。

なるほど、やはり日本妖怪のお題を継続することを望まれているのかな、、、と思いつつ、よく見たら、二番手の「海外モノを出せ」も無視できない割合ですね!

というわけで、私としてはこのアンケート結果を、こう解釈しました!↓

今後は、日本妖怪シリーズを更に続けつつも、たまに、「海外妖怪(厳密には変な言い方だけど、いわゆる西洋の妖精や幻獣)」も交えて、出していきます!

【第032夜】座敷童子的な何か

view of building exterior
view of building exterior
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ずっと座敷童子に来てほしいと願っていた男の枕元におかっぱ頭の子供が現れた。

やっと会えた!

と思ったとき、

それは「お前さんそんなに座敷童子に会いたがってたわりには目がないね。本物にあったときどうやって見分けるつもりだったんだい?」と、

一瞬で恐ろしい形相に変わって煙のように消えた

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ありゃ、これは、なかなかいいのう!

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座敷童子かと思ったら、座敷童子に似た姿をしている何か恐ろしいベツモノが脅かしにきていた模様ってわけですね

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「座敷童子でないとしたらなんなのだ?」って、ちょっとゾゾッとしたぞ。いまいち情景が分かりにくいところが難点じゃが、これは、まあまあじゃないか?採点は30点くらいかな

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おお!100点満点中のたかだか30点とはいえ、ひさびさのフタケタ得点ですね!

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【第023夜】置きっぱなしの傘のこと

店長「誰だ、ここに傘を置き放しにしたのは!」

客「ああ、すいません。うちのペットです!犬以外のペットなら構わないかなと思ってしまって、、、すぐ連れ帰りますね!」

店長「え?ペット?」

傘からゲタのついた足がピョコンと飛び出し、客と仲良く帰っていきましたとさ

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ははは。トボけた感じじゃな

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これ、このブログの管理人自身が、「この置きっぱなしの傘の写真を使って創作怪談を作ってください」と、初めてtwitterでの「お題出し」の立場をやってみたとき、実例として出題者自身が出した創作怪談だそうです

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何じゃ?実例のつもりで作ったのか?だとしたら、点数は辛くせねばならないのう

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となると、採点は何点にしますか?

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お題出題者までやるというなら、ますます評価は厳しくなる、ということを味わうべきじゃ。評価は1点じゃ!

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『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章レビュー【第16回(都市伝説/ネコちゃん/他…)】

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放送第16回について

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この記事では、『怪談のシーハナ聞かせてよ』第壱章、放送第16回のレビューを行います

この放送第16回というのは、すなわち、

この番組の歴史で初めての『怪談社スペシャル』なのです!

上間月貴さんと糸柳寿昭さんのお二人の怪談をたっぷり聴ける時間として、『怪談社スペシャル』はこの後、定期シーズン企画となるわけですが、

今から振り返ればこの第16回がその「お初」でした!

それではさっそく、

この回に登場した怪談をひとつひとつ、見ていきましょう!

都市伝説(糸柳寿昭さん)

opened door
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考えてみれば、『怪談のシーハナ聞かせてよ』にて、

糸柳さん自らが怪談を語るのはこの回が初めてなんですよね!

そんな本怪談は、廃病院をめぐる、実に奇怪なオハナシ…

「有名な都市伝説によく似た話だな、、、と思わせておいて、途中からぜんぜん展開が違う」、というパターンですね!

そうなのです、

この怪談の体験者は、まことに有名な都市伝説「カルテを返してください」の筋書きをピッタリなぞった行動をとっていて、しかし、後半からおぞましい事件にリンクしていってしまうのです

最後に起きる陰惨な事故、これは実際、報道もされた事件とのですし、、、

それにしても、犠牲者の死に方の陰惨さは、『怪談のシーハナ』史上でも特筆モノじゃないですかね?

イタリアン・ホラー映画みたいな凄まじい猟奇性が

↓これとか、みたいな

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ネコちゃん(上間月貴さん)

black and white cat with tongue out
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ネコちゃん、、、

ネコちゃん、、、

ネコちゃんネコちゃんネコちゃんネコちゃん

という名前のとてつもなく変な女の子が暴れ狂うハナシ

、、、となると、当然、怪談の類型としては、

いわゆる「サイコな隣人」系のヒトコワかと思うのですが、

最後にひとつ、「腕」の怪異が起こるという奇妙なナゾが残ります、、、

最後に出てきた「腕」は、誰のものだったのか、そしてそれは、猫をめぐる事件とは、また何か別の原因がある怪異なのでしょうか?

