ホラー映画シリーズ『オーメン』の第二作が、『オーメン2/ダミアン』。
後光の差すほどの傑作(悪魔を扱った映画で「後光が差す」という表現もナンですが)だった第一作に比べると、「第二作は微妙」「演出が雑」といった声も多々あるようで。
かくいう私も、第一作絶賛者。
そんな私の、第二作への感想はといいますと。
いや、どうしてなかなか、優秀作だと思っておりますよ!?
以前のこちらの記事でも述べた通り、第三作にはいろいろと言いたいことのある私ですが、第二作は悪くない。
「第一作と比べると何かが違う」?
いやいや、そうじゃないと思うんです。
この第二作は、かなり努力して、「第一作とは違う路線」に振り切っているんですよ。それが悪くない!
どういことか?説明しようと思います。なお、以下はネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください。
有名になりすぎた第一作を引き受けた続編として、どこがよいか?
今回はスラッシャー映画に路線を振り切っているんです!
これは正しい判断だったと思います。
というのも・・・
メイキングのウラバナシですが、かの第一作の監督をしたリチャード・ドナーは、制作会社から「もっとバンバン、人が死ぬ場面を増やせ」というプレッシャーを受けていたのに抵抗していた人なのですね!(第一作のDVD特典映像で、リチャード・ドナー氏自らが、「映画会社はスラッシャー映画にしてしまおうとしてきたが、そうはさせるかとふんばった」と証言しています)。
たしかに!
第一作で、悪魔および悪魔崇拝者の仕業(とみられるもの)で死んだキャラクターは、たったの4人なのです(※私カウントです、あしからず)。
ところが、この『オーメン2/ダミアン』はどうか。
これもまた、私の数え方にはなりますが、
悪魔および悪魔崇拝者の仕業(とみられるもの)で死んだキャラクターは、12人なのですw。
これ、凄いことです。だって、オーメン2の上映時間は111分なのですよ?
つまり・・・
平均をとると、まぁ、そういうことです。約9分に1人!?
まぁ、今回は、「2人まとめてサクッと1シーンで死亡」するパターンも複数あるので、単純計算した場合の話にはなりますが。そうは言っても、多いです。『チャイルドプレイ』とか『エルム街の悪夢』とかの有名ホラーでも、110分で12人というのは、あんまり見たことがないペースではなかろうか!?
そう計算してから、あらためて、オーメン2を見直してみると、なるほど!
たしかに、頻度がハンパないんです。
物語が進んだら、
こわーい音楽が流れてきて、ブシャ・グシャ・ギエー!
その人のお葬式シーンが出てきて、またちょっと、登場人物たちのドラマが進んだら、
またこわーい音楽が流れてきて、ブシャ・グシャ・ギエー!
さくさくと人が死んでいく映画なんです。序盤で紹介された、名前のあるキャラクターは、111分以内に文字通り全滅してる(悪魔崇拝者側のキャラは除く=別の見方をすると、名前のあるキャラで死ななかった奴は全員「あちら側の勢力」と見てよい・・・運転手だけは違うっぽいけど、たぶん)。
このスラッシャー映画方針の採用、悪くないですよ。
「どうしたって、あの第一作のインパクトにはかなわないんだからさ。サクサクと死亡シーンが連続する、殺人ショーにしちゃおうよ」
と製作者側が割り切ったようなスピード感。
そして、有名なエレベーターでの必殺大切断のように、それぞれの死亡シーンにけっこう手間かけているんですね。もう殺人ショーだ。生き埋めになったり、農薬にまみれたり、氷の池に落ちたり、カラスにチクチクやられたり、みんな大変。一人だけ、ベッドで寝ている時に例の怖い音楽が流れてきて、何が起こるのかと思いきや「ああ、急に胸が苦しい」と病死してしまうだけの地味なデスシーンもありましたが・・・さすがに予算が追っつかなくなったのかもしれません。
観ているほうも、趣味の悪い言い方ですが、「さあて、次は誰が死ぬのかなー」というドキドキ感で見ちゃうんですね。
そして確かに、最後のほうになると、観ているほうも、キャラクターがコーヒーメーカーひとつ操作しただけで「もしかしてこの機械が故障して凶器になるのでは?」と、画面に映るものすべてに警戒してしまうんですね。ファイナル・ディスティネーションみたいなもんだ。
雰囲気オシだった第一作と、まっこう勝負をせず、
スラッシャー映画としてサクサク人を死んでいく豪快さにもっていった第二作。
悪くないんじゃないでしょうか?!
というわけで、私のオーメン三部作への感想を整理しますと。
第一作は、紛れもない傑作!
第二作は、酷評する人も多いけど、私は「かなりがんばった優秀作」とみている
第三作は、そんな私も、弁護のしようがない💦
というところです。
でもですね、『オーメン』シリーズ全体の評価に関わる話を、もうひとつだけ、させてください。
この第二作、シリーズ全体の位置づけとして、めちゃくちゃ大事な点があるんです。
第二作では少年に成長している、ダミアン君のことです。
彼、この第二作の中で、自分の頭皮に「666」の痣があることに、どうやら生まれて初めて気づくんですけど。
そのとき、めちゃくちゃビックリしているんですよ!
これ、私には意外だったんです。
「え?ダミアン君って、てっきり最初から自分が悪魔だと自覚しているもんだと思ってたのに!?」と。
本人がそれに気づいていなかったとなると、いろいろ、物語の解釈が変わってくるんですね。
良い意味で、深みが出てくるんです。
だって・・・第一作で、グレゴリー・ペックに車に押し込められた時にブルブル震えていたのは、「子供のフリして父親を混乱させている悪魔のやりくち」ではなくて、
本気で「お父さん、なにするの??」と怖がってたことになりますよね。
そして「前作から7年後の物語」ということは、ダミアンは第二作のタイムラインで13歳くらい。
思春期のさなかに、自分が悪魔の子だと気づいてしまう少年の話でもあるんです。
ということは、ラストシーンで見せたあの涙も、ウソの涙じゃないわけだ。
第一作では、「あどけない子供のフリをしているが、きっと腹の底では恐ろしいことを考えている悪魔なんだ!」と思っていたダミアン君が、実は複雑な内面を持った子供だとわかってしまう第二作。
そういう面からも、第一作をよくぞここまで深掘りしたと言いたい優秀作と思いますし、
ますます・・・第三作が残念に見えてきちゃうなぁ。中継ぎがここまで好投したのにねえ・・・!
【中古】 オーメン2/ダミアン /ドン・テイラー(監督),スタンリー・マン(脚本),ハーヴェイ・バーンハード(製作),ジェリー・ゴールドスミス(音楽),ウィリアム・ホ 【中古】afb 価格:781円 |