小説で言うところの「書き出し」がとても重要なことと同じく、怪談における「語り出し」って、とても重要ですよね。
そこでこのページでは、『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱シーズンの333本の怪談から、語り出しが印象に残ったもの10個を集めてみました!
なおこれはランキングではなく、あくまで「10個のピックアップ」のみとなります。
狂犬の語り出しは、つかみのコトバとしてとても好き。「おかしいヤツは死んでもおかしい」というこの導入の一文通り、死んでもおかしいままのヤツが学校に現れる。個人的にはこのハナシに登場した女子の反応(幽霊のせいだと言っても信じてくれず「なんで男子そんなことするの?」な反応に固執する)がとてもリアルに感じられてこの女子のほうが怖かったがそれは余談・・・。
なおちゃんとなおくんはいきなりこの文から始まり、ぐいと聞き手を出来事の渦中に放り込む。幼なじみが死んだと連絡を受け、あわてて駆けつけるところから怪異に巻き込まれていくわけですが、しかし実際、知り合いの葬儀の連絡というのは確かに、このように唐突に入ってくるものですよね。その切迫感が物語の異様な緊張にも合っており、巧いなと思った怪談。
紫陽花マンションの書き出しは、花の色に関する小知識から。これで始まった怪談だけに、当然、フシギな色の紫陽花が事件現場に咲いていた、というオチに収斂する構成が見事です。
百物語-第二話は・・・何を言ってもネタバレになるハナシなので、コメントしません!それにしてもこの「百物語スペシャル」での吉田会長は数々の「冒険的試み」をしていて、興味が尽きません!個人的には百物語スペシャルのMVPはこの方と思っている。この「壊し屋」ぶりはマジメすぎる怪談ファンには眉をひそめる向きもあるかもしれないけど。「定石くずし」のみならず、自分が「こういうのは怪談ではない」と事前に封じていたルールさえ、本番で破壊してきますから・・・!
朝の滝壺の語り出しは、ハリウッドのシナリオ作成術講座だったら満点を貰えるかもしれないが、怪談でこれをやるのは勇気がいったかもしれない。いきなり、クライマックスから始まっている、という構成。でもこの怪談については、体験者も「いきなり奇妙な現場の真ん中に放り出されているところで目が覚めて仰天」するという内容だから、この語り出しがふさわしかった、ともいえる!
湖。公開生収録スペシャルでせきぐちあいみさんが披露した怪談ですが、私はこれ、めちゃくちゃハイレベルでよかったと思うた。それにしても、この、講談か浪曲を思わせるような、「前口上」のような語り出しは、どこから思いついたアイデアなのでしょう!そうとうな練習量が感じられる流麗な入り方で、とても印象に残りました。
ゆうれいの語り出しは、いきなりどこへ連れていかれるのかわからないスタートとして印象深い。何の話から始まったのだろう、このハナシはどこへ行くんだろう・・・と思って聴いていると、あの陰惨ストーリーが始まるわけで。
廻る首は、語り出しの一発目の文ではなく、あくまで序版で出てくる文ですが、最初から「体験者はもともと視える人です」と示して始まるパターン。これが実は重要で、「幽霊が見えて当たり前」な生き方をしていた体験者の視界に、実にややこしいものが紛れてくる、というオハナシなのです。
エロ怪談においても、最初に体験者のキャラクター紹介がされる。けれども「性獣」とは!キャラクターの印象を最初に聴き手に焼き付けるという意味で、「インパクト重視のあだ名を紹介する」というのは強力なのではないかな、と思うた一作。そういえば、徳光正行さんの「狂犬」も、あだ名での印象付けが効いている怪談の一例かもですね。
滝の体験者は怪談社に電話をかけてきて、『幽霊ってほんとにいますよ』と切り出してくる。一連のハナシが終わった後に、『ね、だから、幽霊ってほんとうにいるんですよ』で怪談自体もフェードアウトしていくわけで。構成の妙!
※次回は「タイトルイラストがすでに怖い」怪談をピックアップして紹介します!
※『怪談のシーハナ聞かせてよ。』第壱章は2024年12月現在、DVDはGEOにて貸出可能、放送第39回以降からはU-NEXTで動画配信中と確認できております。