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ゆうれい(糸柳寿昭さん)

shallow focus photography of railway during sunset
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陰惨さ、という点で、超絶な後味の悪さの怪談

ヤバすぎます、この怪談はほんとにヤバい

聴き終わって後悔するタイプでござんすよ

「お母さん」の心持ちを思ったら、とてもとても、いたたまれません。ということは後半の展開は、やはり、生き霊系と解釈すべきなのでしょうか??

まことに、この放送第16回ときたら。廃病院での惨殺やら、サイコ女子の悪趣味写真やら、そしてこの『ゆうれえ』の絶望感やらと、

手加減ナシのガチ怪談だらけ、それが怪談社スペシャル!

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刀(上間月貴さん)

photo of altar during daytime
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「甘い!」と言われるかもしれませんが、

それでも、こういう怪談を聴くと、

↓こんなふうに考えちゃいます、、、

日本の神様って、いいところありますねえ、

だって、

こうやって後日、御供物を持って謝りにいけば、意外と許してくれたりするじゃないですか。謝罪が通じるのは、いいなあって、、、

ああ、でも、そうねえ、

泣いても喚いても、お供えをしても謝っても、いっさい許してくれない「タタリ」の話というのも、日本怪談にはいくらでもあるので、

やはり、いちがいには言えませんかね、、、うむむ

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廃校(糸柳寿昭さん)

building windows with white wooden frames
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来ましたね、

怪談社スペシャルの、まさにこれが、クライマックス!

この怪談はネタバレがいっさいできませぬ。まだ聴いたことのない人はぜひ聴いてみて、怪談語りの妙を味わってほしいです!

あえてひとつ、気になることをコメントするならば、

赤いランドセルの女の子はなんだったんだろう?

ってことですね、、、

正体がさっぱりわからないチョイ登場の女の子だったが、たぶんあれも、怪異の側の仲間だったと思うし、、、そうなると、、、

ずううううっと、ついてきていた、ということ?!ヒャーーーー!!

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まとめ

放送第16回の全体感想?

ううむ、率直なところ、

この「怪談社スペシャル」に対して何か余計なコメントをしても畏れ多いばかり!

というわけで、これ以上のコメントは、あえて、いれないことにします、

つまり、もはや後は「ご自身でぜひ見て、体感してください」ってところになります

※以下のDVDで視聴可能となります!

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『怪談のシーハナ聞かせてよ。第壱章』全333怪談リストに戻る


※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。

【第011夜】立ち入り禁止の警告の向こうに

road closed signage
road closed signage
Photo by Travis Saylor on Pexels.com

私「すいません、立入禁止ってありますけど、この先には何があるんですか?」
警備員「あなたたちはもうここを通っちゃダメなんです。現世への道なのですから」
私「???・・・あ!そーゆーこと?!そうか、オレ、死んだのか、、、」

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ん?これはどういうことでしょう?

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つまりじゃな、サンチョ・パンサよ。「立ち入り禁止」とあるのは、この世へ戻るための通り道。つまり、この会話がなされているのは、あの世、ということじゃな

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あー。つまり、またしても「実は語り手は既に死んでいた」パターンですか

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そのうえ、なんか、よく考えないとわかりにくいじゃろ?

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わかりにくいですね

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というわけで、1点じゃ!

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私の妖怪観の教科書は『不安の種』です!

不安の種』というホラー漫画が大好きです。

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ともあれ「大好き」と言っているだけではつまらない。なぜ大好きなのか、考えてみました。

考えてみて、気づいたこと。

私が普段「私の考える妖怪とはこういうものだ!」と述べていること、つまり「私の妖怪観」の教科書的な本が『不安の種』なのではないかと。

「不安の種が妖怪漫画?あれはむしろ実話怪談漫画ではないか!」

と思われるでしょうが、まあ、聞いてください。

私は以前、『怪異の風景学』についての読書レビューで述べた通り、

・妖怪とは、もともとは姿も名前もない「現象」であった

・つまり、昔の人が自然中で生活している時に身体体験として感じる「ひざしが暑かった」「風が涼しかった」「蛙の声がうるさかった」等の体験の中に、「わけのわからない音が聞こえた」といったものが多々あった

・そういう体験は共同体の中で共有された(「俺も同じような不思議な音を聞いた」「あたしも聞いた」)

・いつのまにか、名前がつけられる(「あずきとぎ」とか「たたみならし」とか)

・名前がつけられると、キャラクター化する。物語の中に取り込まれる。それで人々は安心する

というようにして、現れ、継承されたものだと考えています。

このように考えると、今では「ぬりかべ」「あずきとぎ」「つるべおとし」等の名前をつけられキャラクター化されている妖怪も、最初は、「謎の音を聞いた」「謎の影を見た」という、身体的なゾゾゾ体験だった筈

そして、そのような、現代では失われていくような、「名前をつける前の、言語化がうまくできないゾゾゾ体験」を、とても見事に描写しているのが、『不安の種』だと思います。

この漫画に出てくる怪異は、どれも、正体がなんだかよくわからないままに終わる。

おそらく、歴史の中で「あずきとぎ」とか「ぬりかべ」とか名前をつけられ、安心印なキャラクター化された妖怪たちも、昔の人が最初に体験した時は、『不安の種』の漫画に出てくるような曖昧模糊としたゾゾゾ体験だったのでしょう。

それにしても、そんな『不安の種』という漫画の中に出てきた怪異に、

結局は「オチョナンさん」といった名前がつけられキャラクター化が始まっている(!)のは、それはそれでなんだかとても、面白い。

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怪異妖怪をめぐる冒険が『きみの体は何者か』に結びつくとき

「怪異」とか「妖怪」とか呼ばれるものとの付き合いはずいぶん長い。

そして深く掘れば掘るほど、気づいてくることがある。

私が「怪異」とか「妖怪」とかを通じて考えていた問題意識とは、実は「身体と言語」をめぐる問題意識だったのではないか、と。

奇妙な体験をする。怪異や妖怪の「実在」を信じるかどうかはあまり関係なく、何かを体験してしまった人は、身体に「きみのわるい感じ」が残る。その「きみのわるい感じ」は言語にして人に伝えることでようやく自分の中で位置づけられる。それが共同体の中で位置づけられると、今度は「○○とぎ」「○○おとし」「○○鬼」のような、名前がつく。それによる「きみのわるい感じ」の昇華と、または、「きみのわるい感じ」の残滓に、私は興味を持ってきた。

ということは、少なくとも私にとって、妖怪学の関連科学は言語学であったということになる!!

そんなことを考えていた最近。

伊藤亜紗さんの「きみの体は何者か」を読んだ。主に吃音の問題を中心に据えて、身体と言語の関係を扱った、少年少女向けのわかりやすい本だった。

吃音による、言いたいことと、それが言えないこととの「ズレ」の話は、けれども、吃音を持っていない人が「無意識にでもべらべら喋れてしまう」がゆえに気づいていないたくさんの問題を抽出する。

そして本書が示してくるように、「自由にべらべら喋ることができる」ほうが、はるかにフシギで、異常で、よくよく考えると、危険なことなのだ。

ともかく。

本書が主張する、「ズレへの注視」というテーゼに私としてもとことん賛成をしたい。

そして、冒頭でも述べたとおり、私が「怪異」とか「妖怪」とか呼んでアプローチをしていた対象とは、実は「身体と言語のズレ」に対するこだわりであったのかもしれないわけだから。

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『妖怪の日本地図・九州沖縄』が示した「妖怪の四グループ」分類に賛同します!

児童向けの本でしたが、とても参考になりました。

千葉幹夫さん粕谷亮美さん、そして石井勉さんによる『妖怪の日本地図・九州沖縄』(大月書店)です。

何が参考になったのか。

この本の序文が、素晴らしい。

厳密には、この本の序文で語られている、妖怪観とよび妖怪の分類が、とても納得できるものなのです。

まず、

夜道を歩いていると、後ろから足音が聞こえますが、ふりむいてもだれもいません。夜の山中、だれもいないはずの場所で大木が倒れる音がします。川から見たこともない手が出てきて、人を水中にひきこもうとします。このように、人にとってふしぎなものやおそろしいことに名前をつけたものが、妖怪のはじまりと考えられます。

『妖怪の日本地図・九州沖縄』(大月書店)

私もこの妖怪観に賛同します。

一点だけ私ごときから意見をさせてもらえるなら、三つ目の例、「川から見たこともない手が出てきて」のところ。それはもうすでに「できあがった妖怪変化」との遭遇になってる気がするので・・・「妖怪のはじまり」を語る例としてはふさわしくないようにも見える。「川に落ちて溺れかけた人が、なんだか見えない手に引っ張られたような気がすると助かった後に言います。これも妖怪のはじまりです」とするなら、とてもよくわかる!まあこれは私の瑣末な異論。

他にも、この短い序文は実に面白い。

上述の箇所に続いて、妖怪を以下の四グループに分類する考え方を述べているのです。すなわち、

・自然現象に対してのフシギから始まったもの

・動物に対してのフシギから始まったもの

・古くなった動画に魂が宿る、という信仰からきたもの

・古代において滅ぼされた地方の小国が由来となるもの

いちばん注目したのは最後のやつです!

明言はされていないですが、大和朝廷に滅ぼされた東北やら九州やら山陰やらのことですよね。これを子供向けの本の中で避けることなく説明しているのは、素晴らしい。

古代において滅ぼされた」勢力の妖怪化を語るならば、「ツチグモ」問題という実に奥行きある深みにハマるのでここではやめますが、

すっきりと整理された妖怪観が、子供向けの平易な文章の中でキチンと表現されていて、こちらの本、たいへんな共感を覚えました!

↓↓↓

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『となりのトトロ』の「ばあちゃん」は妖怪学の天才である!

※画像はジブリ公式サイトでの配布素材を使用しております

日本史上における妖怪学の先達の中で、私が完全にその学説に共感し、その立場を現代に継承しようとしている偉大な人物がいます。

となりのトトロの「ばあちゃん」です。

ところがこの妖怪学者の理論を体得するのは、たいへん難しい。

本人がいっさいの大学機関に身を置かず、在野に隠れて人生を過ごしたという特異な経歴である上に、

その思想をいっさい著作に残さず、口伝のみで周囲に語っていたからです。

よって私たちは、この天才的な妖怪学者の思想を、断片的に伝わるわずかな言説から、再構築するしかありません。

しかし、彼女の言葉は、妖怪理解という点で研ぎ澄まされた迫力を持っており、

わずかな断片でも十分に、後世の妖怪研究者の心を激しく震わせるのです。

一例を挙げましょう。

「ばあちゃん」が、妖怪ススワタリについて語ったとされる、以下の言葉です。

「こりゃ、ススワタリが出たな。だあれもいねぇ古い家に湧いて、そこら中、ススと埃だらけにしちゃうのよ。小ちぇー頃には、わしにも見えたが、そうか、あんたらにも見えたんけぇ」

ここで、その場にいた、普段は妖怪などに興味はないと思われる都会出身の人物が、「それは妖怪ですか?」と、いささか野暮な質問を、「ばあちゃん」にしたとされています。

それに対するこの妖怪学者の返答が、まさに、この人物の天才性を感じさせる、含蓄に富んでいます。

「そったらおそろしげなもんじゃねえ。ニコニコしとれば、悪さはしねぇし、いつの間にか、いなくなっちまうんだ」

どう見ても「妖怪の話」と思われる流れだったのに、「それは妖怪か?」と聞かれると、このようにはぐらかして論理的議論を解体してしまう。この含蓄の豊かさには唸らされます。

しかも驚愕なことには、この「ばあちゃん」、自らが「ススワタリ」だと説明したにもかかわらず、目の前にいた子供たちが対象の妖怪を「まっくろくろすけ」という誤った名称で呼んでいることを完全に許容し、むしろその名前を奨励しているような素振りすら見せるのです。

「それは妖怪であるか、妖怪でないか」など、どうでもよく、

妖怪」という定義も、本来的ではなく、

「ススワタリ」という自分たちの世代がつけた名前が、新しい世代において「まっくろくろすけ」と書き換えられることすらも、「それでよいこと」と許容する。

カテゴリー分けも、名前も、分類も、どうでもよい。彼女が重視したのは、「同じような身体的体験を次の世代にも体験させる」というただ一点の「共感」でした。

これは体型づけや名称にこだわる、井上円了とも、柳田國男とも違う。あえていえば南方熊楠の見解に似ていますが、ある面では熊楠よりも過激です。

妖怪学そのものの学問性すら切り崩しかねない、「身体体験一発のみを追う、ウルトラ現象学者」とでもいいますか!このような発想の人物が、アカデミズムからはまるでノーマークのまま、在野で生涯を終えたことは、しかし彼女の妖怪思想の過激さから見れば、運命だったかもしれないことでした。

だが私は、「田舎にいったとき、廃屋にいったとき、あるいは古い旅館に泊まったときに感じる、ゾワゾワとした、あの身体体験!」、あれこそが妖怪だと思いますし、名前づけや分類わけなどは結局は枝葉の問題、あくまでも身体体験に即して妖怪を感じたい。

私は「ばあちゃん」の思想をそのように理解し、継承していきたいと思うのです!

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